Article Title
2023年6月の新興国株式市場と今後の見通し
2023/07/05

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

6月の新興国株式市場(現地通貨ベース)は月間で上昇となりました。主要国別の市場動向、今後の見通しについてご紹介いたします。
※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。



Article Body Text

2023年6月の新興国株式市場

新興国株式市場は月初、米国の債務上限問題の懸念が後退したことや、米利上げ打ち止め観測などを受けて上昇基調となりました。月半ばには、5月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化したことを受けて、米利上げ打ち止め観測がさらに高まったほか、中国がリバースレポ金利、中期貸出制度(MLF)、最優遇貸出金利(LPR)などを相次いで引き下げ、さらなる景気刺激策への期待が高まったことなどが追い風となりました。月後半には、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がインフレ抑制に向けて追加利上げの可能性を示唆し、金融引き締めが長期化するとの見方が再び強まったほか、中国経済の先行き懸念などを受けて下落基調に転じましたが、月間では上昇となりました。

主要国別、セクター別の動き(現地通貨ベース)

国別(現地通貨ベース)では、ブラジルが相対的に大きく上昇しました。特に主力の国営石油企業の株価が、ルラ新政権の政策に対する懸念の後退や、魅力的な株式のバリュエーション(投資価値評価)水準などを背景に大きく上昇しました。南アフリカは、金価格の下落などから主力の素材セクターは下落した一方、金融や一般消費財・サービスセクターの銘柄が上昇したことが寄与し、市場全体では上昇となりました。インドは、CPIの伸びがピークアウトし、インド準備銀行(中央銀行)のインフレ目標の範囲内に収まっていることから利上げサイクルの終了が近いとの見方が強まっているほか、インド政府が米半導体企業のインド工場建設計画を承認したことや、米電気自動車企業がインド進出の可能性を示唆したことなどを受けて、海外からの投資資金流入が拡大するとの期待が高まり、上昇しました。台湾は、主力の情報技術セクターを中心に上昇しました。中国は、月半ばにかけて景気下支え策への期待などから上昇した後、月後半は、景気減速懸念や中国人民元安、米中対立問題などが重荷となり低調な推移となりましたが、月間では上昇となりました。韓国は、景気減速懸念などから下落となりました。

セクター別(現地通貨ベース)では、一般消費財・サービス、不動産、コミュニケーション・サービスなどが上昇しました。一方、ヘルスケアは下落したほか、素材も相対的に低調でした。

今後の見通し

長期的には、新興国経済は、若い労働人口が豊富であることなどを背景に、中間所得層の持続的な拡大や構造変化に後押しされ、先進国を凌ぐ成長力を有しているとの見方には変更ありません。

新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)は、先進国株式に比べて依然として魅力的な水準にあります。また、インフレの伸び率の鈍化を受けて、米国の利上げサイクル終了が視野に入りつつあることは、一段の米ドル高の可能性を後退させ、新興国市場にとっても追い風となると考えられます。

一方、ゼロコロナ政策終了後の中国経済の回復過程は平坦な道のりではない模様です。また、中国当局の政策動向や、米中関係などに不透明要素も多く残ります。しかし、こうした不透明要素が解消していけば、良好な投資機会が訪れる可能性があるとみています。

さらに、アジアを中心に新興国は「デジタル化」や「テクノロジー」の分野をけん引する存在であるとともに、脱炭素など世界的な環境課題においても、CO2(二酸化炭素)排出削減などで重要な役割を担いつつあるとみており、これまで見過ごされてきた、あるいは新たな価値の発掘につながる可能性があると期待しています。

 

(※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。)


●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら

MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。




関連記事


AI(人工知能)の普及に伴い、その将来性を精査する時が来ている

新興国市場:AI投資への別ルート

半導体業界が環境に及ぼす影響 

中国債券市場の振り返りと見通し(2024年3月)

新興国社債市場の振り返りと見通し(2024年3月)

新しい産業革命