欧州ハイイールドにギリシャショックは影響したか | ピクテ投信投資顧問株式会社

欧州ハイイールドにギリシャショックは影響したか 欧州/ユーロ圏

ポイント

欧州ハイイールド債スプレッドの2015年最初の2ヵ月の動きを見ると、ギリシャ債務懸念などにもかかわらず、利回りが高いシングルBを中心にスプレッドは縮小傾向で、リスク懸念より利回り追求の動きが勝る展開となっています。

ギリシャ債務懸念再燃:
欧州クレジット市場への影響は

ギリシャでは、2014年後半以降、反緊縮政策の勢力が支持を広げ、総選挙が前倒しになるなど政局の不透明感が高まりました。ギリシャへの金融支援は財政緊縮が条件とするユーロ圏財務相会合(ユーログループ)と、反緊縮政策を掲げた新政権との対立により、ユーロ債務危機再来の懸念が高まる局面もありました。しかし、2015年2月にユーロ圏の混乱を避けたい両者が支援延長で合意したためギリシャ救済に道を開く運びとなりました。

また、2015年1月13日付欧州クレジット・レター(Vol.1)で指摘したように、2014年後半はデフォルト(債務不履行)やテクニカルな理由でもリスク回避姿勢が高まり、信用スプレッドは拡大していました(図表1参照)。

このような展開で迎えた2015年、リスク感応度が高い欧州ハイイールド債のスプレッドの動向をはじめの2ヵ月について振り返ると、リスク回避姿勢の影響は軽微でスプレッドは概ね安定/低下傾向でした(図表2参照)。

図表1:欧州ハイイールド債格付け別スプレッドの推移
(日次、期間:2014年1月2日~2015年2月27日)

 

図表2:欧州ハイイールド債格付け別スプレッドの推移2
(日次、期間:2015年1月2日~2015年2月27日)

 

※欧州ハイイールド債:BofA(バンク・オブ・アメリカ)メリルリンチユーロ圏ハイイールド債インデックスのスプレッド、適格社債: BofAメリルリンチユーロ圏適格社債インデックス ※bp=0.01% ※スプレッド:アセット・スワップ・スプレッド
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

欧州ハイイールド債市場:
2015年順調な滑り出しの背景

欧州ハイイールド債スプレッドの2015年最初の2ヵ月の動きを見ると、1月は全般にフラット(横ばい)で、1月後半から適格社債と同様に、欧州ハイイールド債のスプレッドは、ギリシャ債務懸念にもかかわらず、利回りが高いシングルBを中心に低下傾向です(図表2参照)。このような展開となっている背景として以下の点に注目しています。

(1) ギリシャ債務懸念の影響は軽微

2012年前後のギリシャの債務懸念では、ギリシャ債務の再編にまで発展するなど深刻化したことで、国債利回りは40%に迫る水準まで上昇(価格は下落)しました。しかし、その後の債務再編やユーロ圏当局の安全網の構築もあり、今回のギリシャの債務懸念が再燃した局面での利回りは相対的に低水準で推移しています(図表3参照)。

図表3:ギリシャ10年国債利回りの推移
(日次、期間:2010年3月1日~2015年2月27日)

 

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

また、欧州ハイイールド債に占めるギリシャの構成割合は2%に満たない(2015年2月現在)ことも欧州ハイイールド債市場への影響が軽微であった要因と思われます。

(2) ECB国債購入と利回り追求の動き

2015年3月から始まる欧州中央銀行(ECB)による国債購入の規模は最終的に1.2兆ユーロ(ユーロ圏長期債務残高の2割程度に相当、図表4参照)と巨額で、ユーロ圏の国債利回りは低下傾向です。1.2兆ユーロを2016年9月までに購入すると想定すると、毎月の購入額は約600億ユーロとなり、ネットの発行額を上回る購入規模になると見られます。過去、量的金融緩和による国債購入で流動性が供給されることでスプレッド縮小傾向が見られたことも下支えとなっている可能性があります。

図表4:ユーロ圏国債と社債市場の規模
(時点:ユーロ圏国債2014年11月、他は2015年2月)

 

※ユーロ圏投資適格債、BB格、B格:BofAメリルリンチユーロ圏ハイイールド債インデックスの投資適格、BB格、B格における各時価総額
出所:ブルームバーグ、ECBのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

さらに欧州ハイイールド債市場で魅力的なのが相対的な利回りの高さで、市場全体で4.3%、B格ならば5.4%程度と、デフォルト率を考慮しても十分な水準と思われます。

(3) 原油価格下落の影響は限定的

2014年中頃から足元まで原油価格の下落傾向が続いています。石油関連会社でも特に掘削、探索などの企業は事業採算性の問題から原油価格の下落は収益、もしくは事業の継続にまで影響が及ぶ可能性があります。

したがって、原油価格下落局面ではハイイールド債を発行する企業の業績が懸念されます。しかし、欧州ハイイールド債市場では、(石油を含む)エネルギーセクターの構成割合は2%程度と(15%程度の)米国に比べて小さく、原油価格下落の影響は限定的と見られます(図表5参照)。

図表5:欧州ハイイールド債市場のセクター別割合
(時点、2015年2月末)

 

※エネルギー・セクターの構成割合は2%程度 ※欧州ハイイールド債市場:BofAメリルリンチ・ユーロ圏ハイイールド指数のセクター別時価総額割合、※その他:生活必需、サービス、運輸、小売、産業などが含まれる
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

(4) 発行市場、まずまずだが

年初からイタリア・テレコム(利率3.25%、2023年償還)や英国の旅行会社トーマスクック(同6.75%、2021年)、バージンメディア(同4.5%、2025年)などが欧州ハイイールド債市場で募集を行っており発行状況はまずまずの出足です。ただし、次の2点に注意が必要です。

1点目は発行ペースが維持できるかです。2014年の欧州ハイイールド債の発行額は約1,560億ユーロと2013年の1,220億ユーロを通年では上回りましたが、発行ペースが好調だったのは2014年前半で、後半は失速しました。2014年12月の発行額は2013年の3割程度となっています。今年が仕切りなおしとなるかに注目です。

2点目は、発行条件です。投資家の利回り追求姿勢が強い中、発行体に有利 (投資家に不利)な条件で債券が発行されることがないか債務条項の内容に注意が必要です。例えば、米国ではあまり見られない「ポータビリティ条項(一定の条件のもと、チェンジ・オブ・コントロール条項を変更できる)」を含めて発行されるケースが、2014年は3割程度といった報道もあります。

記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

欧州ハイイールド債市場:リスク回避姿勢が後退する中のひとつの選択肢

2015年に欧州で想定されるイベントは1-3月期に集中すると見ていました。ギリシャ債務懸念には解決まで不透明な部分もありますが、当面の危機は後退したと見られます。デフォルト率も安定的に推移することが期待されるなか、債務条項の緩和など注意すべき点はあるものの、欧州ハイイールド債の利回りの高さが市場で評価される可能性があると見ています。

当資料をご利用にあたっての注意事項等

●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。 ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。


ページの先頭へ戻る