イタリア国債:予算案次第で上下 | ピクテ投信投資顧問株式会社

イタリア国債:予算案次第で上下 先進国 欧州/ユーロ圏

2018/09/05先進国

ポイント

イタリア国債のドイツ国債に対する上乗せ金利は、現状260ベーシスポイント近辺ですが、今月詳細が明らかになる2019年度予算案次第では、この上乗せ金利が縮小する可能性があります。一方、EUとの対立姿勢を強めると上乗せ金利は大幅に拡大(債券価格は下落)する恐れがあります。

イタリアの2019年予算案に対する、投資家の懸念が高まっています。予算案の詳細については、イタリア政府が発行する9月27日締切りの経済財政文書(DEF)によって明らかになります。このDEFによって、イタリアの連立政権が、どの程度欧州連合(EU)の財政規律に従うかが明らかになると見ています。

トリア財務相と、連立政権の指導者である同盟のサルビーニ党首と五つ星のディ・マイオ党首の間の予算案に対する意見の相違について、いかに妥協点を探るかが最大の疑問です。トリア財務相の投資家を安心させたい意向に対して、連立政権の指導者達は予算案についてEUと対立しています。現在、イタリアの予算案の財政赤字はGDPの2%をやや上回るのではないかと見られています。ただし、EUの「安定成長協定」で定められている、単年度の財政赤字はGDPの3%以内という財政規律を遵守したとしても、まだイタリアの政府債務がGDPの60%以内という規定に違反していることは明記する必要があります。また、イタリアが積極的な予算案を策定して、財政赤字が3%を超えるという可能性について、絶対ないとは言い切れないと考えます。

現段階では、イタリア国債の下落は、他のユーロ圏周縁国(イタリア、スペイン、ポルトガル)の国債価格に影響していません(グラフ1参照)。それでも、イタリアの予算案の中身と財政赤字の対GDP比率が不透明で、今後ともイタリアの国債価格が乱高下する可能性が否定できないことから、ユーロ圏周縁国の国債への投資に消極的な姿勢が見られます。

グラフ1:ユーロ圏周縁国の国債とドイツ国債との利回り差の推移(bp、赤:イタリア10年国債-ドイツ10年国債、灰色:スペイン10年国債-ドイツ10年国債、青:ポルトガル10年国債-ドイツ10年国債)

   

国債市場はイタリア国債に上乗せ金利を要求

国債市場の投資家は、イタリアの新連立政権がGDPに対する財政赤字の比率を高めるだろうと見ています。そのため、2018年8月中旬よりイタリア10年国債の利回りは3%を超えていて、この水準は五つ星(MS5)と同盟が連立に合意した次の週以来です。

言い換えるとイタリアの新政権は、前政権と比較すると、財政政策に関してより積極的に動く可能性があるため、国債市場の参加者はイタリア国債に上乗せ金利を求めています。イタリア国債のドイツ国債に対する上乗せ金利は、連立政権発足以来200ベーシスポイント(bp)を超えていて、2018年8月31日には291bpに達しました(グラフ2参照)。

グラフ2:イタリア国債とドイツ国債の利回り推移(%、赤:ドイツ10年国債利回り、灰色:イタリア10年国債利回り、青:イタリア2年国債利回り)

   

市場では、イタリア政府は妥協的な財政政策を採用して、財政赤字を2%をやや超える水準とする見方があります。この予算案の場合、GDPに対する政府債務の比率は安定的に推移することを意味します。もちろん、基礎的財政収支の黒字を維持して、堅調なGDPの成長が前提となります。しかしながら、このような予算案を成立させるためには、連立政権内で大きな抵抗を受け、妥協まで長い時間がかかる恐れがあります。また、もしイタリアが財政赤字がGDPの3%未満というルールに抵触しなくても、政府債務がGDPの60%を超えている状況に変わりはなく、EUとの対立につながり、結果としてイタリア国債の下落(利回りは上昇)を招きます。ただし、財政赤字が2%近辺という3%を大きく下回る水準に落ち着くならば、イタリア国債のドイツ国債に対する上乗せ金利は250bpまで縮小する可能性があります(グラフ1参照)。ドイツ10年国債の利回りが0.6%程度と仮定すると、イタリア国債の利回りは3.1%程度と試算できます(グラフ2参照)。

しかし、イタリア政府が3%を超える財政赤字となる、積極的な予算案を策定する可能性について、絶対ないとは言い切れません。このような予算案の場合、よりEUとの対立が激しくなり、イタリアの財政政策が悪化するとの観点から、イタリア国債は大きく売り込まれる可能性が高まります。このような事態が起こると、イタリア国債のドイツ国債に対する上乗せ金利が350bpに達するとの見方が出てきます。このような場合、2018年8月31日のように、ドイツ10年国債の利回りを0.3%近辺とした場合、イタリア10年国債の利回りは2014年以降見られなかった水準である3.8%に達すると試算できます。

イタリアの格下げが視野に入る可能性

ドイツ国債に対するイタリア国債の上乗せ金利を、他のユーロ圏周縁国の上乗せ金利と比較し、また信用格付を見た場合、イタリアは今後格下げの可能性があり、その場合は投資不適格になります。(グラフ3参照)。格付会社のムーディーズ社とフィッチ社は、イタリアの格付を引き下げる方向で見直していて、一段階の引き下げの可能性があります。

イタリアが投資適格に留まるためには、格下げを回避する必要があります。しかし、投資不適格への格下げは、イタリア国債市場での取引の結果です。まず第一に、ICE BofAML All-Maturity All-Euro Governmentインデックスによると、イタリアはフランスに次ぐユーロ圏第二位の国債の発行国であり、ユーロ国債の残高の22%を占めています。この事実は、ユーロ建国債のファンドはイタリア国債を大量に保有していて、今後売却を強いられる可能性があります。さらに、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和政策における投資対象の国債は、4つの格付会社(フィッチ社、ムーディーズ社、S&P社、DBRS社)のうち最低でも一社から投資適格の格付を得る必要があります。量的緩和は、2018年の年末に終了するとの見方がありますが、2019年に130億ユーロの再投資が予想されており、ECBは引き続き国債の大口購入を継続します。

グラフ3:欧州各国の国債とドイツ国債の利回り差(bp、欧州各国の10年国債-ドイツ10年国債)と格付(フィッチ社、ムーディーズ社、S&P社、DBRS社の平均)

   

最後に、もしイタリア国債が、上記の格付会社4社のうちの半数から投資不適格とされた場合、イタリアの金融機関に対する影響が大きく、金融セクター全体の格下げにつながる可能性があります。しかしながら、最近の構造改革と不良債権処理の進展によって、有力な金融機関は投資適格の格付を維持できる可能性があります。イタリアのソブリン・リスクは、これまでに金融機関のリスクにかなり織り込まれていると見ています。イタリアの主要金融機関のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の平均水準は、イタリアの5年のCDSを下回っています(グラフ4参照)。

さらにイタリア中央銀行によると、2018年5月現在、イタリアの金融機関はイタリア国債の残高の16%を保有していて、これは量的緩和政策によるイタリア中央銀行の保有比率と同じです。

グラフ4:イタリアとイタリアの金融機関のCDSスプレッド推移(bp、赤:イタリア5年国債CDS、灰色:イタリアの金融機関の劣後債CDS、青:イタリアの金融機関のシニア債CDS)

   

成長率にも注目する必要

イタリアの債務問題に対して、GDPの成長率が重要な鍵となります。GDP成長率の急激な低下は、イタリアの財政政策の選択肢を減らし、EUはより強行な姿勢となり、債務問題の先行きが危うくなります。他のユーロ諸国同様、イタリアの2018年前半の成長率は低迷しました。国内需要が、経済成長の主要な要因で、対外需要の弱さを補っています。最近の調査でも、イタリア経済の上昇は見られず、せいぜい現状維持が良いところです。最近、国内の製造業セクターが特に減速していて、政治的な懸念から国内需要も落ち込む可能性が出てきました。

当面は現状を注視

これまで見てきたように、イタリアの財政赤字は2%近辺で、政府債務は既に高水準とはいえ増加率は限定的な場合、イタリア国債のドイツ国債に対する上乗せ金利は縮小する可能性があります。この場合の上乗せ金利は250bp程度が予想されますが、もし財政赤字が3%近辺になった場合350bpにまで拡大する恐れがあります。予算案次第で、イタリアの上乗せ金利が大きく変動することが予想され、9月27日締切りの経済財政文書(DEF)を控えて、当面は現状を注視する必要がありそうです。

(※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。)

当資料をご利用にあたっての注意事項等

●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。 ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。


ページの先頭へ戻る