ECB:資産買入基準の緩和を検討か? | ピクテ投信投資顧問株式会社

ECB:資産買入基準の緩和を検討か? 先進国 欧州/ユーロ圏

2016/07/05先進国

ポイント

欧州中央銀行(ECB)が資産買入プログラムの買入基準の緩和を検討しているのではないかとの報道が注目されています。資本金拠出比率に基づいてEU加盟国の債券買入額を配分する現行の基準を緩和することは適切な手段だと考えますが、議論を尽くす必要があり、次回理事会で決定される公算は低いと見ています。

ECBの資産買入基準の緩和を巡る報道

ECBの資産買入基準の緩和を巡る報道2016年6月30日、欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏加盟国のソブリン債買入額の配分を決める際に用いる「ECB資本金拠出比率基準」の緩和を検討していることを示唆する記事がブルームバーグに掲載されました。ECBが基準からの乖離を容認するのではないかとの報道です。関係筋によれば、英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)が「質への逃避」の動きを強めた結果、資産買入プログラムの適格債券(利回りが中銀預金金利(現行-0.4%)を上回る債券)が減少し、債務比率の高いEU加盟国の債券購入を増やさざるを得ない状況が現実となっているとのことです。

欧州市場では、ブルームバーグの報道を受け、周縁国債券やリスク資産が買われる展開となりましたが、翌7月1日にはロイターが、ECBは出資比率の変更は検討していないと伝え、ブルームバーグの報道内容は否定されました。

ブレグジットの決定を受け、ECBは、いずれ、追加緩和を決めざるを得ないと思われます。ECBの資産買入基準の緩和(基準からの乖離の容認)は極めて適切な手段だと考えられますが、これが次回の追加緩和策に含まれる公算は低いと思われます。

金融市場の混乱が無い限り、ECBは段階的な手段を講じるように思われます。ブルームバーグの報道は、公の場での議論を通じて基準緩和にこぎつけることを狙い、(市場の反応を探るため)ハト派があげた「観測気球」のようなものだと思われます。また、ブレグジットに衝撃を受けたECBが、同行の金融政策を適切な経路で波及させるため、先手を打たざるを得ない状況に置かれていることを示唆するものとも考えられます。ECBが7月21日あるいは9月8日の政策理事会で追加緩和策を発表するまで、市場ではボラティリティの高い展開が予想されます。

予想される追加緩和策

ドラギECB総裁は資産買入プログラムについて、買入対象資産が不足する心配はない旨、繰り返し発言していますが、買入期間が2017年3月以降に延長される場合には、買入適格債券を決める基準に変更が必要と考えます。適格債券が減少し続ければ、変更は必至だからです。一部の加盟国債券については、2017年3月を待たずに、発行体上限(33%)規則に抵触することが予想されます。利回りが低いほど、イールドカーブが平坦であればあるほど、買入対象債券が不足する確率は高まります。

換言すると、ブレグジットが、将来のいずれかの時点で必至となる買入基準の変更決断の引き金をひいたともいえそうです。ドイツ連銀(中央銀行、ブンデスバンク)は資産買入の抜本的な変更に反対することが予想されますが、二つの好ましくない選択肢のいずれかを選ばざるを得ない状況になりそうです。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

実は、資産買入プログラムの実行に際して、現行の基準に抵触する可能性が最も高いのはドイツの債券です(前ページ図表1参照)。社債買入プログラム(CSPP)におけるドイツ債の買入は月額160億ユーロ前後と見られることから、2016年11月から2017年4月にかけてのいずれかの時点で、買入上限に達すると予想されます。

資産買入基準の緩和の手段には、発行額・発行体上限の増額、買入期間の延長、買入債券の償還期限の延長、最低利回り基準の廃止、資本金拠出比率の基準からの乖離の容認等、多数の選択肢が考えられます。後者については複数の施策の組み合わせも可能です。もっとも、ECBが、既発公債の流通量を基準とした国ごとの買入配分の極端な変更を行う公算は低いと考えます。また、債券以外の資産クラスやEU機関債等に買入を広げる「代替買入」の機動的な利用は適切ではないように思われます。

7月あるいは9月のECB政策理事会では、以下の施策の導入が検討される公算が高いと考えます。

1)集団行動条項付債券(CAC債券)を除く高格付けソブリン債の発行体上限を現行の33%から50%に引き上げること

2)加盟国のいずれかで発行体上限に達した場合には、現行のECB資本金拠出比率に準じ、買入債券が不足した国を除いて、追加の国別買入配分を再計算すること

追加の買入配分が増えれば増える程、周縁国が享受する恩恵が増えることとなります。また、このような状況が実行可能となれば、ECBは買入債券が不足する事態を免れることとなり、資産買入期間を2018年以降に延長し得ると考えます。

公的セクター買入プログラム(PSPP)全体の20%程度に相当する追加買入の「リスクの共有」は、対応の難しい問題となりそうです。追加買入のリスクは買入対象債券を発行する国の政府が負担し、その他の加盟国はリスクを共有しないという選択肢もあり得ます。

中銀預金金利のマイナス幅の拡大や買入債券の最低利回りの廃止は、せいぜい時間稼ぎになるくらいの効果しか望めないことから、現時点では行われる可能性が低いと考えます。ブンデスバンクは、理論上、買入資産に損失が生じるリスクに直面することとなり得ます。

仮に、資本金拠出比率基準の乖離が容認されれば、乖離幅が小幅であっても市場のリスク心理が改善することが予想され、金融政策の周縁国への波及が進む可能性もあります。

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