9月FOMCレビュー:FRBの利上げは道半ば | ピクテ投信投資顧問株式会社

9月FOMCレビュー:FRBの利上げは道半ば 北米 米国 先進国

2018/09/28先進国

ポイント

米連邦公開市場委員会(FOMC)は2018年9月25~26日の定例会合で、市場の予想通り、フェデラルファンド金利(FFレート、政策金利)の誘導目標のレンジを0.25%引上げ、2.0%から2.25%としました。米国経済の成長には自信を示す一方で、利上げのペースに変更はありませんでした。

 

今回の連邦公開市場委員会(FOMC)で注目されたのはジェローム・パウエルFRB議長が米国経済の先行きに引き続き楽観的な見方を示し、中国との貿易摩擦の継続による経済の下振れリスクを改めて軽視したことです。パウエル議長は、FOMC終了後の記者会見で、「米国経済はとりわけ輝かしい局面にあり、現在の良好な環境の継続を想定するもっともな理由がある」と述べています。FRBの成長率見通しの上方修正も、パウエル議長の楽観的な見通しを支持しています。FOMC参加者による予想は2018年が前年比+3.1%(前回予想から0.3%の上方修正)、2019年が同+2.5%(同0.1%の上方修正)となっています。

パウエル議長は、貿易摩擦が経済に重要な影響を及ぼしたという事実は、これまでのところ「確認されず」、中国からの輸入品に賦課される第3弾の関税の影響も「軽微」だと思われると述べていますが、基本シナリオは、貿易交渉が(ホワイトハウスが公式に表明している)「公正な」通商合意を通じて、いずれかの時点で、解決されることを前提としていることも示唆しています。また、純粋な保護主義に陥ることは米国経済にも世界経済にも好ましくない結果をもたらすであろうことを強調しています。

やや意外に思われるのは、米国経済に対するパウエル議長の楽観的な見方が、今後の利上げ幅の拡大や利上げ終了時の政策金利の水準に反映されていないことです。(2021年までの予想期間で)最も高い金利は3.375%と従来と変わっていません。予想の水準が変わらないことからFRBのハト派的な姿勢が示されたとみる市場関係者がいるかもしれませんが、声明文の行間からは、実は、タカ派的な姿勢が読み取れるのです。

短期金融市場はFRBの利上げ予想に懐疑的
―― FOMC参加者による政策金利予測と市場予想 ――

※政策金利予測のドットは各参加者(16名)の予測値、折れ線グラフは予測の中央値、破線(市場予想)はFF金利先物価格にみる政策金利予想
出所:ブルームバーグ、FOMC関連資料のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

利上げ打ち止め時の政策金利は低水準にとどまるか?

FOMC参加者の予測する将来の政策金利(金利予測分布図、ドット・プロット)は、6月の会合時と変わらず、2019年に3回の利上げ(年末の政策金利は3.125%)、2020年に1回の利上げ(3.375%)を示唆しています。一方、FRBが、政策金利の基準である名目中立金利(景気を冷やさず過熱もさせないインフレ調整前の金利)に等しいと解釈していると考えられる「中長期の」ドット・プロットの中央値は、前回会合時の2.9%から3.0%に小幅に上方修正されています。

興味深いのは、パウエル議長が、予測の策定にあたっては、それがいかなる予測であっても「謙虚」でなければならないと述べる一方で、今後数四半期間の中立金利予測の「劇的な変更」は想定されないと述べていることです。FRBには、米国経済の「長期停滞論」の信奉者が残っており、年初来の設備投資と雇用の高い伸びが供給面(サプライサイド)に起因することをFRBは確信できていないということになります。米国の長期の予想潜在成長率は、1.8%に留まります。

このような状況下、FRBの副議長にリチャード・クラリダ氏が就任しました。前職(カリフォルニア州に拠点を置く資産運用会社ピムコの債券運用部門幹部)で「ニューノーマル」および「ニュー・ニュートラル」の信奉者だったクラリダ氏は、未だ、公の場での(FRB副議長としての)発言を行っていませんが、FRB内の議論の場では、市場が予想する以上に、ハト派的見方の影響を及ぼしている可能性がありそうです。

FOMC参加者による経済予測の推移

※各参加者の予測の中央値、インフレ率はコアPCE
出所: FOMC関連資料のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

パウエル議長、グリーンスパン元議長に倣う

今回の会合で注目されたのは「パウエル・ドクトリン」が認められたことであり、それがグリーンスパン元議長の政策運営スタイルに多くの点で酷似していることです。

グリーンスパン元議長が2004年から2005年にかけてFOMCの会合のたびに利上げを実施したように、パウエル議長は2会合ごとに0.25%の着実な利上げを行うこととしたように思われます。パウエル議長は近時の金融市場の動向に動ずることなく、金融システムのぜい弱性は「適度」に過ぎないとの見解を繰り返しています。また、各種の予測や経済モデルよりも実際のデータを重視する現実主義的な見方を強調しています。

FOMC終了後の記者会見でも、中立金利である3%以上に政策金利を引き上げるかどうかについての決定を含む将来の金融政策は「今後何が起こるか」次第だろうとのコメントを繰り返しています。前回まで記載されていた「(金融政策のスタンスは引き続き)緩和的だ」との文言は今回の声明文からは削除されています。これは、将来の利上げの決定への影響を減じるために行われたものと思われます。

興味深いことに、イエレン前議長の退任後、声明文は以前と比べて遥かに短くなり、グリーンスパン元議長の任期終盤の声明の「短さ」に近いものとなっています。

上述の状況から判断すると、パウエル議長は、グリーンスパン元議長に倣い、経済に何等かの「変調が起こる」まで利上げを継続するのではないかとの強い印象を与えます。「何等かの」とは、米国経済の(急激な)減速あるいは金融市場の(大幅な)調整を指すと思われます。FRBが、市場が現在想定している以上の長期にわたって利上げを行いたいとの衝動に駆られる可能性もあることが行間から読み取れます。

グリーンスパン元議長とパウエル議長の見解に違いがあるとしたら、米国の経済成長と労働生産性の推移における「レジーム・シフト」(基本構造の転換)に対して、パウエル議長がさほど確信を持てないでいるように思われることと言ってよいかもしれません。パウエル議長は、(10年前の)金融危機が潜在成長率ひいては中立金利に継続的な影響力を及ぼしていると見るイエレン前議長の影響を多大に受けているように思われます。とはいえ、今後数ヵ月のうちに新たな進展がないとも限りません。労働生産性が改善されれば、パウエル議長が金融危機時の影響からの脱却を促されることも考えられます。換言すると、労働生産性の上昇(あるいは設備投資の伸びの加速)は、パウエル議長の見方をグリーンスパン元議長の見方に収斂させると言えるかもしれません。

FRBは利上げ打ち止め時の政策金利の水準を控えめに予想

出所:ピクテ・グループ

政策金利の上振れリスク

米中の貿易摩擦が悪化の一途を辿る中、FRBの12月の利上げはほぼ確実だと思われます。ドット・プロットはFOMCの大方のメンバーの見解がこのような見方に収斂しつつあることを示唆しています。

2019年の利上げについて、ドット・プロットを額面通りに受け止めるならば、3月と6月の2回に加え9月にも利上げがあり得ると考えられます。今回のFOMC声明文の行間からは、貿易摩擦にも係わらず、四半期毎に0.25%ずつの着実な利上げを続けるとの強い意志が垣間見られるように思われます。

FFレートは中立金利を下回って推移

出所:ピクテ・グループ

パウエル議長は、記者会見の席上でFRBのバランスシート政策についての発言を控え、(利上げ政策と同様、)「自動操縦」していくのではとの印象を残しました。つまり、2017年6月の会合で策定した(量的緩和プログラムで買い入れ、満期償還となった債券の一部再投資を含む)バランスシート縮小の枠組みは、引き続き、有効だということになります。

既に発表の通り、10月以降、毎月300億ドルの米国国債および200億ドルの住宅ローン担保証券が償還されます。換言すると、FRBの再投資の上限は、(3ヵ月毎に米国国債は60億ドル、住宅ローン担保証券は40億ドルと)何ヵ月間か漸増した後、天井を打っており、FRBのバランスシートは2018年8月末までの1年間で2,330億ドル縮小しています。パウエル議長はFRBのバランスシートをより「正常な」水準に戻したい(正常なバランスシートとはどのような状況を意味するのかは明らかにされていませんが、)との意向を示唆しているものの、バランスシート縮小計画の実現は容易ではないと思われます。

各種の景気先行指数は、2018年下期の米国GDP成長率の堅調な推移を示唆

出所:ピクテ・グループ

FOMCの投票権を持つメンバーと政策スタンス

 

出所:FED資料、各種報道等を使用しピクテ投信投資顧問作成

FRBが注目する経済指標

出所:ピクテ・グループ

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

当資料をご利用にあたっての注意事項等

●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。 ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。


ページの先頭へ戻る