ECB債券購入、ギリシャとクレジット市場の動向 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ECB債券購入、ギリシャとクレジット市場の動向 欧州/ユーロ圏

ポイント

2015年も半年近くなり前半の動向を振り返ると、ユーロ圏では社債の動向に影響を与えると思われるイベントが相次ぎましたが、特にECBの国債購入とギリシャ債務返済懸念再燃のスプレッドへの影響を中心に振り返ります。

特集:ギリシャ危機レポート

2015年、ユーロ圏債券市場の変動要因国債市場のボラティリティとギリシャ

欧州中央銀行(ECB)は2015 年1月22 日の政策理事会で国債や機関債を買取対象とする量的緩和策(QE)の導入を発表しました。もっとも、ECBによる量的緩和策はこれが初めてではなく、2014年後半には資産担保証券(ABS)やカバード・ボンドを買取対象とするプログラムが開始されています。ただし発行規模が巨大で流動性の高い国債を購入対象とするQEは従来の購入プログラムと異なる影響が想定されています。

また、2015年1月25日のギリシャ総選挙では、最大野党のSYRIZA(急進左派連合)が予想以上の大差をつけて第1党に躍進しました。緊縮財政に反対を公約に掲げた政権が誕生したことで、緊縮財政を条件にギリシャに対する金融支援を維持してきた債権団との溝が深まる結果となりました。

国債ボラティリティとギリシャ問題のユーロ圏社債市場への影響

2015年も半年近くが過ぎ、年前半の動向を振り返ると、ユーロ圏では社債の動向に影響を与えるイベントが相次ぎましたが、特にECBの国債購入とギリシャ債務返済懸念の再燃のスプレッドへの影響を中心に振り返ります。

2015年の年初、ユーロ圏のハイイールド債、投資適格社債のスプレッドは共に縮小しました(図表1、2参照)。2014年末に向けECBの量的金融緩和による債券購入(QE)への期待が高まり、2015年1月のECB理事会後に計画が公表され、3月の理事会で購入債券の詳細などが発表された後にQEが実施されました。この間、ハイイールド、投資適格社債共に利回り追求の動きが加速するとの期待を背景に買われ、スプレッドは縮小しました。しかし、3月に詳細が公表された頃からスプレッドは拡大しています。特に投資適格社債はQEの購入対象とならなかったことが売り要因となった格好で、「噂で買って、事実で売れ」の格言通りの展開となりました。

次に、2015年4月以降のスプレッドを見ると、足元を除きハイイールド債のスプレッドは横ばいとなった一方、投資適格社債のスプレッドは拡大傾向です。国債利回りの急上昇によるボラティリティの上昇がスプレッドに反映したためと見られます。

最後に足元のスプレッドはハイイールド、投資適格社債とも拡大していますが、主な背景はギリシャ債務返済懸念が主な要因と思われます。ただしスプレッドの水準はハイイールド債は2014年末を下回っています。また、投資適格社債は年末と同程度の水準に戻っただけとも見られ、基本的には、スプレッドはレンジ内での推移とみなすこともできると思われます。

図表1:ユーロ圏ハイイールド債とスプレッドの推移
(日次、期間:2014年6月16日~2015年6月15日)

図表2:ユーロ圏投資適格社債とスプレッドの推移
(日次、期間:2014年6月16日~2015年6月15日)

 

※ユーロ圏ハイイールド債: BofA (バンク・オブ・アメリカ)メリルリンチユーロ圏ハイイールド社債指数、投資適格社債市場: BofA (バンク・オブ・アメリカ)メリルリンチユーロ圏投資適格社債指数、※スプレッド:アセット・スワップ・スプレッド
出所:ブルームバーグ、BofAのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

格付け別ユーロ圏社債市場動向投資適格社債とハイイールド債

国債ボラティリティ、ギリシャ懸念は市場全体だけでなく、格付け別の市場動向にも影響を及ぼしました。

投資適格社債において、格付けの違いがこの半年ほどの間、パフォーマンスの違いを生み出した様子を振り返ります(図表3参照)。投資適格社債では、BBBがA及びAAを上回っています。主な背景は1月から3月にかけてECBによるQEへの期待から利回り追求の動きが活発となり、スプレッドの絶対値の高さから選好されたBBBのスプレッドが縮小し、BBBのパフォーマンスが他を上回りました。

ただし、3月末から5月末にかけての下落局面(利回りは上昇)で3つの格付けグループ(BBB、A、AA)のパフォーマンスに大きな違いは見られません。ギリシャ債務問題などリスクが高まりBBBなどAに比べ格付けの低い債券のスプレッドが拡大した一方、BBBのデュレーションはA、AAに比べ短く、利回り上昇局面でパフォーマンスが相対的に高かったことで相殺された格好です。

ハイイールド債ではBが3つの格付けグループ(BB、B、CCC)の中で終始高いパフォーマンスを維持しました(図表4参照)。CCCは年前半軟調に推移したものの、後半は3つのグループの中で最も高いパフォーマンスでした。

ECBによるQEへの期待はハイイールド債市場においてもスプレッドの縮小となりました。2014年後半に一部B銘柄の信用リスクの高まりを受けBのスプレッドが拡大しましたが、2015年年初には懸念が後退したため、他の格付けに比べスプレッドが縮小、Bは好調なパフォーマンスとなりました。次に2月になると、中国の利下げ、ギリシャ懸念の後退などを受けリスクオンの環境となったため、B、CCCのパフォーマンスがBBを上回る結果となりました。

4月後半から5月後半、QEによる国債の買われすぎに見直しが入り、国債利回りが上昇した局面では格付けの低いCCCのパフォーマンスが他の格付けに比べ好調に推移しました。CCCのような低格付けの債券は利回りの変化に対する感応度が、BBなどに比べ一般に低いことがパフォーマンスの違いを生み出した一つの要因と思われます(図表4参照(1))。

ただし、6月になりギリシャ債務返済問題の懸念により信用リスクが高まると、格付けの低い債券のスプレッドほど拡大する傾向が見られ、CCCのパフォーマンスが悪化しました(図表4参照(2)) 。

最後に発行市場の話題を加えると、2015年前半はリバース・ヤンキー債の発行が増加しました。ドル高トレンドと欧州国債利回りの低下といった環境下、低いスプレッドでの発行が期待できる米国ネームが年初の市場の予想以上に起債したことが、欧州の高格付け債の上値を抑える一つの要因となった可能性もあります。

図表3:ユーロ圏投資適格社債格付け別パフォーマンス
(日次、期間:2014年12月31日~2015年6月15日)

 

図表4:ユーロ圏ハイイールド債格付け別パフォーマンス
(日次、期間:2014年12月31日~2015年6月15日)

 

※ユーロ圏投資適格社債格付け: BofA (バンク・オブ・アメリカ)メリルリンチユーロ圏投資適格社債指数の格付け別(BBB、A、AA)指数ユーロ圏ハイイールド債格付け: BofA (バンク・オブ・アメリカ)メリルリンチユーロ圏投資適格社債指数の格付け別(BB、B、CCC)指数
出所:ブルームバーグ、BofAのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

欧州社債市場今後のポイント

ECBのQEと、ギリシャ問題などがユーロ圏社債市場の変動性を高める要因となったと見られますが、ドイツ国債利回りは落ち着きを取り戻した可能性があります。ギリシャ問題はたとえ2次支援で債権団と合意しても、ギリシャ債務全体の問題解決に至らず、将来的に再び懸念材料となる可能性はあります。

ただし、ユーロ圏の景気はユーロ安や原油安などを受け改善傾向を維持すると見ており、企業のファンダメンタルズも全般に健全であると見ています。したがって、スプレッドは投資適格社債、ハイイールド債共に比較的落ち着いた動きも想定されます。

しかしながら、市場環境を勘案すれば、自社株買戻しが目的と見られる資金調達(債券発行)など、株式フレンドリーな資本政策を採用する企業も想定されるため、銘柄選択が重要となる展開が想定されます。

※文中格付け記号は指数の格付け分類に従う。なお、CCCにはCC、Cを含む

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