アルゼンチン:債務不履行の概要 | ピクテ投信投資顧問株式会社

アルゼンチン:債務不履行の概要 中南米 新興国

2014/08/18新興国

ポイント

アルゼンチンのデフォルトの余波が取りざたされています。今回のデフォルトが、2001年のデフォルトと異なるのは、アルゼンチンに債務履行能力があることです。また、世界貿易や金融市場に対する同国の貢献度は極めて限定的です。とはいえ、アルゼンチン政府と「ホールドアウト」債権者の交渉が長引く可能性も否めず、行方が注視されます。

アルゼンチンの債務不履行の影響

アルゼンチンが、同国史上8度目のデフォルト(債務不履行)への対応に苦慮する一方で、投資家は、他の新興国市場にデフォルトの影響が及ぶかどうかを考えあぐねているようです。影響はあるとも言えるし、無いとも言えます。

影響が無いと答える根拠は、今回のデフォルトがアルゼンチンの債務履行能力とは全く関係のないことだからです。(2001年のデフォルト時に債務再編に応じた投資家に対する)支払いを禁じる米裁判所の判決には賛否両論が報じられていますが、このことがアルゼンチンの財政上の立ち位置を即刻変えるわけではありません。債務の履行を担保する同国の外貨準備は、300億ドルを上回っています。また、(債券発行体に債務返済能力があるにもかかわらず、債務返済を行わない)テクニカル・デフォルトが、既に脆弱なアルゼンチン経済の今後に影響を及ぼすとしても、国外に影響を及ぼす際の2つの経路とされる貿易と金融の連鎖が、今回のデフォルトの感染経路になることはなさそうです。

アルゼンチン経済

経済活動に関しては、アルゼンチンは国際舞台において重要な役割を果たしているわけでもなく、また、新興国の経済成長に目立った貢献をしているわけでもなく、新興国の中でも最も閉鎖された国の1つです。ピクテでは、国の開放性を、GDP(国内総生産)比の輸出入の量(%)で測っていますが、アルゼンチンは、大方の先進国ならびに新興国と比べて、極めて閉鎖的です。また、世界の景気循環の変動に対する経済の感応度が最も低い国の一つです。過去20年でみると、エジプトやギリシャと同様、経済成長の80%以上が国内で創出されています。

ですから、アルゼンチンが今年中に深刻なリセッションに陥ることとなったとしても(同国経済は既に年率3%を超えて縮小しているのですが )、それが他の新興国ならびに先進国に大きな影響を及ぼすことはないのではと考えます。

金融市場におけるアルゼンチンの立ち位置

世界の金融市場に対するアルゼンチンの貢献度も、世界貿易への貢献度と同様、限定的です。2001年のデフォルトは今回のデフォルトより、遥かに深刻であり、リセッション下のアルゼンチンは、当時の新興国市場で最も活発に取引されていたドル建て債券(約1,000億ドル相当)の債務不履行を宣言したことにより、世界の資本市場から実質的に締め出されることとなりました。アルゼンチンで事業展開する外銀は、同国における融資活動を縮小しました。一方、格付け機関フィッチ・レーティングスによれば、今回のデフォルトが外銀のアルゼンチン子会社に及ぼす影響は、2001年当時と比べると遥かに小さいとのことです。例えば、スペインのビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行とサンタンデール銀行は、アルゼンチン経済へのエクスポージャーが最も大きい外銀ですが、両行の預金は、アルゼンチンの銀行預金総額の5%ずつを占めるに過ぎません。また、両行が保有するアルゼンチン資産は、両行の総資産の1%を下回っています。

アルゼンチンの債券市場

世界の投資家が保有する債券も、アルゼンチンの金融市場における立ち位置を示しています。

米ドル建て新興国債券の主要指標であるJPモルガンEMBIグローバル指数に占めるアルゼンチンの比率は、1.5%を下回ります。これに対し、メキシコ、ベネズエラ、ブラジルの構成比率は、それぞれ、12%、8%、7%程度となっています(図表1参照) 。また、新興国債券市場の中で最も伸びの大きい現地通貨建て新興国債券市場に、アルゼンチンは含まれていません。


図表1:新興国債券指数の国別構成比
(2014年7月31日時点、構成比上位25ヵ国)

※新興国債券指数:JPモルガンEMBIグローバル指数
出所:JPモルガンのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

このような観点からすると、アルゼンチンの抱える問題は、ほぼアルゼンチン内に留まると考えられます。金融市場もこのような見方を取ったことから、デフォルトへの反応は軽微に留まりました。米ドル建て新興国債券(注1)の過去3ヵ月の騰落率は+4%程度、一方、現地通貨建て新興国債券(注2)の騰落率は+2%程度(米ドル・ベース)となっています。

(注1) 米ドル建て新興国債券:JPモルガンEMBIグローバル指数
(注2) 現地通貨建て新興国債券:JPモルガンGBI-EMグローバル指数

新興国のマクロ環境

新興国市場が比較的落ち着いているのは、新興国の大半がアルゼンチンに先駆けてマクロ環境の改善に努めてきたからです。新興国の多くが独立した中央銀行を持ち、外貨準備を積み上げ、経常黒字を維持し、変動為替相場制を取り入れています。

また、GDP比の債務総額(政府ならびに民間借入の総額)は120%程度と、先進国の半分以下の水準に留まっています。

アルゼンチンのデフォルトの余波

アルゼンチンが金融市場で相対的に孤立しているとはいえ、同国のデフォルトの新興国債券市場への影響が続く可能性は否めません。アルゼンチン政府と、2001年の債務再編を拒否したホールドアウト債権者との論争が、国債市場における発行体と投資家の関係を変える結果となる可能性もあるからです。新しい関係は、投資家にとってプラスにもマイナスにもなり得ます。

ホールドアウト債権者の勝利は、理屈の上では、これまで政府の債務再編策を受け入れざるを得なかった債券投資家の権利が改善されたことを意味します。また、裁判所の判決は、放漫財政に対する抑止力となります。発行体は、債務が長期的に持続できないこととならないかどうかについて、これまで以上に時間をかけ、真剣に検討せざるを得ないでしょう。政府(発行体)の債務再編策が慎重となることで、財政規律の改善が予想されるならば、その他の条件が変わらない限り、新興国ソブリン債券の魅力が増し、公共財政の健全な国の国債を中心に、利回りが低下することとなるでしょう。

とはいえ、政府が積極的に債務再編策を譲歩するかどうかは定かではありません。財政難の環境下で債務を再編し、対処可能な水準に債務を削減することが、極めて困難となるからです。

反対に、政府が向かう方向として、債券契約における、法的リスクに対応する新しい条項を加える可能性もあります。例えば、条項には、最近ギリシャが行使したことで知られる、(債務再編に応じない)投資家に債務再編を課す集団訴訟等の規定の強化が含まれるかもしれません(足元発行されたパラグアイ国債、コロンビア国債、メキシコ国債の目論見書には、見込み投資家のリスク要因として、アルゼンチン国債を巡る裁判所の判例が引用されています)。当然のことながら、投資家は、利回り向上の形での対価を要求することでしょう。

10年以上にわたり、金融市場から締め出されていたアルゼンチンが、金融市場に復帰する能力を維持していると見ています。

(ご参考)
アルゼンチンのデフォルトの経緯

アルゼンチンは 2001年、約1,000億ドルの対外債務の支払いを停止しました。同国は、債務の再編を行い、債券保有者に対し、元本の7割を減額する借換債との交換を提案しました。大半の投資家が債務再編に応じた一方で、少数の投資家はこれを拒否し、全額の返還を求めて、アルゼンチンを提訴しました。

米国のヘッジファンド、エリオット・マネジメント等、債務再編に応じなかった債権者(ホールドアウト債権者)は、債権の回収を求め、世界各地の裁判所に提訴しました。行き詰まった交渉の最も重要な突破口となったのは、2014年6月、米連邦最高裁判所が、アルゼンチンが、ホールドアウト債権者に、全額(10億ドルの元本と利子)を返還するまでは、債務再編に応じた債権者に対する利払い(5億3,900万ドル相当)を禁ずるとのニューヨーク地方裁判所の判決を支持したことです。

ホールドアウト債権者との交渉が決裂した結果、アルゼンチンは、2014年7月30日の利払いを履行できず、米格付け大手のスタンダード&プアーズ(S&P)は、同国を債務不履行の一種である「選択的デフォルト」に格下げしました。

アルゼンチン政府は、RUFO条項(過去の債務再編時よりも良い条件をホールドアウト債権者に提示する事を禁じる条項)を債務契約に盛り込んでおり、年末前にホールドアウト債権者へ支払いを申し出る場合、過去の再編計画を受け入れた債権者にも返済することを義務づけています。アルゼンチンとホールドアウト債権者との交渉は継続中です。

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