コラム:ベイルインについて | ピクテ投信投資顧問株式会社

コラム:ベイルインについて 欧州/ユーロ圏

ポイント

ベイルインとは、2008年の金融危機時(リーマンショック)に見られた経営が悪化した金融機関を(最後には税金で)救済する(=ベイルアウト)ではなく、株主と債権者に損失を負担させることで(批判の強い)税金での救済を回避する考え方です。

最近耳にするベイルインとは

ベイルインは、2008年の金融危機時(リーマンショック)に見られた経営が悪化した金融機関を(最後には税金で)救済する(=ベイルアウト)ではなく、株主と債権者に損失を負担させることで(批判の強い)税金での救済を回避する考え方です。

リーマンショック後の救済では、金融機関が「大きすぎてつぶせない(Too-Big-To-Fail)」との判断から公的資金(最終的には税金)による救済を迫られたことから、今度こそ納税者負担を回避と秩序だった破たん処理を目指しベイルインの導入が検討されています。

具体的には金融機関の経営が金融当局等に悪化したとみなされた場合、株式による損失の負担(吸収)に加え、無担保債務等の元本削減や株式転換により経営状況が悪化した金融機関の資本増強、もしくは資本の再構築をはかる措置です。

ベイルインに関するQ&A:

Q1:ベイルインの各国の導入状況は?

A1:日米欧がベイルインの導入を模索するなか、各国・地域の制度、規制に応じた導入方法が検討されています。

米国では;

2010年7月に成立したドッド・フランク法が金融機関の破綻処理に関する法制度の基本となっています。破綻処理は預金保険制度等を運営する連邦預金保険公社(FDIC)が主導するかたちです。米国ではベイルインという用語は用いず、スキームはシングル・レシーバーシップ(危機の発生した金融機関の持株会社を、負担を負わせるレシーバーと、存続させるブリッジ金融会社に分ける)となりますが、実態は持株会社の債務のエクイティ転換など株主と共に債権者に負担を求めており、ベイルインと同様の制度と見られています。

欧州(ユーロ圏)では;

欧州では欧州連合(EU)が2014年5月に金融機関再生および破綻処理に関する指令(BRRD)を公表しベイルインなど金融機関の破綻処理方法が明文化されています。BRRDには金融機関の再生や破綻処理方法として法定ベイルイン(司法手続きによらず、金融当局が金融機関の資本、無担保債務の元本削減や株式転換する権限を持つこと)が定められており、EU加盟国は2015年末までに法定ベイルインの導入が求められています。

日本では;

従来、金融機関の破綻処理は預金保険法102条で一時国有化など特別な破綻処理(ベイルアウト)で対応してきました。しかし、ベイルイン導入を検討する中、預金保険法126条の2を新設し、債務超過に陥った金融機関に対し内閣総理大臣が契約上のベイルイン(損失吸収条件のある劣後債など)を発動する権限を持つとされ、元本削減や株式転換が行われる方向です。ただし、法定ベイルインは日本での導入は課題が山積みと見られています。

Q2:契約上のベイルイン、法定ベイルインとは?

 A2:契約上のベイルインとは、個別の債券やローンなどの条項の中に、(Tier1比率の低下など)一定の基準(トリガー)に抵触した場合元本削減や株式転換を行うことが契約条項に含まれたもので、CoCos(Contingent Convertible Securities)や一部劣後債などが該当します。

法的ベイルインとは、金融機関破綻処理の際、司法手続きによらず、金融当局が清算にかかる優先順位に基づいて、金融機関の資本、無担保債務の元本削減や株式転換する権限を持つことです。

Q3:米国のチャプター11など倒産法制とベイルインは違うのですか?

 A3:法律的な話は専門家にお任せするとして、英国中央銀行元副総裁ポール・タッカー氏のスピーチ(”Resolution: AProgress Report,” Speech at the Institute for Law andFinance Conference , 3 May 2012)を紹介、違いを明らかにします。ポール氏のポイントは非金融機関の破綻であれば司法による倒産法で対処可能だが、金融機関の破綻の場合、預金の引き出しやカウンターパーティーリスクなどのリスクがあるため時間がかかる司法に対応をゆだねる余裕がない。倒産法のように、損失負担の確定を待って処分を始めるのではなく、事前に当局の判断で損失負担を求めるのが、ベイルインであるといった趣旨が述べられています。

Q4:欧州でベイルインで破綻処理が行われる場合、どのように行われるのですか?

 A4:BRRDは破綻処理にベイルインを適用する場合の優先順位、適用範囲を定めています。

損失を処理するイメージは最初がエクイティ(Tier1、その他Tier1の資本商品)により損失が処理(吸収)され、残った損失に対し、(その他Tier1の負債性商品である)Cocos、(Tier2である)劣後債、その次が普通社債という順番が想定されています。

ベイルインの主な対象負債、資本項目については図表1をご参照ください。預金については、預金保険でカバーされない部分についてはベイルインの対象となることが想定されます。また、担保付債務は対象外であることから、カバード債やレポ取引も対象外となる可能性があります。

図表1:ベイルインの主な対象、非対象項目

 

※図表1はBRRD資料からベイルイン対象項目を一部抜粋
出所:BRRD関連資料を参照しピクテ投信投資顧問作成

Q5:欧州でのベイルインの現状は?

A5:BRRDでは既存並びに新規発行の債券にベイルインが一斉に適用されるのは2016年1月ですが、すでに始まっている事例をご紹介します。

1つ目はバーゼルⅢの導入を見据えて、契約上のベイルインとしてCoCosが欧州ではすでに取引されています。2013年頃から発行は増加傾向です。CoCos発行の例を図表2に示しました。

図表2:主なCoCosの発行例

 

※BofAメリルリンチCoCos指数の組入れ銘柄を一部表示
出所:ブルームバーグ、BofAのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

CoCosの代表的な指数であるBofAメリルリンチCoCosインデックスの構成銘柄数は2015年4月末で97となっています。利回りの高さから取り引きも活発に行われています。ただし、CoCosは主要なハイイールド債や投資適格社債に採用されていないため、取引きはオフベンチマークで行われている模様です。

2つ目は2015年3月にオーストリア金融市場庁(FMA)が、先行するかたちで、BRRDに基づいて破綻処理を行った第1号とも言われているケースです。ヒポ・アルペ・アドリア・バンクの破綻後に設立されたオーストリアのバッドバンク(不良資産の受け皿機関)であるヘタ・アセット・レゾリューションは資産査定の結果大幅な資本不足が露呈しました。オーストリア監督当局は(資本注入による)破綻処理計画を断念し、債務の支払い猶予(モラトリアム)を命じており、債券保有者の負担が想定されます。

ベイルインに向けて:

BRRDに基づき、ユーロ圏で本格的にベイルインが2016年年初から開始予定ですが、市場の受け止め方は比較的冷静です。欧州中央銀行(ECB)が流動性を供給する姿勢を維持していることや、既にストレステストや資産査定などを経ており、金融機関の信用不安が後退していることなどが背景と思われます。

したがって、契約上のベイルインとなるCoCosは利回りの高さに注目が集まっています。しかしながら、CoCosのプライシングについて市場では何が適正か明確とはいえない段階であることなどには注意が必要です。

また、オーストリアのケースは限定的な対応であったことから混乱は見られなかった模様です。しかし、欧州の投資家の間でもBRRDに対する認識に違いが見られるなど、潜在的なリスク要因となる可能性もあります。本格的な導入を前に劣後債のみならず、シニア債投資であっても無関心ではいられない問題であり、実施内容の確認などに注意が必要と思われます。

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