ロシア出張報告:ウクライナ情勢のロシア市場への影響 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ロシア出張報告:ウクライナ情勢のロシア市場への影響 欧州/ユーロ圏 ロシア 新興国

2014/03/25新興国

ポイント

ロシアのクリミア併合を受け、ロシア経済ひいては金融市場への影響が懸念されます。ピクテ・アセット・マネジメント(ロンドン)でロシア株式の運用を担当するヒューゴ・ベイン(シニア・インベストメント・マネジャー)は、クリミア併合直前にロシアを訪れ、企業幹部、政治家、政治アナリスト等との面談を行いました。以下は、出張報告の要旨です。

西側の制裁の脅威に対するロシアの反応

西側諸国による制裁の脅威に対するロシアの態度を分析する際には、ロシアを支配するエリート層の中に複数の対立する派閥があることを認識することが重要です。ロシアと西側諸国との関係に極めて懐疑的な態度を取ってきたプーチン政権内の強硬派は、常により閉鎖的な経済の構築を望んできたという経緯があり、したがって、制裁(ロシア経済に大きな影響を及ぼし得る厳しい制裁を含む)が厄介な問題になるとは考えていないようです。実際のところ、出張中にミーティングをもった政治アナリストは、強硬派は制裁を歓迎するだろう、なぜなら、ロシア経済の低迷を西側の制裁のせいにすることが可能となるからだと述べていました。

一方、強硬派とは対照的に、ロシア経済の将来はグローバル経済への統合の深化によってのみ確保されるとする有力派閥も存在し、このような見方をとる政治家とのミーティングでは、(西側の)制裁はロシア経済に甚大な影響を及ぼし得る脅威であり、いかなる犠牲を払っても回避しなければならないとの発言がありました。個人に対する制裁は対処可能だとしても、国内金融機関に対する追加制裁は遥かに解決の難しい問題となるであろうことは想像に難くありません。ロシア当局は、制裁に対して最も脆弱な企業のリストを作成し、最悪シナリオへの対応策を準備中との話もありました。当リストは、2008年の金融危機時にロシア政府が作成した戦略リストに似たようなものではないかと考えられます。

また、今回の調査中、話を聞く機会があった人の中で、ロシアのクリミア併合そのものが厳しい制裁発動の引き金となったと考える人が皆無だったことが注目されます。米国は経済制裁を強く主張しており、米国機関(企業)のロシアへの進出の度合いを測るため、制裁の影響を測るストレステスト(精査)の実施等を検討しているようですが、一方、ロシアからのエネルギー供給への依存度が高い欧州各国は、強い行動を取ることに対して消極的な態度を変えていないのではとの印象を受けました(確かに、これまでの欧米の対応がプーチン大統領を困難な状況に陥れたとは思われません)。ロシアがウクライナへの態度を一段と強化させることとなれば状況は変わるでしょうが、現時点では、その可能性は低いと考えます。

ロシアと東方諸国との関係強化

どのような事態が展開されるとしても、ロシアが西側諸国との貿易関係の悪化に備えていることは明らかです。欧州が、原油ならびにガス供給をロシアに依存する状況からの脱却に向けて殆ど対策を講じていないのに対し、ロシアは西側諸国からのエネルギー関連売上と投資への依存度を下げるべく、準備を進めています。ロシア企業が東方諸国を意識していることは明らかです。今回の出張でミーティングを持った企業の多くが欧州ではなくアジアからの資金調達を検討している模様です。複数のエネルギー大手が、大規模なエネルギー供給(輸送)プロジェクトについて、中国との契約締結を検討しているとの情報を入手したのですが、情報筋によれば、石油大手のロスネフチは、昨年、新規の原油供給契約を締結し、総計700億ドル相当の前受金を受け取ったとのことです。また、ガスプロムも中国に対する大規模なガス供給契約を締結するものとみられ、これが実現すれば、年間最大700億立方メートルのガスを供給することとなるようです。欧州連合(EU)ならびにトルコ向けの昨年のガス輸出実績が1,620億立方メートルだったことを考えると、ロシアのクリミア併合非難を中国が断固拒否したのも当然です。

投資資金を標的とした資本規制の可能性とロシア当局の株価支援策

政府当局者は、ロシア経済ひいては金融市場への影響を軽減する手段としての資本規制は、現時点では、考えていない旨、明言しています。万が一、そのような規制が行われたとしても、規制の範囲は限定的なものに留まり、投資資金の流れに影響を及ぼすことはないだろうとのことです。

ロシアの資本勘定は、恐らく、新興国の中で最も開かれたものなのですが、これまで行ってきた改革の結果を現時点で逆行させることはないとの明言もありました。過去の例は、ロシアが挑戦的な資本規制を行う価値は殆どないことを示唆しています。1998年の経済危機に続く数年間を通じてロシアが導入した資本規制は、ロシア国民ならびにロシア企業のみを対象としたものであり、債券、株式ならびにローン証券の投資家が資本規制の標的となったことは一度もありません。また、現時点でロシア政府がかかる方針を変更する理由も見当たりません。ロシアは世界の投資家の信頼を損なったかもしれませんが、世界の金融システムにおける立ち位置が長期的に見て著しい影響を受けたとは思われません。例えば、ロシア株式の売買は、今年2014年7月からユーロクリアでの決済が始まることとなっていますが、計画の頓挫を示唆する兆しは認められません。更に、株価指数のプロバイダーが、主要指数の構成銘柄により広範なロシア銘柄を組み入れて欲しいとの世界の投資家の要求に応えるべく検討を続けていることも注目されます。

ロシア政府による国内株式買入の公算も高いとみています。2008年のリーマン危機後、政府が60億ドル相当のロシア株式を買い入れたという前例があるからです。かかる買入は大型株を中心としたものとなるだろうとみています。

ロシア企業は、銀行を除き、概ね楽観的

今回の出張中にミーティングを持った多数の企業が事業環境に楽観的でした。通貨ルーブル安は、輸出増をもたらすとして、特に効果が大きいとみているようです。このためルーブル安の恩恵を受ける競争力の高まったエネルギー銘柄をはじめとした輸出関連銘柄には注目です。一方、ロシアの銀行は厳しい状況に直面しています。引き続き西側諸国の経済制裁の対象に留まっていること、欧州各国の銀行がロシアでの事業を縮小した場合には、海外市場での融資を国内市場での融資で補わなければならないという状況に陥るからです。このため、ロシアの銀行セクターは追加制裁が発動されれば、影響が一段と膨らみかねないため注意が必要とみています。

新興国ソブリン債券

ロシア債券ならびに通貨ルーブルは、ロシアの格付けと経済に見合わない水準で推移しています。例えば米、ドル建てロシア国債は、米ドル国債に対するスプレッドが、投資適格の新興国ソブリン債券の平均スプレッドを130ベーシス(1.3%)程度上回っています。通常の市場環境では投資妙味の高い水準ですが、現状は通常とは程遠い環境です。ロシアのクリミア併合を受け、債券投資家の資金の多くがロシア国外に流出しており、プーチン政権に対する追加制裁の可能性が懸念される状況に変わりはありません。各種リスクに留意しつつも、地政学的緊張が緩んだ場合には大幅反発の可能性もあるものとみています。

ロシア危機を受け、新興国債券については注意が必要とみています。

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