グローバル・マーケット・ウォッチ:イタリアの財政破綻を巡る懸念が浮上 | ピクテ投信投資顧問株式会社

グローバル・マーケット・ウォッチ:イタリアの財政破綻を巡る懸念が浮上 先進国 欧州/ユーロ圏

2018/10/12先進国

ポイント

イタリアの連立政権が公表したポピュリスト色の強い予算案は、欧州連合(EU)の承認を得られそうにありません。

イタリアは、親戚の集まりでよくみかける「不機嫌な叔父さん」のような態度を取って、EU加盟国をハラハラさせています。

EUの最も直近の騒動は、イタリアの大衆迎合主義(ポピュリズム)政権が漸く提出した今後3年間の予算案を巡るものです。 連立政権の中心である極右「同盟」とポピュリズム政党「五つ星運動」は、選挙戦のさなかに次々と打ち出した安易な公約に首を絞められた格好です。予算案に組み込まれた施策は、最低所得補償(「ユニバーサル・インカム」)や均一課税制度の導入、(2011年の年金改革の破棄につながる)年金受給額の引き上げ等、財政移転に過度に傾斜したものであり、景気浮揚を図った公共投資も含んでいます。

当初は、このような施策を実現させるならば、イタリアの債務がEUとの間で定めた上限を遥かに超える状況を引き起こし、EUの財政規定に抵触する可能性があることや、イタリア政府の無責任な予算案が、最悪の場合、イタリアのユーロ放棄につながる可能性があることが懸念されました。このような状況を反映した金融市場では、イタリア10年国債のドイツ10年国債に対する上乗せ利回り(独・伊の10年国債利回りスプレッド)が大幅に拡大し、ユーロ相場が動揺しました。

もっとも、予算案から一部の施策が撤回されたため、市場の下げ圧力は幾分弱まっており、最新の報道では、政府支出の拡大策は投資家が懸念するほどのものではないとの見方も伝えられています。 とはいえ、不満を募らせる国民をなだめつつ、ユーロ加盟に必須の政策を維持しなければならないという緊迫した状況は、資産価格のボラティリティ(変動率)の上昇に拍車をかけ、経済状況のぜい弱なユーロ周縁国に影響が及ぶ公算が高いことを示唆しています。

問題は予算案の詳細

予算案の詳細は殆ど公表されていないことから、以下では、推測される予算案の内容とその重要性についてのピクテの見方を紹介します。

新しい予算案は、イタリアの2019年度の財政赤字がGDP(国内総生産)比2.4%に達し、当初予想の同2.0%を上回ること、また、4月に公表されたEUの「安定・成長協定収れんプログラム」が前提とする同0.8%の3倍に相当することを示唆しています。

もっとも、イタリアの財政が危機的状況にあるというわけではありません。新しい予算案に基づいて予測したイタリアの利払い(及び元本償還)コストはGDP比3.5%前後で安定推移し、GDP比の財政赤字は、名目GDP成長率が(前年比)2%を上回る限り、増えないと考えられるからです。

一方、予算案が、極めて高位に留まる政府債務残高の削減ペースを鈍化させることも明らかです。昨年末時点で131.8%に達していたGDP比の政府債務残高は、前政権の予算案では2021年までに122%に縮小されるはずだったのですが、新しい予算案のもとで、今後3年間の名目GDP成長率を前年比3%と想定した場合には、2021年末になっても124.9%に留まることが予想されます。イタリアはEUの「安定成長協定」に抵触することになります。

このような状況は、イタリア以外のEU加盟国に難しい選択を迫ります。政治危機ならびに金融危機を引き起こす可能性があってもイタリアに規則の遵守を強要するのか、或いは、イタリアとの対立を回避するために規則違反を見過ごすのかの選択です。残念ながら、両者の歩み寄りは望めそうにありません。

一方、金融市場はあらゆる可能性を織り込もうとしているように思われます。独・伊の10年国債利回りスプレッドは300ベーシス・ポイント(3.0%)を上回り、最近のレンジの上限に達しています。300ベーシス・ポイントのうち、110ベーシス・ポイント程度は「デノミ・リスク」に因るものと考えられますが、このことは、イタリアが自国通貨を選んでユーロを放棄する可能性を示唆しています。ピクテのモデルは、イタリアのユーロ離脱の確率を10%と試算していますが、イタリアの連立政権には、単一通貨ユーロ維持の再度の誓約を急いでいる様子はみられません。

このような状況の一因は、与党の政治家が3つの見通し、即ち、1)EUの統率力がかつてないほど低下しており、今後の選挙結果次第では状況が大きく変わる可能性があること、2)(各国の選挙で)反体制政党が圧勝する可能性があること、3)イタリアが予算案の修正要求に応じないならば、EUが規則を巡る再交渉に応じる可能性があること、に賭けていることにありそうです。 これは、正面衝突のリスクがありながら、一直線上を互いの車に向かって突進するチキンレースのような状況だと言えそうです。イタリアだけではなく、イタリア以外のEUの問題でもあるのは、イタリアが必要とする資金が、EUと欧州中央銀行(ECB)の安全網(セーフティネット)だけではカバーしきれないほど巨額だからです。

今後は、イタリアとEUの対立の過程のいずれかの時点で、イタリアのユーロ離脱の脅しが制止出来ないほどの勢いを増す可能性も考えられます。不幸中の幸いは、イタリアの混乱が再燃してもユーロ圏の周縁国に影響が及んでいないことです。「不機嫌な叔父さん」はワインをこぼしてシャツにシミをつけ、椅子をまたごうとして足首を捻挫したものの、バルコニーから転落して通行人に激突する状況には至っていない、換言すると、痛手は十分被ったものの他人に害を及ぼす状況には至っていない、からだと思われます。

イタリア経済の見通し(%変化率、前年比、Public Debtのみ対GDP比)

   

出所:ピクテ・アセット・マネジメント

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