欧州中央銀行(ECB):ドラギ総裁、3月の追加緩和を示唆 | ピクテ投信投資顧問株式会社

欧州中央銀行(ECB):ドラギ総裁、3月の追加緩和を示唆 欧州/ユーロ圏 先進国

2016/01/26先進国

ポイント

欧州中央銀行(ECB)は、1月21日の政策理事会で現行の金融政策を維持する一方、ECBスタッフ予想が更新される3月10日の政策理事会での追加緩和を示唆しました。中銀預金金利の一段の引き下げ、買入対象資産の拡充や買入額の増額の他、新種の長期性資金供給オペ(TLTRO)等の、より積極的な施策も検討され得ると見ています。

3月の追加緩和が市場の合意事項に

欧州中央銀行(ECB)は、2016年1月21日開催の政策理事会で、大方の予想通り、主要政策金利を据え置きました。一方、理事会終了後の記者会見の基調は「ハト派的な姿勢への全会一致の転換」を示唆しており、早ければ3月の理事会で追加緩和に踏み切る公算が高まったという見方を支持するものであったと考えます。公表された声明文中の「ECBは、金融政策を見直し、恐らく再評価する必要がある」との記載は特に注目されます。

ドラギ総裁は、「2015年12月の追加緩和が適切だった」と発言したのに続き、前回の政策理事会以降状況は劇的に変化していること、また、ECB理事会は状況の変化に対応して考えを変更する「意志と決意」を有しており、ECBの責務の範囲内で採用する施策には「上限がない」と述べています。そのような観点からすると、インフレ期待の下振れリスクは、ユーロ圏の「リスク・マネジャー」として行動するECBが看過することのできない問題だと思われます。

ECBがより積極的な追加緩和策に踏み切る確率が高まり、中銀預金金利の(少なくとも-0.40%への)引下げ、資産買入額の増額(現行の月額600億ユーロから800億ユーロへ)が3月10日の理事会で決定されるものと見られます。また、資産買入プログラムの円滑な実行のため、発行体の買入上限の引上げ、社債等の買入対象資産証券の拡充、ECBの資本金の拠出比率から乖離した国債買入等、量的緩和(QE)の技術面の見直しも行われる可能性があるとみています。

追加緩和のための環境を整えたいドラギ総裁は、(前回のスタッフ予測策定のためのデータ収集期限となった)2015年11月半ば以降、原油価格が約40%下落していることから、インフレ率は、目先数ヵ月間、極めて低位に留まり、マイナス圏に沈むこともあり得ると述べ、(2018年予想が新たに加わる)3月のスタッフ予想の再度の下方修正を示唆しました(図表1参照)。足元の原油先物価格から予測すると、EU基準消費者物価指数(HICP、総合指数)の2016年予測の中央値は、従来予想の1.0%から下方修正されることになるだろうと思われます。また、2018年については、中期予想の1.7-1.8%を踏まえた数値が予想されると見ています。前回の政策理事会以降、中国経済の減速、株式市場ならびに通貨市場の混乱、世界経済の低迷を巡る懸念等、外因性のリスクが高まったとの見方も示されています。

内需、なかでも信用サイクルの改善についての言及があったとはいえ、そのことが景気下振れリスクを軽減するわけではありません。

3月の政策理事会までの期間には、原油価格の下落が、HICPを構成する非エネルギー項目、とりわけ、生産コスト、価格設定、期待インフレ率に間接的な影響を及ぼす可能性のある項目を検証することが必要です(図表2参照)。ECBの2014年12月の月報に掲載の論文には、原油価格が消費者物価に及ぼす影響のうち、3分の1程度が間接的な影響であることが述べられています。もっとも、論文が書かれた時期に、原油価格が(1バレル当たり)50ドル前後で推移していたことには留意が必要です。

重要なことは、HICPが低位に留まる期間が長引く程、市場のインフレ期待に対するヒステリシス(現在に加え過去のイベントが影響すること)リスクが強まるということです。ドラギ総裁は、ECBのチーフ・エコノミストを務めるピーター・プラート氏の「原油価格がインフレに及ぼす影響の一部は、無視できるものでも、一時的なものでもない」とのコメントに触れ、足元のインフレ動向を特に懸念しているように思われます。総裁は、インフレを測る大方の指標が低下しており、その多くが原油価格と強い相関を示しているとも述べています。1月22日発表のECBサーベイ調査報告書などに基づいた指標が回復基調であることだけでは十分とは言えないように思われます。(原油価格がインフレ率に及ぼす影響については、2016年1月26日発行のピクテ・マーケット・フラッシュ「ECBの追加緩和を左右する、原油安とインフレ率の関係」をご覧ください。)

追加緩和の手段に「限度はない」

ECBが導入する公算が高いと考えられる施策のうち、特に重要だと思われるのが以下の二つの施策ですが、単独で導入するか、あるいは併せて導入するかの選択肢があると考えられます。

(1)まず、中銀預金金利の追加引き下げは、政策理事会のタカ派メンバーの反発を招く可能性が極めて低く、実効為替レート・ベースのユーロ高等、「正当な理由に欠ける引締め」に対応する措置として導入される公算が一段と高まっていると考えます。ドラギ総裁は、ECBの責務が物価の安定であって民間銀行の収益性ではないことを明言してはいますが、中銀預金金利の引下げ幅には、下限があるように思われます。少なくとも0.1%の引き下げを行って中銀預金金利を-0.40%とすることが最低限求められますが、ユーロ高が進んだ場合には、マイナス金利の一段の引き下げが必須となりそうです。

(2)次に、資産買入プログラムの柔軟性を高めることが大切です。資産買入プログラムの技術面については、春のうちに見直しが行われることとなっています。2017年3月以降への期間延長は、QEのペースを上げる理由を損なうことから、逆効果とは言わないにしても意味がないだろうと見ています。資産買入プログラムの柔軟性を高めることは、ドラギ総裁が2014年4月にアムステルダムで行った講演でも言及した通り、物価安定見通しの悪化への対応策として最も適切だと考えます。

その他の施策も考えられます。まず、資産買入額の(現行の月額600億ユーロから800億ユーロへの)増額は、円滑な執行を担保するため技術面での調整が行われることを前提とすれば、市場に好感されると思われます。ドラギ総裁は、買入に上限がないことを明言しており、ECBは、個別証券の買入上限を引き上げることが可能だと考えます。発行上限は、昨年2015年のうちに引き上げられています。

さらに、より広い範囲の証券を買入対象に含めることも可能です。ECBが株式を買えるかどうかとの質問に対して、ドラギ総裁は可能性を否定しませんでしたが、社債あるいはよりリスクの高い証券も検討され得ると考えます。

より革新的な手段としては、ECBの資本金の拠出比率から明確に乖離した国債の買入が挙げられます。政策理事会内での政治的な駆け引きが必要になると予想されるものの、ドラギ総裁は導入の可能性を否定しませんでした。

 最後に、主要政策金利の一つであるリファイナンス金利(現行0.05%)の引き下げや、新種の長期性資金供給オペ(TLTRO)等の施策は、市場を驚かすことが可能だと思われます。ピクテでは、後者が導入される可能性が高いと見ており、TLTROの魅力を高めるため、より有利な条件で提示される公算が高いと見ています。

ECBの政策理事会メンバーには、3月10日までの6週間を通じて、1月21日発表の声明に繰り返し言及し、より革新的な追加緩和策への期待を高めることに腐心することが求められます。問題となるのは、2015年12月の理事会決議に失望した市場が、理事の発言を信頼に値すると考えるかどうかとういことです。ピクテでは、ECBのバランスシートを2017年半ばまでに4兆ユーロに拡大すべく、資産買入のペースを上げることが、成功の鍵だと考えます(図表3参照)。

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