欧州公益セクター | ピクテ投信投資顧問株式会社

欧州公益セクター 欧州/ユーロ圏

ポイント

欧州中央銀行(ECB)による社債購入や、原油価格の変動など欧州公益セクターを巡るトピックが増えている印象です。そこで当セクターの動向を中長期的に見る上でのポイントを再確認します。

欧州公益セクター:欧州社債市場に占める公益セクターの割合は米国より大きい

欧州公益セクターの特色や動向を振り返りながら、基本的なポイントを再確認します。その上で、今後の欧州社債投資で公益セクターを見るうえで重要と思われるテーマをご紹介します。

まず、欧州公益セクターの市場規模、セクターの構成割合などをバンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチ社債インデックスを社債市場全体の代替とし、社債市場の構成とテーマである公益セクターの構成割合を確認をします(図表1参照)。

公益セクターに注目すると、欧州の公益セクターの割合は欧州社債市場全体に対し12%程度です。一方米国の公益セクターは7%程度です。ただし、公益セクターに「近い」エネルギーセクターを合計すると、欧州、米国共に2割弱の割合となります。欧州の公益セクターではフランス電力やイタリア電力公社など国を代表する規模の大きい公益企業が資本市場を活用していることが背景と見られます。一方で、米国エネルギーセクターにはBPやスタトイルなど巨大な石油会社が指数に含まれていることが背景と見られます。

欧州公益セクター:米国の公益セクターとの比較

欧州と米国の社債全体と各公益セクターの市場特性を図表2にまとめています。欧米で市場規模の違いはありますが、国際的に巨大な規模の市場となっています。

格付け構成比を見ると、欧州公益ではBBB格が約6割とな っています。2010年以降、ドイツやイタリアの主な公益会社の格付けがA格からBBB格へと引き下げられたことなどが相対的にBBB格の構成比が高い理由と見られます。

なお、ムーディーズ・インベスターズ・サービスは石油価格の下落や電力価格動向を踏まえ2016年2月に欧州公益セクター30社(グループ)の格付けレビューを発表しました。その結果、19社を据え置き、10社にネガティブウォッチ(格下げ方向で検討)を付与、1社を格下げとしました。しかしながらネガティブウォッチとなった会社は大半が5月頃に据え置きが表明されています。

欧州公益セクター:欧州投資適格社債市場に占める割合(シェア)の推移

公益セクターはシェアが安定的というイメージがあります。しかし、市場全体に占める公益セクターのシェアを振り返ると、2008年後半のように変動が見られた局面もあります。 2008年以前、公益セクターは安定していましたが、欧州投資適格社債市場の他のセクターが増加したため、シェアは低下しました。しかし、2008年後半から2010年後半にかけ欧州公益セクターのシェアは上昇しました(図表3参照)。理由は主に3点です。

1点目は、金融危機後欧州の銀行が貸し出しに消極的だったことから社債調達を拡大したためです。

2点目は金利が低下、調達コストが下がったことです。

3点目は、送電網の整備や再生エネルギーへの転換に向け資金調達意欲が高まったためです。

エネルギー政策の変更などで公益セクターのシェアが変動する局面がある点に注意が必要です。

欧州公益セクター:エネルギー政策に右往左往

欧州公益セクターの過去1年のパフォーマンスをBofAメリルリンチ公益社債インデックスで見るとローカル通貨建てで約2.2%と市場全体を0.1%程度上回っています。設備投資額が多いことから、低金利は一般的に公益セクターに有利であったと思われます。

しかし、欧州の公益セクターは欧州のエネルギー政策が企業の業績に影響を与えたと見られます。欧州連合(EU)のエネルギー政策をホームページで見るとEUはエネルギ ー政策で2020年までに (1)温室効果ガス排出量を 1990年比20%削減、(2)再生可能エネルギーの最終エネルギー消費に占める割合を20%へ拡大する目標を掲げています。 2030年まででは (1)が1990年比40%削減、(2)は 27%以上と目標が引き上げられています。

しかし、欧州各国の発電電力の状況は国により異なる(図表4参照)ため政策も異なります。例えば(太陽光や風力など)再生可能エネルギー(及び水力の合計)を見るとドイツは2割を越え、スペインは4割近くとなっていますが、フランスは約8割が原子力で、再生可能エネルギーの割合は小さくなっています。フランスには将来的に原子力発電施設の廃棄と再生可能エネルギー拡大が求められています。

一方、ドイツは石炭を産出するうえ、過去に石炭産業保護政策や補助金などで保護してきたこともあり、発電に占める石炭の割合が高くなっています。二酸化炭素削減の必要性から対応が求められています。

また、再生可能エネルギーによる発電を拡大するには送電施設(ネットワーク)の建設も必要です。例えば、ドイツで大規模な風力発電に適しているのは北部ですが、電力消費は南西部が多くなっています。風力発電を利用するには高圧送電網の整備が欠かせません。ただし莫大な送電網の建設コストや環境への配慮から、新たな送電網建設は困難を伴うことが予想されます。

エネルギー政策については、主に電力価格への影響(例えば、補助金の有無など)と送電量への影響(例えば送電網などへのインフラ投資負担)の分析が求められます。

欧州公益セクター:エネルギー政策が公益セクターに与える影響、ドイツ

ドイツの長期的なエネルギー政策の目標は再生エネルギー発電の割合を長期的に高め(2050年には8割超)、石炭など化石燃料の割合を抑えることとしています。原子力発電は脱原子力を方針とし2022年を目処に廃止する方向です。

再生エネルギーを普及させるため、太陽光など再生エネルギーで作られた電気は(発電コストを吸収するため)固定価格制度を導入しました。導入による再生エネルギー市場拡大に伴う量産効果でコスト低下というプラス面が見られました。一方で、電気料金が欧州でも最も高い国の一つとなったこと、そもそも電力自由化を歪めるとの懸念から、見直しを求める声が起きるなど、対応に混乱も見られます。

ドイツの公益会社の対応を振り返ります。

E.ON(エーオン)は会社を2分割
ドイツの大手公益会社E.ONは2014年に会社を2分割すると公表、2016年1月にスピンオフしました。原子力や石炭、ガスなど伝統的な発電事業、エネルギー取引、エネルギー資源の採掘などの事業を新設の別会社(Uniper)に移管しました。一方、E.ONは、風力・太陽光発電など再生エネルギーと、分散型発電の時代に適応するためのスマート・グリッド(「賢い送電網」)、そして顧客のニーズに対応するカスタマーソリューションの主に3つに特化しています(図表5参照)。

RWEは子会社方式
ドイツの公益会社RWEは2015年12月、再生エネルギー、配電、小売の3事業を統合する子会社を新設し、親会社は従来型伝統的な発電およびエネルギー取引の2事業に集中する新たな事業再編計画を発表しました(図表6参照)。計画では新子会社は2016年末に上場される見込みで、RWEは新子会社の株式の過半数は長期にわたって保有する模様です。

ドイツ企業に見るエネルギー政策への対応
ドイツは例えば原子力政策をとってもエネルギー政策の変更が比較的多く、また再生エネルギーの発電割合など目標は野心的です。これに対し独公益企業は対応に追われていますが、市場の評価は定まっていないと見られます。

例えば、E.ONが会社分割を公表した2014年11月末から足元まで、E.ONの株価は4割程度下落しています。主な理由は原油価格の下落や原子炉の廃炉コストなどです。RWEの株価も軟調で、ドイツ株式市場(DAX指数)に比べアンダーパフォームとなっています。ただし、通常株価と社債スプレッドの相関は高いものの、ECBの社債購入期待もあり縮小が見られます。したがって戦術的な保有はともかく、戦略的な保有には注意も必要です。理由は新会社のコアとなる再生エネルギーは従来のようなドイツ政府からの支援は期待しにくいこと、スマートグリッドなど新たな配電設備への投資負担が重荷になると見込まれるためです。さらに、ドイツ政府のエネルギー政策も、例えば原子力の廃止のように、方針変更が多い傾向があることも投資判断を難しくする可能性があります。

欧州のエネルギー政策は慎重に判断し、注意深く投資する必要があると見ています。

欧州公益セクター:エネルギー政策が公益セクターに与える影響、フランス

フランスのエネルギー政策の特色は1970年代以降原子力開発に注力した点です。フランスの発電における原子力の割合は極めて高くなっています。フランスでは、電力事業ではフランス電力公社(Electricite de France SA、EDF)、ガス事業では(旧)GDFスエズ、石油・ガス事業ではトタル(To tal SA)など、各事業を1社に集中させることで世界レベルのエネルギー企業を形成、EDFやGDFスエズは、民営化後も依然として政府を最大の株主とし、引き続きフランスのエネルギー政策をリードしています。

フランスの主なエネルギー政策を見ると、2012年の選挙で就任した社会党のオランド大統領のもと、原子力比率の低減(2025年までに原子力依存度を現状の75%から50%に低減するグリーン化促進のためのエネルギー移行に関する法律、2015年8月成立)、最も古いフェッセンハイム原子力発電所の閉鎖を掲げています。それでもフランスのエネルギー政策は変更が少ないことが特色と言えます。

フランス電力公社(EDF)
2005年まで国有企業であったフランス電力公社(EDF)は現在でも株式の約85%がフランス政府に保有されています。フランスの商業用原子炉58基はEDFが所有しています。 そのためEDFは規模の優位があることや、万一の場合フランス政府からの援助が見込めることなどから3格付け会社から(S&P:スタンダード&プアーズ、ムーディーズ:ムーデ ィーズ・インベスターズ・サービス、フィッチ:フィッチ・レーティングス)A格を取得しています。

しかし、最近信用力が悪化しており、株価も下落傾向です( 図表7参照)。例えば、S&PはEDFを5月に格下げしましたが、主な理由は原油価格などの下落に伴い、欧州全般に電力料金が低下、その結果により収益の低下が懸念されることです。EDFの収益構造と電力価格との連動が強いためビジネスリスクが高いと判断されています。EDF以外にも同じ理由で数社格付けのレビューが行われています。ただし、中にはこのような環境下スペインのイベルドローラのように債務縮小や長期契約をベースとしたビジネスモデルが評価され4月に格上げされた会社もあります。

なお、EDFにはエネルギー政策に関連した懸念も見られます。例えば、フランスも今後原子炉を廃止する計画で、その費用は基金に積み立てられていますがフランス(EDF)の額は原子炉数が少ないドイツなどに比べても低くなっており、今後の対応に懸念が残ります。

また、EDFの新規原子力発電所建設で、例えば英国のヒンクリーポイントでプロジェクトを進めていますが、電力料金上昇の期待が低い中、建設コストが高く採算割れが懸念されていることも信用力にマイナスと見られます。

欧州公益セクター:今後のポイント

原油などエネルギー価格が下落、その後反転するという市場環境のもと、またエネルギー政策が大胆に変化するなか、欧州の公益セクターの対応をとりあげました。

例えばドイツでは再生エネルギーの比重を高めるという方針に対し、会社を再生エネルギー分野と伝統的な分野に分けるという対応が見られました。ただし、再生エネルギーに対し、以前のような政府からの保護が期待薄となっていること、一方伝統的なエネルギーは将来的には縮小する運命にあるという中で、どのようにビジネスモデルを作っていくのか。市場は期待と懸念の中評価は分かれる面も見られますが、ドイツのエネルギー政策は野心的であり、公益企業には今後も変化への対応が求められると思われます。

一方、フランスのEDFはエネルギー政策への対応を進めていますが、発電構成の違いや国の関与の違いなどユニークな面もあり、別の視点での分析が必要と見ています。 ECBは6月8日より社債購入プログラム(CSPP)による社債購入を開始します。投資適格となっている社債の取引が活発化、スプレッドの縮小も見込まれます。

しかしながら、仮に格下げで投資適格から外れた場合のスプレッドは急拡大することも想定されます。

欧州公益社債セクターにおいては、足元原油価格に落ち着きが戻ったものの先行きを予想することは困難であるため、エネルギー価格との連動が高い銘柄はエネルギー価格市場と共に注視が必要です。また、エネルギー政策への対応がどの程度負担になっているかにも注意が必要で、投資には慎重な姿勢が求められると思われます。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

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