バイオ医薬品株式の振り返りと展望 | ピクテ投信投資顧問株式会社

バイオ医薬品株式の振り返りと展望

2018/01/25バイオ毎月
※投資リスク、手続・手数料等は、PDF版をご覧ください。

ポイント

2017年のバイオ医薬品株式は大きく変動しながらも米国株式並みの上昇となりました。2018年は、①新薬の承認と新薬候補の治験動向、②M&A(合併・買収)の動き、③医薬品業界の業績が景気の変動に左右されにくい特性が株価を支える3つのポイントとなる可能性があると考えます。

2017年の振り返り

2017年のバイオ医薬品株式は大きく変動しながらも2016年末に比べ+21.6%上昇(配当込み)し、年間では米国株式並みの上昇となりました(図表1参照)。

1月の米トランプ政権発足前から5月にかけては、トランプ大統領による発言や政策動向に左右される展開となり大きく変動する動きとなりました。

6月以降は、トランプ大統領が署名した大統領令が医薬品業界にとって好意的な内容であると受け止められたことや、新薬の承認が堅調に推移したこと、良好な治験結果の発表が続いたことなどから、バイオ医薬品株式は大きく上昇しました。

8月には、ギリアド・サイエンシズ(米国)が、がん領域で強みをもつカイト・ファーマ(米国)を買収したことをきっかけに、がん領域に強みを持つ中小のバイオ医薬品企業に対するM&A(合併・買収)観測が高まり、バイオ医薬品株式は大きく上昇しました。

しかし10月にバイオ医薬品業界を代表する企業であるセルジーン(米国)が市場で有望と捉えられていた治療薬候補(パイプライン)の開発中止を発表したことに加え、業績見通しも引き下げたことから、セルジーン株が急落し、その影響で、バイオ医薬品株式も全体的に大きく調整することとなりました。年末にかけては、新薬の承認や良好な治験結果の発表などが寄与し、バイオ医薬品株式は上昇基調となりました。

バリュエーションは相対的に割安

株価は上下しながらも年間では大きく上昇しましたが、バリュエーション(投資価値評価)については、大手バイオ医薬品株式(S&P500種バイオテクノロジー指数)の株価収益率(PER)が16.4倍(2017年12月)であるのに対して、米国株式は22.5倍となっており、大手バイオ医薬品株式は、PERでみると引き続き相対的に割安な水準にあると考えられます(図表2参照)。

 

 

ポイント:新薬承認と治験動向、M&Aの動き、業績が景気変動に左右されにくい

今後、バイオ医薬品株式を考える上で、①新薬の承認と新薬候補(パイプライン)の治験動向、②M&A(合併・買収)の動き、③医薬品業界の業績は景気の変動に左右されにくい特性の3つが株価を支えるポイントとなる可能性があると考えます。

 

 ①新薬の承認と新薬候補(パイプライン)の治験動向

2017年の新薬承認件数は46件、 2002年以降で最高に

新薬の承認については、2017年は46件となり、2016 年の22件から大きく増加、2015年の45件も上回り、 2002年以降で最高となりました(図表3参照)。

 2017年3月に米食品医薬品局(FDA)により承認された リジェネロン・ファーマシューティカルズ(米国)のアトピー 性皮膚炎治療薬デュピクセント(サノフィ(フランス)と共 同開発)などが注目されました。

米FDAは新薬の開発・承認を促進するため、様々な制 度を設けていますが、2017年の新薬承認のうち、39% が「迅速承認制度」を、37%が「画期的(ブレークス ルー)治療薬制度」を、61%が「優先承認審査制度」を 受けていました。ピクテでも注目している患者数の少な い希少病の治療薬についても18件(全体の39%)の承 認がありました。また、治療薬ではありませんが、2017 年8月に画期的ながんの治療法として、キメラ抗原受 容体T細胞(CAR-T)療法が初めて承認されたことも、 大きな注目を集めました。

2017年に承認件数が増加した背景には、バイオ医薬 品企業各社による積極的な研究開発に加え、新薬の 承認手続きの簡素化に積極的なスコット・ゴットリーブ氏 がFDA長官に就任したことも寄与していると考えられます。

今後もがん領域、中枢神経領域、希少病 領域に注目

新薬候補(パイプライン)の動向についても、分子標的 薬などのがん領域の他、アルツハイマー病などの中枢 神経系領域、患者数が少ない希少病領域などが引き 続き注目されます(図表4参照)。

 

 ②M&Aの動き

有望な新薬の獲得を目的としたM&Aは継 続、米レパトリ減税が支援

有望な新薬候補(パイプライン)を有するバイオ医薬品 企業は、M&A(合併・買収)のターゲットとなっています。 既存の主力薬が特許切れに直面している大手医薬品 企業や、特定の主力薬への依存が高い大手バイオ医 薬品企業は、将来にわたって業績の成長を実現するた めに、有望な新薬候補(パイプライン)の充実につとめて います。パイプラインの充実には、もちろん自社での研 究開発も重要となりますが、医薬品業界では、有望な パイプラインを持つ企業に対するM&Aによりパイプライン の充実を図るケースも多く見られます(図表5参照)。

米国のレパトリ減税がM&Aを後押し

バイオ医薬品企業に対してM&Aを行う場合には、多額 の資金が必要となりますが、大手の医薬品企業やバイ オ医薬品企業は、M&Aを実現するために豊富な資金 を持った企業が多く存在します。

さらに米国で2017年12月に成立した減税策もM&Aを 後押しする可能性があります。

米国で成立した減税策の中には、米国企業が海外に 滞留させている未課税利益(海外留保利益)を米国内 に還流する際にかかる税金に対する減税措置(レパトリ 減税)が含まれています。これまで海外での利益に対し て35%の法人税が課せられることから、多くの米国企業 は海外で稼いだ利益(推定2兆6,000億ドル)を海外に 留保していましたが、今回の減税により、多額の海外留 保利益が米国に還流すると見られています。既に、アッ プル(米国)がレパトリに絡み380億ドルの税を支払うと の計画を発表するなど、米国企業による資金還流の動 きが始まっています。

主要米国企業の海外保有現金の業種別内訳をみると、 ファイザーやメルク、アムジェン、ギリアド・サイエンシズ などに代表される米国のヘルスケア企業は、推定 5,800億米ドルの海外留保利益を有していると言われ ており、全体でも情報技術(IT)セクター(32%)に次ぐ 23%の比率を占めています(図表6参照)。

 

2018年は、既に大型案件が成立

このようにM&Aに対する期待が高まる中、2018年は既 に大型のM&A案件が成立しています。

2018年1月22日に大手バイオ医薬品企業セルジーン (米国)は、CAR-T療法の開発などで強みを持つジュ ノ・セラピューティクス(米国)を90億ドルで買収すること を発表し、ジュノ・セラピューティクスの株価は前営業日 比で+26.8%上昇しました。また医薬品大手サノフィ(フ ランス)も同日、血友病治療薬を手掛けるバイオベラ ティブ(米国)を約116億ドルで買収することを発表し、 バイオベラティブの株価は前営業日比+61.9%上昇して います。

今後もバイオ医薬品企業を含む医薬品大手企業によ るM&Aの動きが注目されます。

 

③業績が景気に左右されにくい 特性

バイオ医薬品企業の業績は景気変動の 影響を受けにくい

バイオ医薬品企業は、成長性に注目されがちですが、 売上高などの業績が景気変動に左右されにくい特性も 持ち合わせています。

バイオ医薬品業界では、多くの新薬が承認されてきまし た。そのためリーマン・ショックのような景気後退局面で も高い売上高の成長を続けてきました(図表7参照)。 現在も多くの新薬候補(パイプライン)の開発が進めら れており、引き続き景気に左右されず、業績の伸びが 期待されると考えます。

 

リーマン・ショック時も相対的に小幅な下落 にとどまったバイオ医薬品株式

このようにバイオ医薬品企業は業績が景気動向に左右 されにくいことから、株式市場が全体的に崩れる局面に おいては、株価の下落が相対的に小幅に留まることが あります。

リーマン・ショック時(2008年8月14日~2009年3月9 日)の株価の騰落率を見ると、世界的に株価が大きく下 落する中で、バイオ医薬品株式についても-35%の下落 となりましたが、米国株式(同-48%)に比べると他のディ フェンシブ・セクター(公益や生活必需品、ヘルスケア、 電気通信サービスなど)同様に、相対的に小幅な下落 となっています(図表8参照)。

 

バイオ医薬品株式の価格変動の大きさに は注意が必要

一方で、バイオ医薬品株式については、セクター固有の 要因で株価が大きく動くことがあります。2015年秋に米 国で薬価の問題が浮上した際や、2017年10月に代表 的なバイオ医薬品企業のひとつであるセルジーンが業 績の下方修正と主要な新薬候補(パイプライン)の開発 中止を発表した際には、バイオ医薬品セクター全体で 大きく株価が下落する結果となりました。

また、パイプラインは抱えるものの、製品化された治療 薬を持たない中小型株も多く、個別の銘柄の日々の株 価の変動が大きく、バイオ医薬品全体でも価格変動が 大きな傾向があります。

そのためバイオ医薬品株式への投資にあたっては、分 散しながら中長期的な成長の獲得を狙う視点が重要と考えます。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

記載された銘柄はあくまで参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。記載の指数はあくまでも参考指数であり、特定のファンドの運用実績を示すものではありません。また、データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

 


 

当資料をご利用にあたっての注意事項等

当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した販売用資料であり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。取得の申込みにあたっては、投資信託説明書(交付目論見書)等をお渡ししますので必ず内容をご確認の上、ご自身でご判断ください。●投資信託は、値動きのある有価証券等(外貨建資産に投資する場合は、為替変動リスクもあります)に投資いたしますので、基準価額は変動します。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により、損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。


ページの先頭へ戻る