英国:EU(欧州連合)離脱(ブレグジット)か残留か | ピクテ投信投資顧問株式会社

英国:EU(欧州連合)離脱(ブレグジット)か残留か 欧州/ユーロ圏 英国 先進国

2016/02/25先進国

ポイント

2016年2月19日、EU首脳会議がEU改革案に合意したことを受け、キャメロン首相は、6月23日の国民投票実施を表明しました。現時点ではEU残留が予想されるものの状況は予断を許しません。投票までの期間には、金融市場への影響が予想されます。EU離脱が決まった場合には、英国ならびに一部EU加盟国の先行きが懸念されます。

欧州連合(EU)、英国のEU改革案に合意

キャメロン英首相が求めていたEU改革案に欧州連合(EU)首脳が合意したことから、EU残留の是非を問う英国の国民投票の日程や条件が、一部とはいえ、明らかとなりました。2016年2月19日、英国のEU改革案がEU首脳の合意を得たことを受け、キャメロン首相は6月23日の国民投票実施を表明しました。一方、ゴーブ司法相を含む数名の閣僚に加え、21日にはジョンソン・ロンドン市長がEU離脱支持を表明したことが注目されます。

現時点では英国のEU残留が予想されるものの、状況は予断を許さず、EU離脱が過小評価されている可能性も否めません。EU離脱となれば、英国とEU間の交渉には数年を要する可能性もあり得ますが、交渉の土台となる具体的な枠組みは一切示されていません。

EU改革案とは何か?

(国民投票に向け法律の専門家への需要が予想され)、素人には理解の難しい問題が多いとはいえ、キャメロン首相が提示したEU改革案は、EU残留派、EU離脱派双方の反応から判断する限り、当事者すべてに恩恵が及ぶ可能性があるもののように思われます。ただ、金融サービス関連の複雑な事項等、解釈に妥協の余地が残る、明瞭さに欠ける条項も散見されます。

政治的に最も慎重な対応が求められるのは、キャメロン首相がEUから一定の譲歩を勝ち得た外国人労働者の社会福祉と児童手当に関する緊急措置です。英国に入国した移民の社会保障給付は、「雇用開始から4年を上限に」適用され、その後、段階的に廃止されることとなっています。当該緊急措置については、キャメロン首相が主張した永久措置は受け入れられず、7年後に消滅することで決着を見ています。

なお、(児童手当の制限を含む)社会保障ならびに移動の自由に関して合意文書のD項に記載された規定の一部は、英国に限らず、全EU加盟国に適用されることは注目に値します。

主権については、「英国は、EUの政治的統合の深化に関与しない」ことが合意文書に記載されています。当初から想定されていたことではあるものの、英国は「より緊密なEU」への適用から除外されることとなります。金融関連の合意は、やや複雑ですが、英国の権益に対して脅威となり得るEUの発議については、英国政府(あるいはユーロ圏以外のいずれかの国の政府)が、首脳会議での議論を要求することで、先送りされることも考えられます。

国民投票を巡る重要事項

世論調査は国民投票での接戦を予想していますが、これが実際の状況を正確に表しているどうかについては疑問が残ります。2015年の総選挙に際しては、与・野党の接戦が予想されていたのに対し、与党が大差で圧勝する結果となりましたが、これは、調査対象が若年層に偏り、中・高年層の意見が過小評価されたことに起因するものと思われます。調査会社は問題の所在を認識しているものの、調査手法の修正は容易ではなく、これまでにどの程度改善されたかは定かではありません。調査対象が重要なのは、若年層には圧倒的にEU残留派が多いのに対し、中・高年層にはEU離脱を望む有権者が多いためです。選挙人登録に係る規則が最近、変更されたことから、若年層の多数が投票権を得ていないことも注目されます。上述の状況は、いずれも、 EU離脱のリスクが過小評価されている可能性を示唆するものと思われます。また、EU離脱派とEU残留派の割合が拮抗すると、先行きに対する不透明感が強まる期間が長期化することにもなりかねません。

知名度が高く、国民に人気のあるジョンソン・ロンドン市長がEU離脱支持を表明したことは、 EU離脱派の勢いを増すこととなりそうですが、一方、EU残留派は、キャメロン首相ならびに大多数の有力政治家の支援を得ることとなります。また、大企業の経営者も、今後、より明確な態度を示すことが予想されます。

EUの難民危機を踏まえて移民の急増を巡る懸念が深まるにつれ、(英国は難民の受入れが相対的に少ないとはいえ)、EU離脱派が勢いづいています。世論調査は、移民問題が国民の最大の懸念事項であることを示唆しています。2016年6月23日の国民投票までに、(大量の移民の流入や、難民が関与したとされる昨年大みそかのケルンでの集団暴行事件のような事件が発生して、)EUの難民を巡る状況が悪化することとなれば、態度未定の有権者は、EU離脱支持にまわる公算が高いと思われます。

とはいえ、EU離脱が英国経済に及ぼす影響が極めて不透明でリスクが高いという事実は、EU残留派に有利に働くと思われます。EU離脱派は離脱の影響について説得力ある説明をすることが出来ず、また、EU離脱が国内経済や雇用に負の影響を及ぼすのではとの懸念を一蹴できずにいますが、このような状況は変わりそうにありません。EU離脱が英国の分裂につながることも懸念されます。スコットランドは明確にEU残留支持を表明しており、英国のEU離脱が多数となれば、EU加盟を優先して英国からの独立を目指す国民投票を再度実施する可能性が見込まれています。態度未定の有権者(ならびにEU離脱を考える程度の有権者)は、様々なリスクを勘案し、最終的には現状維持を選択する公算が高いと思われます。未知の世界に飛び込む恐怖は、2014年のスコットランド独立を問う国民投票に際して、独立否決につながる決定的な要因となりましたが、今回の状況にも相通じるものがあるように思われます。

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