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2022年8月のバイオ医薬品市場
2022/09/21

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概要


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バイオ医薬品関連企業の株価動向

8月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。

2022年8月のバイオ医薬品セクターは、前半と後半で様変わりの展開となりました。前半は、好材料が相次いで株価が上昇したものの、後半には、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策転換はないとの認識が金融市場に反映され、上昇分がすべて相殺されました。もっともバイオ医薬品セクターの相対リターンは株式市場全体を上回り、大型株に対して中小型株が堅調でした。

アルナイラム・ファーマシューティカルズ(米国)やカルナ・セラピューティクス(米国)のフェーズ3治験など、良好な治験結果が発表されたことに加え、活発なM&A(合併・買収)活動や中小型企業の良好な四半期決算が好感されました。業績の良好な企業を候補とするM&Aが中小型企業の追い風となる状況は今後も継続することが予想されます。

株価が上昇した銘柄としては、ケモセントリクス(米国)、サイトカイネティクス(米国)、アルナイラム・ファーマシューティカルズ等が挙げられます。ケモセントリクスはアムジェン(米国)による買収を受けて株価が大きく上昇しました。サイトカイネティクスは、経営戦略が計画通り実行されていることなどが株価の上昇要因となりました。アルナイラム・ファーマシューティカルズは、ATTRアミロイド心筋症治療薬候補のフェーズ3治験について良好な結果を発表したなどを背景に株価が上昇しました。

株価が下落した銘柄としては、ホライゾン・セラピューティクス(アイルランド)、フェイト・セラピューティクス(米国)が挙げられます。ホライゾン・セラピューティクスは、2022年4-6月の業績が予想を下回り、通期見通しを下方修正したことが嫌気されました。業績回復には数四半期を要する可能性があります。フェイト・セラピューティクスは特段の理由もなく株価が下落しましたが、下半期には、相次ぐ治験結果の発表が期待されます。

今後のバイオ医薬品市場見通し

足元、バイオ医薬品株式市場では良い兆候がみられ始めています。M&A(合併・買収)の動きは、年初に予想したとおり大幅に増加しています。資金調達環境も底を打ちつつあり、さらなるM&Aの案件が期待されます。また今後数ヵ月間に、重要な治験結果の発表を控えていることも注目されます。米国のインフレ抑制法案が議会を通過したことについては、財務上の重大な影響はないものと思われますが、M&Aのターゲットとされる企業が変わる可能性や、がん領域および低分子化合物におけるイノベーションへのマイナス影響、治療薬について新たな適応拡大を追求するかどうかに関連した戦略の変更が予想されます。

長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。

                                                                                                                                                                                                                                       

バイオ医薬品関連企業の売上高は新型コロナ・ワクチンの売上減などが影響し相対的に低い伸びに

バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)

一方、今後の売上高の伸びについては、2023年以降、モデルナ(米国)、ビオンテック(ドイツ)の新型コロナウイルス・ワクチンの売上が大幅に減少すると予想されていることが影響し、米国企業や先進国企業を下回ると予想されています。(図表7参照)

ただし、バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬の承認後の業績寄与が期待されています。

売上高の伸びに沿って株価も上昇

過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)

バリュエーション

バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していました。しかし2021年秋以降はFDAの承認申請に対する予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、今年に入りナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSRも低下しています。(図表9参照)

 

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