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2022年9月のバイオ医薬品市場
2022/10/19

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概要


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バイオ医薬品関連企業の株価動向

9月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。

2022年9月のバイオ医薬品株式は、マクロ経済関連の悪材料が相次ぎ世界の株式市場が大きく下落する中、相対的に小幅な下落にとどまりました。多数の企業に関する良好な治験結果や規制関連のニュースの発表が好感されました。良好な治験結果を発表した企業が増資を行った一方で、新規株式公開(IPO)は低調でした。中小型株が大型株に出遅れたのは、利上げが継続する中、3ヵ月続いた中小型株相場が終わったためだと考えます。バイオジェン(米国)とエーザイ(日本)が新しいアルツハイマー病治療薬候補の良好な治験結果を発表したことから、アルツハイマー病治療薬が改めて市場の関心を集め、両社の株価も急騰しました。

株価が上昇した銘柄としては、ベンティクス・バイオサイエンシズ(米国)、リジェネロン・ファーマシューティカルズ(米国)等が挙げられます。ブリストルマイヤーズスクイブ(米国)が米食品医薬品局(FDA)から乾癬治療薬について枠囲み警告なしで承認を受けたことをから、同様の治療薬を開発中のベンティクス・バイオサイエンシズも注目され、株価が大きく上昇しました。リジェネロン・ファーマシューティカルズは主力の加齢黄斑変性治療薬アイリーアの高用量の投与について良好な治験結果を発表したことなどが好感され、株価が大きく上昇しました。

株価が下落した銘柄としては、モデルナ(米国)、アストラゼネカ(英国)、アルクティス・バイオセラピューティクス(米国)などが挙げられます。モデルナは新型コロナウイルスの感染拡大が鈍化する中、株価の下落基調が続いています。アストラゼネカは、米国のインフレ抑制法の影響を最も大きく受けることが予想される欧州の医薬品企業のひとつであるとの見方から株価が下落しました。アルクティス・バイオセラピューティクスは、7月にFDAから乾癬治療薬の承認を受け、9月中にも良好な治験結果が発表されたものの、結果が期待に届かないのではないかとの懸念で売られました。今後、発表予定のアトピー性皮膚炎治療薬候補の治験結果が株価上昇のきっかけになることが期待されます。

今後のバイオ医薬品市場見通し

足元、バイオ医薬品株式市場では良い兆候がみられ始めています。M&A(合併・買収)の動きは、年初に予想したとおり大幅に増加しています。資金調達環境も底を打ちつつあり、さらなるM&Aの案件が期待されます。また今後数ヵ月間に、重要な治験結果の発表を控えていることも注目されます。米国のインフレ抑制法案が議会を通過したことについては、財務上の重大な影響はないものと思われますが、M&Aのターゲットとされる企業が変わる可能性や、がん領域および低分子化合物におけるイノベーションへのマイナス影響、治療薬について新たな適応拡大を追求するかどうかに関連した戦略の変更が予想されます。

長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。

バイオ医薬品関連企業の売上高は新型コロナ・ワクチンの売上減などが影響し相対的に低い伸びに

                                                                                                                                                                                                                                       

バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)

一方、今後の売上高の伸びについては、2023年以降、モデルナ(米国)、ビオンテック(ドイツ)の新型コロナウイルス・ワクチンの売上が大幅に減少すると予想されていることが影響し、米国企業や先進国企業を下回ると予想されています。(図表7参照)

ただし、バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬の承認後の業績寄与が期待されています。

売上高の伸びに沿って株価も上昇

過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)

バリュエーション

バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していました。しかし2021年秋以降はFDAの承認申請に対する予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、今年に入りナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSRも低下しています。(図表9参照)

 

 

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