ECB社債購入プログラムの要点 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ECB社債購入プログラムの要点 欧州/ユーロ圏

ポイント

欧州中央銀行(ECB)の社債購入プログラム(CSPP)が2016年6月8日より開始されました。これまでのところ社債購入金額は市場の見込みを上回り、順調な滑り出しと見られます。CSPPプログラムの内容を振り返りながら、今後の展開について述べます。

社債購入プログラム:ECB、社債を購入開始、購入額は市場予想を上回る

欧州中央銀行(ECB)の社債購入プログラム(CSPP)(図表1参照)について、最初のデータが公表されました。201 6年6月13日の発表によると、ECBは6月10日時点で、3億4,800万ユーロ(約420億円)相当の社債を保有しており、市場予想(2億~2億5,000万ユーロ)を上回りました。報道によるとECBは不祥事の影響に苦しむ自動車メーカーの独フォルクスワーゲンや、主要格付け会社3社のうち2社からジャンク級の格付けを付与されているテレコム・イタリアの社債も購入した模様です。ECBは社債購入額について毎週月曜日に公表するとしていますが、決済の関係で今回の発表は8日に流通市場で購入したもののみが対象と説明しています。ECBの代理で購入する各国の中銀は7月18日から保有額などの公表を開始する予定です。

社債購入プログラム:追加金融緩和を旗印に導入

社債購入プログラムは資産担保証券プログラム(ABSPP)などと並んで資産購入プログラム(APP)を構成しています(図表2参照)。APPはECBが2015年1月に導入を公表、当時はABSPP、カバードボンドを購入するCBPP3、国債などを購入するPSPPの3プログラムで構成されていました。導入の背景は当時の預金ファシリティ(マイナス0.2%)は下限と見られていたため、政策金利でなく量(債券購入)による追加金融緩和を目指しています。この点、同じ債券購入でありながら欧州債務危機時に導入(ギリシャ国債の償還が懸念された2010年5月)された証券市場プログラム(SMP、その後OMTへ)が金融危機にかかる流動性対応であったのとは趣旨が異なります。

社債購入プログラム:CSPPの主な内容の注意点

(1)購入対象について
購入対象社債の部門で銀行は対象外ですが、欧州連合(EU)規則などに照らして何が銀行に該当するかを調べると相当複雑です。実務的には簡便に単一監督メカニズム( SSM)により監督される企業(銀行)またはその子会社がCSPPの対象外とみなすのも一案です。

反対に、何故銀行がCSPPの対象から外れているのか。考えられる理由としては2つで、まず銀行はECBの監督下にあるため購入には利益相反が懸念されることです。2つ目は銀行はTLTROⅡ(的を絞った長期性資金供給オペ)により、必要な資金が受けられるという理由が考えられます。

(2)格付の制約は比較的緩やか
格付けは適格格付け会社最低1社から投資適格(BBB-以上)が付与されていることが求められています。また、 CSPPで取得後に格下げとなった場合、機械的な売却の必要は無いと理解されています。 格付けは最低1社から投資適格が付与されていればよいため、例えばスタンダード&プアーズなどがBB+とする一方、フィッチ・レーティングスがBBB-としているテレコム・イタリアはこのままの格付けならばCSPPで購入可能に分類されると見られます。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

(3)購入対象年限は6ヵ月も含む
社債を購入対象とするCSPPでは購入対象年限が概ね6ヵ月から31年(30年と364日)となっています。一方、国債など公的債券を対象とするPSPPでは2年から31年までとなっています。CSPPで6ヵ月からとしたのは中小企業などへの配慮と考えられます。

(4)購入市場について
社債購入はセカンダリーマーケットと発行市場であるプライマリーマーケットで可能としています。ただし、Public Undertaking(以後、公共企業)についてはセカンダリーのみでプライマリー市場での購入は不可となっています。そもそも公共企業とは国などが直接または間接的に独占的な所有権により支配している企業で公共性が高いことから発行市場での購入(引き受け)は不可となっています。 CSPPが開始される前、公共企業はPSPPのもとで購入対象となっていましたが、CSPP開始に当たり、当局は公共企業のリストを見直し、イタリア電力公社(ENEL)など5社をPSPPの購入対象からCSPPへと移しています。なお、公共企業は購入対象としてPSPPまたはCSPPのどちらか一方にのみ含まれることとなります。

(5)購入機関と規模
CSPPによる社債購入はユーロ圏の6つの中央銀行が担当しますが、保有状況は週次と、2016年7月からは月次で公表予定です。月次データには、プライマリーとセカンダリー市場の区分が示される模様です。また、7月18日より開始予定の証券貸出(セキュリティレンディング)にあわせ、週次で中銀がCSPPで保有する社債のISINコードも公表予定です。 CSPPによる保有額は週次での公表が開始されています。6月10日時点の社債保有額は約3.5億ユーロで、17日時点の保有額は約22.5億ユーロ(共に決済ベース、10日の額は8日取引の流通市場の決済分)であり、この間約19億ユーロ購入されており、市場予想を上回る購入ペースと見られます。なお、CSPPにより購入可能な社債全体(投資適格リスト)は2種類のフィルター(要件)をパスする必要があると考えています(図表3参照)。第1のフィルターは定量的で、図表1に記した格付けや、預金ファシリティを上回る利回りなどが要件となります。第2のフィルターではECBがオペレーションで適格となる条件を満たす必要があると考えられます。例えば、元本は変動しない債券が原則です。ただし条件は多岐にわたり内容も複雑です。ECBは適格債券のリストを定期的に公表しており、適格かどうかの判断はリストを参照するのも一案です。

社債購入プログラム:今後のポイント

CSPPの購入額は開始当初は市場予想を上回るなど順調なスタートと見ています。また、ユーロ圏社債市場の変動をある程度抑制する効果も当面は期待されます。

ただし、社債購入の場合国債に比べオペレーション対象となるためのハードルが高く、CSPPの規模をどこまで拡大できるか注意は必要です。また、同質の債券が多く存在する国債と違い、社債の場合、再投資への懸念も残るなど出口戦略の方針も確認する必要があると見られます。したがってCSPPに伴いユーロ圏の社債発行市場が拡大するかを判断するには当面、慎重に見守る姿勢が必要と見ています。

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