欧州社債市場の規模からの教訓 | ピクテ投信投資顧問株式会社

欧州社債市場の規模からの教訓 欧州/ユーロ圏

ポイント

欧州社債市場の規模拡大の契機の一因がユーロ圏の出現で、先行する米国市場の6割程度の規模となっています。欧州社債市場の規模の拡大はハイイールド市場など市場の厚みの面でも発展を続けています。日本同様、間接金融の割合が高い欧州での経験は日本の社債市場拡大のヒントとなる可能性があります。

欧州社債市場の規模:米国社債市場の規模は下回るが、日本社債市場を上回る

欧州社債市場の規模や特色をバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの代表的な社債指数を用いて述べます。

まず、社債市場を投資適格社債とハイイールド債(格付けがBB以下)に分け、3つの国・地域(ユーロ圏、英国、米国)の各データを示しています(図表1,2参照)。

図表1:主な投資適格社債市場の特色
(時点:2015年2月5日)

 

図表2:主なハイイールド債市場の特色
(時点:2015年2月5日)

 

※投資適格社債市場:BofA(バンク・オブ・アメリカ)メリルリンチ社債インデックスの各国・地域指数、ハイイールド市場: BofAメリルリンチ・ハイイールド・インデックスの各国・地域指数
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

欧州(ユーロ+英国)社債市場の規模は投資適格債市場が約365兆円、欧州ハイイールド市場が約63兆円です。したがって、欧州社債市場の規模は約428兆円です。

参考までに、日本の普通社債市場(除く金融債)の規模が約60兆円程度であるのに比べると7倍程度の大きさとなっています。

一方で米国社債市場は投資適格社債とハイイールドを合計すると約773兆円となることから、欧州社債市場の規模は米国の6割程度と見られます。

米国に比べ、資金調達において伝統的に銀行融資など間接金融のイメージが強い欧州ですが、その姿が変わりつつある様子を見てゆきます。

拡大する欧州社債市場:ユーロ圏の誕生は社債市場拡大の転機に

ユーロ圏の社債市場(投資適格社債とハイイールド債)の規模の推移を振り返ると(図表3参照)、1999年のユーロ導入以来、ユーロ圏の社債市場の規模は順調に拡大しており、足元ではハイイールド市場が伸びています。
図表3:ユーロ圏社債市場の規模の推移
(年次、期間:1999年~2014年)

 

※投資適格社債市場:BofA(バンク・オブ・アメリカ)メリルリンチ社債インデックスの各国・地域指数、ハイイールド市場: BofAメリルリンチ・ハイイールド・インデックスの各国・地域指数 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

ユーロ圏の社債市場拡大の背景は

(1) ユーロ導入による巨大市場の出現

ユーロ導入当時、従来ユーロ圏内の国債に投資していた投資家が、ユーロ圏の国債利回りが低下方向で収れんするのに伴い投資対象を国債から社債へシフトする動きが見られました。

(2) 規制緩和による取引拡大と資金調達

欧州の通信業者は第3世代携帯電話システム(UMTS)の構築を、一定の範囲内で事業者が協力することが認可されたことなどを背景に大規模ネットワークの構築機運が高まる中、幅広く資金を調達する市場として社債市場の拡大が見られました。

(3) M&Aの増加

ユーロ圏では2000年から製薬、通信セクターなどでM&A(合併・買収)の活発化に伴い社債による資金調達が急増しました。

この間の欧州社債市場拡大の様子を、日本の社債市場の規模の推移と比べると違いが見られます(図表4参照)。日本と欧州は米国に比べ間接金融の割合が高いと考えがちですが、市場の拡大ペースには違いが見られます。

図表4:日本とユーロ圏の社債市場の規模の推移
(年次、期間:1999年~2014年、日本は2013年迄)

 

※ユーロ圏社債:BofAメリルリンチユーロ圏社債とハイイールド債インデックスの時価総額合計を指数化 ※日本社債:電力債、一般債、NTT・JR・JT債の現存額合計を指数化
出所:ブルームバーグ、日本証券業協会のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

欧州社債市場:規模の拡大は、市場の質にも変化を生む

日本とユーロ圏の社債市場の規模の違いは質の面にも違いをもたらしています。ここでは主な違いとして名目GDP(国内総生産) に対する社債の割合と、格付け分布について述べます。

図表5は社債現存額を名目GDPで割った比率を2時点で比較したものです。ユーロ圏では社債市場が名目GDP比に比べ相対的に増えています。一方、日本の変化は小幅です。欧州ではGDPが上昇する中、社債の現存額が増える形で比率が上昇しており、欧州社債市場が資金調達の手段として新たに幅広く受け入れられた様子が伺えます。

図表5:日本とユーロ圏の社債/GDP比率の比較
(時点、2000年末と2014年末、日本は2014年9月末)

 

※ユーロ圏社債:BofAメリルリンチ(ユーロ圏社債とユーロ圏ハイイールド債)指数の時価総額合計、※日本社債:電力債、一般債、NTT・JR・JT債の現存額合計※ユーロ圏名目GDP2014年は推定値
出所:ブルームバーグ、ユーロスタットのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

次に、日本と欧州の社債について、格付けの分布を見ると(図表6参照) 2つの点に気がつきます。まず、欧州の格付け分布の裾が広いことです。2つ目は日本にはハイイールド社債市場がほとんど存在しないことです。

図表6:日本とユーロ圏の社債格付け分布の比較
(時点:2015年2月5日、日本は2013年迄)

 

※社債格付け分布:ユーロ圏はBofAメリルリンチ社債インデックス(投資適格とハイイールド) から算出、日本は格付け情報センター(R&I)格付け 出所:R&I,ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

まず、日本の格付けが比較的狭い範囲に集中しているのは社債を発行するセクターが電気、ガス、通信、金融、運輸など比較的限られているなか、最近は範囲が拡大してはいますが、社債を発行する企業の顔ぶれに変動が少ないためだと思われます。

2つ目のハイイールド市場について、欧州ハイイールド市場の規模は日本の社債市場全体ほどの大きさがあり、取引も活発です。ハイイールド市場が活発でないと、ファーリン・エンジェル(投資適格債格付けから転落した社債)は復活の機会が得られにくくなる懸念も想定されます。

欧州ハイイールド市場は発行規模も拡大しており、フィッチ・レーティングスによると、2014年前半(1~6月)の欧州ハイイールド市場の発行総額は約1,130億ユーロ(約15.2兆円)と同時期の米国ハイイールド債の発行を上回る金額を記録しています。利回り追求の動きと、相対的に低い債務不履行(デフォルト)率が発行額を押し上げたものと見られます。

ユーロ圏という巨大市場の発生に伴い拡大してきた欧州社債市場の経験は、アジアという巨大な市場を控える日本の社債市場発展の参考になるものと思われます。


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