グローバル・マーケット・ウォッチ:市場動揺時はロングショート戦略が有効 | ピクテ投信投資顧問株式会社

グローバル・マーケット・ウォッチ:市場動揺時はロングショート戦略が有効 先進国 欧州/ユーロ圏 米国

2018/10/15先進国

ポイント

量的金融緩和(QE)が終了し、市場のボラティリティが上昇する局面では、クレジット債(社債)のトータル・リターン戦略が有効だと考えます。

クレジット債(社債)のトータル・リターン戦略が本領を発揮しつつあります。ここ数年間、中央銀行の「緩和マネー」を支えに上昇基調を辿ってきた社債市場は、世界で最も重要な中央銀行(中銀)、即ち、米連邦準備制度理事会(FRB)、の金融緩和の巻き戻しと、その他中銀の緩和縮小政策への対応を迫られています。

金融緩和から引き締めへの転換(シフト)が、市場のボラティリティの上昇に拍車をかけ始めています。ボラティリティの上昇時には、社債の(地域)市場や戦略を一切限定しない機動的な投資手法がいかに有効かを、ピクテの「グローバル・クレジット・ロングショート戦略」の運用を担当するジョン・モービーが解説します。

債券市場を巡る投資環境はどう変わったか?投資家は態勢を整えているか?

世界の中銀が「協調的な」量的緩和から「協調的な」量的引き締めに転じたことを未だに理解していない投資家が多いように思われます。その一因は、中銀が、量的緩和実施時には、金融危機時の市場を支えるための政策であったことを明確に説明せず、また、足元の利上げ局面では、金利の正常化を穏便に済ませようとしていることです。一方、政策立案者は、単独行動は取れないことを理解しています。2011年、欧州中央銀行(ECB)が(他の中銀と協調せず、)独自路線を進んで利上げを行った結果の市場の歪みを十二分に認識しているからです。

2017年(6月)のポルトガルのシントラで開催されたECB年次フォーラム以降、世界の中銀がより協調的な量的引き締めに移行しつつあることが明らかになり始めています。日本銀行の隠れ緩和縮小(「ステルス・テーパリング」や、2016年のブレグジット危機時の緊急利下げ以降のイングランド銀行の2度の利上げは、いずれも、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に係るいかなる施策によっても正当化できない引き締めの例です。世界の労働市場は逼迫の様相を呈しているかもしれませんが、インフレは相対的に落ち着いており、インフレ率と失業率の逆相関を説明するフィリップス曲線は過去の例ほど明確に示されていません。

では、中銀は、何故、穏やかな物価上昇圧力を無視して金融引き締めを続けるのでしょうか?今回の金利正常化を左右しているのは、中銀が、1)過去の金融政策の「政治的な帰結」を懸念していること、2)世界経済の次の後退局面に備えて利下げ余地を確保しておきたいと考えていることの2つの要因です。

“「中銀の金融政策が相俟って、大衆迎合主義(ポピュリズム)政治を間接的に刺激してきたのです。」”

2つの要因は、今回の利上げ局面を過去の利上げ局面とは極めて異なるものとしています。中銀幹部は、資産価格を膨張させたことが社会構造を分断させる原因になったのではないかと危惧しています。賃金の伸び悩みと緊縮財政を背景に、中間所得層が(忍耐の)限界点に追い詰められる一方で、富の分配が、「所得上位1%」の層に集中する傾向がますます強まっています。信用の創造と拡大に基いて経済が成長する世界にとって健全な状況とはいえません。

同時に、購買力は、従来、経済のエンジン役とみなされてきた限界消費性向の高い(低・中所得)層から遥かに低い(高所得)層にシフトしています。従って、失業率の低下は、過去の実績ほど、インフレを誘発していないのです。

ゼロ金利も問題を引き起こしています。価格決定力が、労働から資本にシフトしているのです。極度の金融緩和政策が、企業が必要とする資本を極めて安価なもの、場合によっては、ただに等しくしたことが、企業に設備投資を思いとどまらせ、自社株買いや増配の原資となる債務の形をとった金融エンジニアリングを選好させてきたからです。この結果、債券投資家から株主に富を移転する歪みが創り出されることとなりました。

中銀の金融政策が相俟って、世界中で大衆迎合主義(ポピュリズム)政治を間接的に刺激してきたのです。世界の中央銀行は、インフレ圧力の蓄積とは必ずしも関係があるとは言えない複数の理由で金利の正常化を図っていることになります。

このような状況は、市場のボラティリティにどのような意味を持つか?

金利の正常化が、2013年の「テイパー・タントラム」や2016年年初の時期、また、今年夏場の市場の動揺時のようにボラティリティ上昇のきっかけとなるかどうかは見極めが困難です。いずれのボラティリティ上昇にも金融引き締め局面への転換が続いたからです。このような先例は、債券利回りが人為的に低位に抑えられ、適正価格を見出すことが事実上不可能となった市場にはとりわけ重要です。中銀は、金利上昇の市場への打撃に備え、これを和らげようと努めつつも、市場の鎮静化を図って口先介入を行う様子はありません。量的緩和の最大の恩恵に与った国の一つであるトルコが、世界的な量的引き締めの犠牲となった最初の国の一つとなったのも不思議ではありません。

ピクテのグローバル・クレジット・ロングショート戦略と主要指数との相関係数(週次ベースの%変化率、2011年6月30日~2018年9月30日)

   

出所:ピクテ・アセット・マネジメント

このような(中央銀行の姿勢の)変化は、市場の動揺の引き金となり、バランスシートや事業モデルやガバナンスに問題を抱えた企業を危機に晒す公算が高いと考えます。

機動的な運用は、ボラティリティの上昇に有効か?

債務比率が非常に高く、従って、リスクの最も高い企業の比率が極端に上昇してしまう可能性のある指数には縛られない運用をすることが肝心です。機動性が、セクターや地域の過度の偏りを回避することを認識することも重要です。

機動性の本質的な特徴の一つは、資産と債務の不対応(ミスマッチ)を許容しないことです。2008年の金融危機の教訓は、資産と債務のミスマッチがボラティリティ上昇局面において深刻な問題になり得るということです。流動性が低いポジションを大量に抱えることは、市場の危機時につきものの顧客の突然かつ立て続けの解約注文に対応するために、最も優良で最も流動性の高いポジションを閉じなければならないはめに陥るということです。市場の危機時の解約に対応できる態勢を整えておくことが肝要であり、従って、明確な価格設定(値付け)が見いだせないセクター或いは構造的な理由で流動性の低いセクターを避けることは理に適っているのです。流動性は極めて重要であり、債券市場において適正価値から逸脱した価格設定が散見される理由となっています。

多くの資産が割高感を強める状況に投資家はどう対応すべきか?

足元、投資適格社債の大半は、クーポン収益の観点では投資妙味があるとはいえず、バリュエーション水準を勘案すると、大幅な調整が起こるリスクもあると思われます。このことは、銘柄選択がかつてないほどに重要性を増していることを意味します。指数の中で存在感を増しつつあるBBB格社債のうち、景気低迷期に格下げの可能性が高い銘柄を中心としたショート・ポジションを構築して利益をあげる投資の好機が増しています。

社債のリターン特性は、本質的に負の非対称を示し、上振れリスクよりも下振れリスクの方が大きいのですが、景気拡大期の最終局面においてはこのような特性が通常以上に顕著に表れます。歴史的な低金利の環境では、信用の格下げあるいは財務再編を余儀なくされた企業の社債を保有していても何年間もクーポン収入が得られないという状況が起こり得ます。

ピクテのグローバル・クレジット・ロングショート戦略は、絶対リターン戦略であるため、相対パフォーマンスで評価されないという恩恵に与ります。全ての銘柄が買われ過ぎの市場では、割高な(指数構成)銘柄を売却する、或いは、相対的にディフェンシブな銘柄に投資することも可能であり、その際、社債の相対価値に着目したロング・ショート戦略、或いは、企業の資本構成に着目した投資を行うことで、(中長期の投資期間を通じ、)ボラティリティに捕らわれることなく、ボラティリティの恩恵を享受する可能性が確保できると考えます。

(※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。)

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