ロシア取材報告第2弾 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ロシア取材報告第2弾 欧州/ユーロ圏 ロシア 新興国

2014/09/19新興国

ポイント

ピクテ・アセット・マネジメント(ロンドン)でロシア株式の運用を担当するヒューゴ・ベイン(シニア・インベストメント・マネジャー)はロシアを訪れ、要人との面談等を通じて、一般の報道では伝えられていないロシアの現状を取材してきました。以下は、ロシアでの取材報告の抜粋です。

ウクライナの現状

2014年9月5日、ウクライナと親ロシア武装勢力は5ヵ月に及ぶウクライナ東部での戦闘終結に向けて一歩を踏み出しました。一方、米国と欧州は、プーチン大統領に一段の圧力をかけることを目的に追加の制裁を発動しています。ロシアは欧州の制裁にどう対応するのでしょうか、また、ロシアの一般市民はプーチン大統領の対応をどう見ているのでしょうか。今回の取材を通して、ロシアの状況は西側諸国で報道されている程悪くはないとの印象を受けました。

ロシア株式を担当し始めた15年前から現在に至るまで、これほど団結したロシアは見たことがありません。(ウクライナ紛争を巡る)西側の報道には暗い論調のものが多いのに対し、ロシアの一般市民はプーチン大統領を支持し、安全上の正当な権利であると考えていることに対して西側が威嚇行動に出ていることを心から懸念しているようです。プーチン大統領の支持率は84%と高水準を維持し、8月初旬につけた最高水準に迫っています(注1)。また、失業率は過去最低水準にあり、生活水準も改善されていることから、ロシア国民の足元の懸案事項は、経済問題よりも政治問題であるように思われます。

(注1):2014年8月28日付「モスクワ・タイムズ」掲載のレバダ・センター世論調査

プーチン大統領の戦略

ロシア政府の戦略に詳しい高官からは、ロシア(というより、プーチン大統領)は、ウクライナ紛争終結に向けた規定の目標は無い旨の話がありました。プーチン大統領は迅速かつ機を見る決定を行っており、例えば、クリミアの併合は僅か2~3日のうちに決定されたとのことです。

また、プーチン大統領が極く少数のアドバイザーから助言を得るだけで独自の決断を下していることも注目されます。このことは、長期予想を困難なものとします。もっとも、大統領は(親ロシアの)ウクライナ東部に自治権を与え、ひいてはウクライナ統合の実現を望んでいるように思われます。

政府高官との会合で確認したのは、プーチン大統領が専制的ともいえる姿勢を示しながらも支持率には敏感で、エリツィン元大統領の支持率が同氏の辞職に先立つ1997年から1998年にかけて、67%から2%に急落したことを心に留めているということです。足元の高支持率が意味しているのは、プーチン大統領が、現時点では政治的、戦略的目標を自由に追求できるとしても、現状が急変する可能性は否めないということです。

景気低迷下のインフレ上昇

ロシア経済が苦境にあることは明らかです。資金の急激な流出と投資の低迷を受け、6月ならびに7月のGDP(国内総生産)は年率換算ベースで縮小しています。景気後退(リセッション入り)を懸念する向きもありますが、ピクテでは2014年通年のGDP成長率は横ばいと見ています。

一方、インフレ率は上昇基調で、2014年通年のインフレ率は5%の目標を大きく上回りそうです。皮肉なことに、西側の制裁というよりはロシアの報復措置がロシア経済に最も大きな打撃を与える結果となっています。8月の食料禁輸を受け、地方では鶏肉の価格が20%上昇したとのことです。

食料禁輸は2014年のインフレ率を1.5%上昇させるものと予想されます。一方、西側の制裁がロシアの主力産業であるエネルギーの輸出を直接的な対象としていないことから、制裁の直接的な影響は限定的なものに留まると思われます。

もっとも、経済担当の官僚が綿密な緊急対応策を策定していないことは意外でした。話を聞くことが出来た官僚の多くが制裁の影響を軽視しており、制裁が金融市場の流動性を枯渇させ、体力の弱い銀行の倒産ひいてはシステミック・リスクにつながり得るリスクについてまったく考えていないとの印象を受けました。

資金の流出

通貨ルーブルが2014年年初来、下落基調が続いている背景には資金の流出がありますが、資金の流れはさほど悪いわけではなく、安定基調を取り戻しつつあるようです。 また、2014年上期のネットの資金流出総額740億ドルのうち、ロシア人によるルーブル売りドル買いの動きによる影響が120億ドル程度あるのではないかとピクテでは推定しています。ロシア人が買ったドルは国内の銀行口座にあり、リスク回避の動きが後退すれば、いつでもルーブルに戻すことが可能です。7-9月期については、民間のネットの資金流出額はゼロに近付くものとみています。

楽観論の根拠

ルーブル安の進行を背景に、意外な趨勢が形成されつつあります。リスク回避的なロシア人が現金で不動産を買っているため、国内不動産ならびに住宅価格が上昇しているのです。年初来で住宅価格(現地通貨ベース)はモスクワで3%、サンクトペテルブルグで6%上昇しています。また、新規の住宅ローン融資は年初来で約40%の増加となっています。

ルーブル安は、エネルギー、鉄鋼、鉱業セクターの比率が高いロシアの企業にも恩恵を与えています。輸出企業は、MSCIロシア株価指数構成銘柄のうち時価総額ベースで3/4以上を占めています(2014年8月末時点)。

公共投資も、来年には回復に転じることが予想されます。取材をした官僚によると、大型の公共投資により、大企業のうちの1社がGDPを0.5%押し上げる程巨額の資金を受けることとなる可能性を示唆していました。

また、穀物収穫の見通しが明るいことも好材料です。好天候を受け、ロシア農業省は、2014年の穀物収穫予想を昨年の7,000万~8,000万トンから1億トン強に上方修正しています。このことも経済に対する下押し圧力を和らげるものと考えます。

10月にはウクライナの総選挙が予定されていることもあり、目先数ヵ月は振れの大きい状況が予想されます。もっとも、停戦合意がウクライナ紛争終結に向けたプロセスの出発点となるかもしれません。もしも合意が維持されれば、ロシア経済に大きなプラスの影響を与えることが期待され、今後市場に織り込まれていくと考えられます。

ロシア株式のバリュエーション水準(ここでは12ヵ月先予想PER)をみると、先進国株式に対して約7割ほど割安な水準にあり、新興国株式平均に対しても約6割程度割安な水準にあるなど、世界の主要株式市場の中で最も割安です(注2)。地政学的緊張が僅かでも緩和されることとなれば、ロシア株式は大きく反発する可能性もあると考えます。

(注2):ロシア株式はMSCIロシア株価指数、先進国株式はMSCI世界株価指数、新興国株式平均はMSCI新興国株価指数。2014年8月末時点 出所:トムソン・ロイター・データストリーム


図1:ウクライナ危機の変遷とロシア株式
(2014年2月以降)

 

※ロシア株式:MSCIロシア10/40指数(米ドルベース)
出所:ピクテ・アセット・マネジメント・リミテッド、トムソン・ロイター・データストリーム

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。

当資料をご利用にあたっての注意事項等

●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。 ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

ページの先頭へ戻る