ドル円レート:「ヘリコプター・マネー」導入見送りで円高基調が継続 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ドル円レート:「ヘリコプター・マネー」導入見送りで円高基調が継続 先進国 アジア 日本

2016/08/02先進国

ポイント

日本銀行が2016年7月28-29日に開催された金融政策決定会合で目立った政策変更を行わなかったことから、日銀の金融緩和は限界に近づきつつあるとの見方が強まりました。このような環境下、円には持続的な上昇圧力がかかっています。米国の年内利上げを想定するとしても、円高基調は当面変わらないと考えます。

日銀の追加金融緩和、市場の期待に届かず

日本銀行(日銀)は2016年7月28-29日の金融政策決定会合で、市場予想とは裏腹に、目立った政策変更を行いませんでした。上場投資信託(ETF)の買入額を現行の年3.3兆円から6兆円に引き上げた一方で、マネタリーベース(日銀による市中への資金供給量)の増加額は年80兆円に据え置き、日銀準備預金金利については現行の水準を維持したからです。

注目されるのは、9月20-21日に開催予定の次回の金融政策決定会合で、現行の金融政策の総合的な検証を行う旨が発表されたことです(詳細は後述)。

今回の会合での日銀の決定は、2%のインフレ目標を達成するために取り得る手段が限られてきていること、また、いかなる形態であれ日銀には「ヘリコプター・マネー」を導入する意図はないとの見方を確認するものだと見ています。

円高圧力 4つの要因

以下に挙げる複数の要因により、当面は円高圧力が持続すると考えます。

(1) ファンダメンタルズに基づいた円の評価
この一年で1ドル=125円から1ドル=100円へのドル安・円高が進んだとはいえ、長期のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に照らして見ると、円は割安な水準に留まっています。消費者物価指数を勘案した購買力平価に基づく円の適正価値は1ドル=90円前後との試算もあります。

(2) 金融政策の効果の限界
マネタリーベースの永続的な増加も厭わないとの意向を示唆する「ヘリコプター・マネー」等の極端な手段を導入しない限り、円安を維持するために日銀が取り得る手段は限られつつあります。今回の金融政策決定会合で下した決定は、大胆な手段を講じる準備が、今のところ日銀にはないことを示唆していると考えます。

(3) ポートフォリオ・リバランス効果の低下
日銀による大量の資産買入で国債利回りが低下したため、日本の投資家は、外国債券などの高利回り資産への投資を増やしていましたが、現在その「ポートフォリオ・リバランス効果」は薄れつつあります。足元、円のボラティリティが上昇していることから、今後の外貨建て資産投資には為替ヘッジが必要になると思われます。

(4) 世界経済を取り巻く不透明感
世界的な不透明感の高まりを背景に、「安全資産通貨」としての円需要が強まっています(図表1参照)。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

円安には期待インフレの上昇が必要

為替レートは、名目金利からインフレ率を引いた実質金利の影響を受けることから、前述の(1)~(4)の円高要因のうち、日銀が大きな影響を及ぼし得るのは主に(2)ということになります。

日銀が、大胆な資産買入プログラムを通じて、名目金利を超低水準に押し下げるため全力を尽くしてきたことは確かですが、期待インフレの低下がその効果を帳消しにしています。2015年半ば以降、世界的にデフレ圧力が強まったことに加え、日銀の金融政策の効果が薄れつつあるとの見方が広がったためです。低インフレに悩むのは日本に限りませんが、金融政策と財政政 策のより広範かつ大胆な融合(ポリシー・ミックス)がなければ、日本経済に根付いたデフレ・マインドを払拭し、円安圧力を強めることは困難だと考えます。

円高基調は当面変わらず

今回の日銀決定が円安をもたらす公算は低く、したがって今後数ヵ月は、前述の4つの要因を背景とした円高が続くと考えます。

もっとも、日銀が戦術を変更し、「ヘリコプター・マネー」を導入することでインフレを押し上げようとするならば、足元の状況を変えることも不可能とはいえません。財政規律が緩み、インフレ期待が急騰すれば、大幅な円安もあり得るからです。一方、7月27日に安倍政権が打ち出した「大胆な経済政策」は、複数年度にわたって実行されるものであり、今年度の規模がさほど大きいとはいえません。また、大方の政治家(政策立案者)は、日本経済がよほど悪化しない限り、金融政策との協調 を図る「実験」には消極的な姿勢を示すことが予想されます。したがって、目先、持続的な円安は想定しがたいと考えます。

強い円高圧力を勘案すると、足元のドル円レートを安定させるためには、米連邦準備制度理事会(FRB)がよりタカ派的な姿勢に転じることが必要になります。仮に、2016年12月に利上げがあると想定するならば、年後半にはドルが幾分か上昇するはずですから、ドルと円は同程度強含むこととなり、ドル円レートの安定推移が見込まれます。

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