ギリシャ総選挙:通貨同盟の試練 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ギリシャ総選挙:通貨同盟の試練 新興国 欧州/ユーロ圏 ギリシャ

2015/01/28新興国

ポイント

2015年1月25日に実施されたギリシャ総選挙では急進左派連合(SYRIZA)が勝利を収め、中道右派「独立ギリシャ人」との連立政権を組むことが予想されています。ギリシャ新政権とトロイカとの今後の交渉が注視されます。連立を組む二つの政党間に反緊縮以外の主だった共通点が無いことについては、先行きが懸念されます。

 

急進左派連合(SYRIZA)の勝利

2015年1月25日実施のギリシャ総選挙では、世論調査から予想された通り、急進左派連合(SYRIZA)が勝利を収めたものの、獲得議席は単独過半数に2議席届きませんでした。SYRIZAは、反緊縮を掲げる中道右派の「独立ギリシャ人」と連立政権を組むことが予想されます。

ギリシャ新議会は、第一党のSYRIZAを含むと過去最多の7党で構成されることとなります。

ギリシャ国債は持続可能

ギリシャ経済の破綻は、名目GDP(国内総生産)成長率が2008年との比較で-26%、過去の趨勢との比較で-43%に達するすさまじいものでしたが、以下の通り、既に新しい均衡が確立されています。

・経済成長は、プラスに転換(図表1参照)。

・2014年の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)黒字はユーロ圏加盟国中最大規模。

・ギリシャ国債の75%程度は欧州金融安定基金(EFSE)や欧州中央銀行(ECB)等の公的機関が保有しており、償還期限の延長と表面利率の引き下げを実行済み。

図表1:ギリシャ名目GDPの推移
(期間:1999年1-3月期~2014年7-9月期)

 

出所:ピクテグループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

したがって、ギリシャにこれ以上の緊縮財政の必要があるとは思われません。ギリシャ経済が(緩やかな成長とプライマリー・バランスの均衡に示される)新しい軌道を進むことが出来るよう、慎重な政策が実行されるならば、債務の永続的な借換も可能となり得ます。

合意の余地

SYRIZAのツィプラス党首には、前政権とトロイカ(ギリシャの財政再建を支援・監視する、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)3組織の通称)との交渉の成果を生かし、緊縮財政に終止符を打った首相として名をあげる余地が残されています。トロイカに対し、

・もう一段の国債償還期限の延長と
・表面利率の引き下げ

を要請すればよいからです。プライマリー・バランスは黒字転換を果たしており、ある程度の財政刺激策を打つことも可能です。

一方、トロイカ側は、

・過度の公的債務を回避し、慎重な政策を継続することと
・(ツィプラス党首の公約にも掲げられている経済の寡占状況の解消を含む)製品市場の改善等の構造改革を継続すること

を要請すればよいのです。ギリシャ新政権とトロイカが少しずつでも歩み寄るならば、両者の合意が得られることとなり、ギリシャの苦境からの速やかな脱却も不可能ではないと考えます。

衝突の可能性も否めず

とはいえ、ツィプラス党首が目指すのは財政主権の回復であり、資本市場での資金調達を可能にすることです。党首の目標を実現するには、ギリシャの債権国には受け入れがたい、累積債務の削減が必須です。一方、欧州各国では今後の選挙日程が立て込んでおり、債務減免が容認される公算は低いと考えます。

・フィンランドの政権は、4月19日に総選挙を控え、ギリシャ総選挙に先立つ一切の債務再編と支援資金返済期限の6ヵ月延長を拒否する極めて強硬な態度を明らかにしています。

また、

・ドイツでは、反ユーロを掲げて躍進中の「ドイツのための選択肢(AfD)」が、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の手足を縛っています。

したがって、ギリシャ新政権が過激な要求をつきつけるようなことがあれば、交渉が行き詰まり、金融市場に影響が及ぶことが懸念されます。

交渉期限、迫る

現行の金融支援プログラムは、2月28日に期限を迎えます。トロイカとの交渉で、短期間のうちに合意が得られなければ、ギリシャが43億ユーロの債務不履行(デフォルト)を余儀なくされる可能性も否めません。

今後の日程の見通し

・ツィプラス党首は、3日以内に組閣

・2月5日、議会招集

・2月13日、議会において新大統領選出

・2月28日、現行の金融支援プログラム終了

金融市場の反応

金融市場は、これまでのところ、比較的落ち着いた反応を示しています。ギリシャの10年国債利回りは、1月26日、前日の8.4%から9.0%に上昇したものの、1月7日に付けた10.7%は下回っています。一方、イタリアならびにスペインの10年国債利回りは、それぞれ1.5%ならびに1.4%と、過去最低水準近辺で推移しています(図表2参照)。

図表2:10年国債利回りの推移
(期間:2012年1月~2015年1月)

 

出所:ピクテグループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

今後数日間が新政権の枠組みと政策を決める鍵となります。新政権のトロイカに対する要求が妥当なものであった場合には、両者が合意に至り、ギリシャが危機を脱する公算が高いと考えます。一方、現実となる可能性は低いと思われるものの、両者間の交渉が決裂し、通貨同盟の限界を試すような状況(ユーロ共同債の導入等の債務の共有化、デフォルト、ギリシャのユーロ圏離脱(グレジット)等)が展開される可能性も排除できません。SYRIZAと連立を組む中道右派「独立ギリシャ人」との間には、反緊縮以外に主だった共通点が無いことについては、先行きが懸念されます。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

当資料をご利用にあたっての注意事項等

●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。 ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

ページの先頭へ戻る