ギリシャ総選挙:急進左派連合を核とした連立政権誕生か | ピクテ投信投資顧問株式会社

ギリシャ総選挙:急進左派連合を核とした連立政権誕生か 新興国 欧州/ユーロ圏 ギリシャ

2015/01/22新興国

ポイント

ギリシャ総選挙を間近に控えた世論調査では、急進左派連合(SYRIZA)が優勢の模様です。もっとも、SYRIZAが単独で絶対多数を獲得する公算は低く、連立政権の誕生が見込まれます。また、新政権発足後のトロイカとの交渉は長期化が予想されます。ギリシャのユーロ圏離脱(グレジット)の可能性は低いと見ています。

反緊縮派政権誕生か?

2014年12月16日発行のピクテ・グローバル・マーケット・ウォッチ「ギリシャ:後戻りできない、サマラス首相の決断」では、同首相が大統領選の前倒しを決めたことが総選挙の時期を早めることとなり、選挙戦では、ユーロ圏通貨同盟の今後を巡る争点に答えが見いだせず、禍根を残す結果になるだろうとのピクテの見解を示しました。サマラス政権が擁立した候補者が大統領に選出されなかったことから、12月の時点での予想には答えが出ましたが、金融支援下のギリシャで欧州連合(EU)に非協力的な政権が誕生する前に、今後の展開を巡る複数の予想を整理しておきたく思います。2015年1月25日の総選挙では、急進左派連合(SYRIZA)の勝利が予想されます。

世論調査ではSYRIZAが優勢

有権者の支持政党を聞く世論調査によると、SYRIZAが依然、リードを保っているものの、与党との格差は、2014年12月時点の8ポイントに対して直近では3-4ポイントと、縮小したもようです。支持率が僅差であることから、選挙結果を確信を持って予測することは困難な状況です。2012年5月から6月にかけての選挙では、リードを保っていたSYRIZAをサマラス首相率いる新民主主義党が3ポイントの差をつけて勝利したことが思い起こされます。

単独政党の絶対多数は想定外

ギリシャ総選挙では、どの政党が勝利するかが特に注目されます。最も高い投票率を獲得した政党が自動的にボーナスの50議席を獲得するからです。

世論調査でのSYRIZAの支持率は30%以上となっており、300議席のうち91議席を獲得することとなりますが、これに50議席を加えても141議席に留まり、過半数の151議席には届きません。

一方、新民主主義党(ND)の支持率は26%程度となっており、79議席を獲得することとなります。3位につける中道左派のPotamiは、上位2党に大きく水をあけられて22議席、極右の黄金の夜明け(GD)は16議席となります。また、SYRIZAとPotamiが連立を組めば、163議席となります。

連立政権誕生はユーロ圏にプラス

SYRIZAが絶対多数を獲得できるかどうかが注目されるのは、そのことが次期政権の行動規範を大方決めると言っても過言ではないからです。ツィプラス党首は、2014年中に態度を軟化させており、ギリシャのユーロ圏離脱や無条件のデフォルト要求を撤回しています。もっとも、SYRIZAの全党員が党首と意見を等しくしているわけではなく、30%程度は急進的な政策を支持しているようです。SYRIZAが単独で絶対多数を獲得した場合には、少数の急進派に、意見を広く表明する機会が与えられることとなりそうですが、一方、SYRIZAが中道左派の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)あるいは中道左派のPotamiとの連立を余儀なくされた場合には、急進色の弱い政権の誕生が予想されます。

連立政権は、トロイカ(ギリシャの財政再建を支援・監視する、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)3組織の通称)との妥協点を探る役割を果たす公算が高いと考えます。連立政権が実現すれば、政局の不透明感が薄れ、金融市場のボラティリティが低下する可能性が強まると考えます。

トロイカは、SYRIZAの要求を一部容認か

トロイカがSYRIZAの要求をすべて退ける公算は低いと考えます。一段の債務減免の可能性もあり得るでしょうが、ギリシャ国債については、既に大幅な表面利率の引き下げと償還期限の延長が行われていることから、実現の可能性が高いとは言えません。一方、一部のユーロ圏加盟国が、マーストリヒト条約に定められた基準の算出に際して公共投資を除くべきだとのギリシャの提案を受け入れる可能性があるかもしれません。

SYRIZAのツィプラス党首の提案の一部には、トロイカの支援が得られる可能性もありますが、これは、トロイカがギリシャ経済の寡占状況を崩したいとの意向を示しているからです。サマラス政権下では、トロイカの再三の要請がありながら、進展が見られませんでした。

一方、SYRIZA支持者にとっておそらく最も重要な社会福祉プログラムについては、家計の購買力を高めるための提案をトロイカが容認する公算は低いと考えます。かかる提案の大半は、低所得家計の電気代無料化などの歳出を膨らませるものか、あるいは最低賃金の引上げなどの競争力の低下を示唆するものだからです。このような提案は、ここ数年間のトロイカとギリシャの交渉を逆戻りさせるものだと考えます。

ギリシャのユーロ圏離脱(グレジット)あるいは債務再編

前述の提案よりも極端な提案も考えられます。現在のギリシャの状況は、2010年当時とは様変わりで、国民の大多数がユーロ圏残留を支持しており、SYRIZAのツィプラス党首もユーロ圏中核国もギリシャのユーロ離脱を望んでいるわけではありません。ユーロ圏からの円満な離脱は至難の技だと考えます。通貨危機、デフォルト、銀行セクター危機等の危険な状況を引き起こし得る要因が混在する結果が予想されるためです。ユーロ圏の銀行セクターが2010年当時に比べて強い回復力を備えていることは確かですが、ギリシャのユーロ圏からの離脱が深刻なシステミック・リスクを引き起こす可能性は否めません。ギリシャ国債の75%程度は欧州金融安定基金(EFSE)やECB等の公的機関が保有しており、したがって、ギリシャ国債のデフォルトや債務再編はユーロ圏加盟国の納税者が負担することとなるのです。加盟国の大半は、勢いを増す反ユーロ勢力への対応に苦慮しており、ギリシャ離脱の回避に全力を尽くすものと考えます。

ギリシャ国債は持続可能

ギリシャ経済はプラス成長に転じており(図表1参照)、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)も黒字転換を果たしています。また、国債の償還期限の延長と表面利率の引き下げが行われています。このような局面では、融資の返済期限を更に延長するコストが極端に大きくなることは無いでしょう。

図表1:ギリシャ実質GDP成長率の推移
(四半期、年率、期間 :2001年1-3月期~2014年7-9月期)

 

出所:ピクテグループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

「国家は債務を返済する必要がなく、借換を行えばよい」というロレンゾ・ビニ・スマギ元ECB理事の発言を思い起こしますが、金利が大幅上昇する現在の状況でギリシャが市場で借換を行うことは困難なものの、EFSE、IMF、ECB等の債権者が実行可能な条件を提供することは可能と思われます。緩やかな成長とプライマリー・バランスの均衡を達成したギリシャ経済の現状が維持されればよいのであって、かかる状況では、債務の永続的な借換も可能となり得ます。もっとも、このような手段に頼ったことが、ギリシャに犠牲を強いる結果となっています。ギリシャは、財政政策の主権をほぼ失ってしまったからです。

債務再編の余地

SYRIZAのツィプラス党首が首相に選出され、債務削減を要請するとなれば、財政政策の主権の一部は回復されることとなりますが、党首の要請が受け入れられるかどうかはわかりません。ECBが保有するギリシャ国債(およそ250億ユーロ)の削減は論外です。ECBによる加盟国の財政支援を禁ずるEU法123条に抵触するものと解釈され得るからです。一方、(2010年5月に設定された最初の金融支援策である)ギリシャ救済融資契約ならびにEFSE融資契約の条項には、窮地を切り抜ける余地が残されているかもしれません。

もう一段の国債償還期限の延長と表面利率の引き下げは、ユーロ圏加盟国に追加のコストを負わせることなく、ギリシャの負担を軽減し得る手段と考えられます。

金融危機の伝染から政治危機の伝染へ

ギリシャ新政権による要請が常識的なものであった場合、妥協点を見出す余地があることは確かです。もっとも、新政権がトロイカとの合意に至るには、二つの大きなハードルを越えなければなりません。一つは時間が限られているということです。ギリシャ政府の手元資金は、信用供与枠が延長されない場合、2ヵ月後には底をつきます。

また、欧州各国の政治日程が立て込んでいることから、中核国が態度を硬化させることも考えられます。ドイツでは、反ユーロを掲げる新政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の躍進が目立っており、ギリシャに対してより強固な姿勢で臨むよう、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)に迫っています。フィンランドでは4月19日の総選挙で債務免除の可能性を排除しています。

交渉長期化の予想

現時点では、次のようなシナリオが考えられます。

1.SYRIZAが勝利するものの、単独での絶対多数は困難

2.SYRIZAと、中道左派のPotamiあるいは全ギリシャ社会主義運動(PASOK)との連立政権誕生

3.新政権は、ギリシャのユーロ離脱(グレジット)ならびに国債のデフォルト要請を撤回

4.新政権は、債務返済ならびに構造改革を巡る条件の緩和を求めて、トロイカとの長期交渉を開始

ギリシャのユーロ圏離脱等、極端な状況が展開される可能性は低いとしても、SYRIZAの勝利により政局の不透明感が一段と増し、金融市場のボラティリティが次第に上昇する可能性も否めません。

図表2:2015年の欧州の主な選挙予定

 

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