新興国債券:ブラジル出張報告 | ピクテ投信投資顧問株式会社

新興国債券:ブラジル出張報告 新興国 新興国債券 中南米 ブラジル

2015/01/29新興国

ポイント

昨秋、再選を果たし、民間金融トップを財務相に起用したルセフ大統領が、国内経済の浮揚に成功できるかどうかが注目されています。先頃、ブラジルを訪れ、現地の生の声を聴く機会を得たピクテ新興国債券チーム、シニア・ファンド・マネジャー、マリー・テレーズ・バートンが、ブラジルの現状と先行きを分析します。

ブラジルの現状

リオ・デ・ジャネイロに到着し、出張初日に感じたのは、南米最大の経済規模を誇るブラジルの4年に及んだ景気後退期(リセッション)からの脱却を、ブラジル人自身が楽観視していることでした。ルセフ大統領と新任の財務相がこれを可能とするはずだとの楽観的な見方は、外国人投資家の間に広がる悲観的な見方とはいかにも対照的です。

ブラジルが悲惨な状況にあり、このような状況に外国人投資家が不満を募らせていることは否定のしようがない事実です。ブラジル経済が景気後退局面を抜け出せないこと、インフレ率が中央銀行の許容範囲の上限に貼りついていること、鉄鉱石や大豆等の主要資源の輸出が落ち込んでいること等、ブラジル経済を巡る不安材料は枚挙にいとまがありません。更に、国際的な格付け会社のうち、少なくとも一社が、ブラジル格下げの可能性を示唆しており、国有石油企業ペトロブラスを巡る数十億ドル規模の収賄スキャンダルが、投資家心理を一段と冷え込ませています。

とはいえ、実際にブラジルを訪れ、現地要人とのミーティングを通して感じたのは、ブラジル人の楽観的な見方と決意であり、何らかの対策が講じられなければならないとの強い信念だったのです。

投資家の信任の回復

ルセフ新政権が投資家の信任の回復を試みていることは、国庫が枯渇に瀕する状況下、公的銀行向け補助金の削減、国立経済社会開発銀行(BNDES)の貸出金利の引き上げ、年金給付ならびに失業給付の削減等の施策を発表していることからも確認されます。

また、ジョアキン・レビ氏を財務相に起用することで、ルセフ新政権が正しい方向に大きく歩を進めたことは、特に重要だと考えます。レビ氏は、シカゴ大学で経済学博士号を取得し、直近は、民間金融機関のトップを務めていましたが、国際通貨基金(IMF)や欧州中央銀行(ECB)での勤務経験もあり、2003年から2006年にかけての財務省勤務時には、容赦ない歳出削減で名をはせた人物です。

政府の役人や銀行家はほぼ一様に、歳出の抑制が(ルセフ大統領の任期となる)今後4年間のブラジルの最重要課題であり、レビ氏は課題の遂行役として適任であると述べていました。「レビ氏は、控えめな公約に対し、期待以上の成果を上げる人物ですが、予算の削減と増税という難題に取り組まなければならない局面では、このような姿勢が特に必要とされます」と評価する声もあります。

財政収支の改善に向けて抜本的な改革を実行するために必要な裁量がレビ財務相に与えられるかどうかについて懐疑的な投資家が多いのは、ルセフ大統領が閣僚の仕事に横やりを入れることで知られるからです。大統領の支持基盤である労働組合幹部に公約した最低賃金引上げの実現のため、バルボザ企画・予算管理相が提出した賃金調整方式の変更案を大統領が覆したことは周知の事実です。

もっとも、話を聞く機会のあった多くの人が、大統領がレビ財務相に干渉することはない、大統領には財務相が課題を遂行できるよう計らう以外に選択肢がないからだと考えているようでした。「大統領が態度を変えたとは思いませんが、状況に対応しようとしていることは確かです」との見解も聞かれました。

財政収支を1.5ポイント改善するとのレビ財務相の公約は野心的過ぎるようにも思われますが、中央銀行は、今後2年から3年の間、インフレ率を目標レンジ内(中央値年率4.5%の上下2%)に留めるとの決意を改めて明言しています。したがって、投資家は、少なくとも今後数ヵ月間は、レビ氏に対して性急な判断を下すことはないだろうと考えます。

改革の副作用

経済の減速は、財政の調節に伴って生じる回避し難い副作用です。ブラジルの経済成長は一段の鈍化が予想されます。ピクテの新興国債券チームは、2014年の成長率を前年比+0.1%程度、一方、2015年はゼロ成長と見ており、失業率は上昇(悪化)の公算が高いと考えています。

更に、インフレ圧力が状況を悪化させそうです。市場は、少なくとも75ベーシス・ポイント(0.75%)の利上げを織り込んでいますが、ピクテでは、資金調達コストの上昇がブラジル経済に及ぼす負の影響を勘案し、利上げ幅は限定されると見ています。ブラジル中央銀行は、インフレ率を中銀目標上限の6.5%以下に抑え、最終的には中央値の4.5%に近付けるため、政策金利を4年ぶりの高水準となる12.25%に引き上げています。

面談した複数の財務省関係者は、年内の利上げの継続について見方を等しくする一方、利上げの幅については意見が割れており、政策金利が13%に達するとの予想もありました。

もっとも、このような状況を勘案し、2015年中はブラジル債券投資を控えるとの考えには同意しかねます。中央銀行が、年内にも、利下げを通じた成長支援策に転じる可能性があるからです。そうなれば、利回り低下の恩恵が期待されるブラジル債券市場に投資の好機が訪れると考えます。

中長期的にみると、このような楽観的な見方は、一部市場に織り込まれているとも考えられます。国債のイールドカーブ(利回り曲線)上の2年から6年の年限が30ベーシス・ポイント(0.3%)程度の逆イールドの形状を呈しているからです。レビ氏率いる財務省の動向次第では、逆イールドが更に進む展開もあり得ると見ています。

通貨レアルには引き続き下押し圧力がかかっており、年内のいずれかの時点で1ドル=3レアルを試す展開もあり得ると考えます。先物為替市場のレート差もこのような水準を示唆しています。2014年の新興国通貨のパフォーマンスを比較すると、ブラジルレアルはロシアルーブルに次いで下から2位、対ドルでは11%の下落となりました。もっとも、ピクテのモデルは、レアルの名目実効為替レートが10.5%程度の割高水準にあることを示唆しており、一段のレアル安を予測しています。

ブラジル経済の開放

今回のブラジル出張では、経済界ならびに政界の要人が、国内経済開放の姿勢を強めつつあるとの印象を持ちました。出張中に面談の機会を持った全員が、ブラジル経済が開かれていることを強調し、「財政調整」という言葉を幾度となく耳にしました。

ブラジルの変革は短命に終わるかもしれませんが、重要なのは、ブラジルが変革の途上にあるということです。政府のマクロ経済政策に要約された回復に対する自信が、政治的必然性から生じたものであるとしても、これまでのところ、ルセフ大統領が正しい方向に歩を進めていることは明らかです。また、レビ財務相の起用はとりわけ重要な一歩だったと考えます。

新財務相に対する現地の期待は楽観的過ぎるかもしれません。とはいえ、外国人投資家が総じて先行きを悲観する状況下、予想外の歓迎すべき状況が展開する可能性もあると考えます。

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