モスクワ出張報告:冬のロシアに雪解けの兆し | ピクテ投信投資顧問株式会社

モスクワ出張報告:冬のロシアに雪解けの兆し 新興国 欧州/ユーロ圏 ロシア

2015/03/28新興国

ポイント

ロシアとウクライナの停戦合意を受け、多数の犠牲者を出した戦争の終結に向けた進展が期待されます。ピクテ・アセット・マネジメント(ロンドン)でロシア株式の運用を担当するヒューゴ・ベイン(シニア・インベストメント・マネジャー)と新興国社債チームのヘッド、アラン・ドゥフィーズがモスクワ出張の成果を報告します。

モスクワの経済状況をどう見るか?

ヒューゴ・ベイン(以下、HB):モスクワは気温がマイナス20度を下回る厳しい寒さでしたが、私の見た限りでは、概ね機能しているようでした。通貨ルーブルが昨年ほぼ50%の減価を見たことから、今年のロシア経済は5%のマイナス成長、一方でインフレ率は18%の上昇が予想されており、プーチン大統領でさえ、ロシア経済は史上「最も厳しい」2年を経験することになるだろうと認めています。

一方、労働市場には、緊張の兆しが殆ど認められず、モスクワ滞在中に面談することが出来た10人以上の企業経営陣の中で、大量解雇を予定していた人は皆無でした。足元の不況を耐えうる健全なファンダメンタルズ(基礎的条件)を備えた多くの企業を見出すことが出来ました。また、ロシアの貯蓄率はGDP(国内総生産)比29%(注1)と、過去の危機時との比較では最も高い水準に達していることが注目されます。

アラン・ドゥフィーズ(以下、AD):1998年や2008年が顕著な例ですが、ロシアは過去にも経済危機に見舞われており、したがって、政府ならびに民間企業の双方が既に危機対応策を構築しているように思われます。西欧による経済制裁の影響は、ロシア経済の一部には及んでいるかもしれませんし、自発的な食料品輸入禁止措置を受け、モッツァレラ・チーズが入手できない富裕層がいるかもしれません。しかし、現実を見据えようとの気迫が、ロシア全土に浸透しているように思われます。

流動性不足の状況に耐え得る資本を十分に備え、短期債務の4倍から5倍に相当する現金を保有しているような企業もあります。

ルーブル安がロシア企業にもたらした“恩恵”とは?

AD:多数のロシア企業、とりわけ、売上をドル建て、費用をルーブル建てで計上する企業は、ルーブル暴落の恩恵に与っています。例えば、金属セクターの一企業はバランスシートに巨額の現金を保有していることから、債券の満期に先立つ元本の返済を提案してきた程です。もっともピクテでは、当該社債を保有することで得られる対価を勘案し、この申し出には応じませんでした。このように、積み上がった現金の使途としての債務返済は今後も増える公算が大きいと考えます。

HB:エネルギー・セクターもルーブル安の恩恵を享受しています。大手国営エネルギー企業の幹部の話では、同社の設備投資の70%程度はルーブル建てで計上されているとのことです。

エネルギー価格の急落にもかかわらず、ルーブル建ての原油価格は、ボラティリティが急上昇した12月の一時期を除き、昨年一年を通じて概ね安定推移しています。

また、エネルギーや鉱業セクターに属する企業の中には、営業キャッシュフローから設備投資額を減じたフリーキャッシュフローが歴史的な高水準にある企業も認められます(注2)

ピクテでは、原油価格との連動性が強いルーブルが、今後一段の大幅下落を見る可能性は低いと考えます。足元では、ロシアルーブルは米ドルに対してその適正価値より60%も低い価格で取引されていると見ています(図表1参照)。


図表1:ピクテ独自のモデルに基づくロシアルーブル(対米ドル)の適正価値からの乖離

 

出所:ピクテグループ

ロシア中銀の金融政策 : 金利とインフレ率の上昇がロシア企業に及ぼす影響は?

AD:銀行セクターでは既に緊張が見られますが、中央銀行は2014年の1年間でおよそ12%もの利上げを行ったわけですから、当然だと考えます。出張中に面談の機会を得た企業幹部は異口同音に金利上昇の弊害を訴えていました。また、農業セクター企業の経営陣は、顧客の一部は、製品購入のための資金調達に支障をきたしていると話していました。

HB:ロシア中央銀行は、1月、主要貸出金利を17%から15%に引き下げていますが、このことは、中銀の優先課題が、インフレ抑制から成長支援にシフトしたことを示唆するものだと考えます。

エリヴィラ・ナビウリナ総裁率いる中銀は、最近、人事異動を行っており、経済成長の低迷等の状況に対処する現実的な路線に軌道を修正しているようです。また、政府役人の話を総合すると、6.5%の利上げを伴った昨年12月実施の緊急金融引き締め策は近日中にも解除されるのではないかと考えます。

ルーブル安と自らが課した食料禁輸措置によって急騰していたインフレ率も、経済の低迷などを受けて、今年中には落ち着きを見せると考えられます。したがって、中央銀行は経済成長を下支えするための金融政策を取りやすくなるでしょう。

ロシア政府の金融危機対応策

AD:ロシア政府は、2008年ならびに2012年と同様、350億ドル規模の「経済・金融危機対応計画」を発表しています。これは、ロシアの国民総所得の70%程度を稼ぎ出し、労働人口の約5分の1を雇用する主要戦略企業199社に対して、政府支援を約束するものです(図表2参照)。

図表2:ロシアの経済・金融危機対応計画概要

 

出所:ピクテグループ

当計画は、エネルギー、鉄鋼、鉱業等の主要セクターを支援するものと考えますが、一方、ロシア経済の約25%(注3)を占める中小企業の資金繰りについては引き続き厳しい状況が続くものと見ています。

HB:出張中に訪問した企業の中では、景気敏感セクターに属する企業を中心に、より現実的な想定に基づき、事業計画の練り直しを行っているとのことでした。

2015年のロシア投資の見通しと、市場の下落リスク

HB:ロシアの株式市場は、世界の市場の中でも投資妙味が最も高い市場の一つとなっていることから、海外からの投資資金は徐々に還流してくるものと考えます。ロシア中銀は2015年年間のネットの資金流出額を1,180億ドル程度と予測していますが、この大半は外貨建て社債の元利金支払いと見られます。

ロシア株式のバリュエーション(投資価値評価)は割安な水準にあります。また、多くの海外投資家のポートフォリオにおいて、ロシア株式の投資比率は低く、新興国株式のベンチマークに対してアンダーウェイトの状態です。

こうした中で、ピクテでは特に、ルーブル安の恩恵に与る輸出型企業や割安度が際立つ企業に注目しています。

一方、国内市場で売上を計上する内需型消費関連銘柄には注意が必要です。

東部ウクライナでの停戦が、時間を要しつつも実現する可能性が浮上しつつあるとはいえ、政治リスクについては、引き続き注視が必要です。西欧は追加の経済制裁の可能性を示唆しており、これがロシア経済を下押すこととなる可能性も否めません。

AD:ロシアの外貨準備高が昨年のうちに4分の1程度減少したことを勘案すると、ルーブルには引き続き下押し圧力がかかる状況が続く一方、中央銀行には減価のスピードを弱める手立てしか残されていないと考えます。エネルギー売上は、ロシアの輸出代金の70%程度、政府税収の50%程度を占めており、国庫が短期間のうちに補填される公算は低いと考えます。

昨年2014年12月の時点でロシア債券の売却を控えた投資家が、足元、売却に転じる可能性は低いと考えます。ロシア社債の割安度が際立つ状況は、ロシア企業に内在する堅固なファンダメンタルズと長期的な景気回復期待を見込んだ投資の好機を提供するものと考えます。

割安銘柄は多数散見されます。一例として、国内経済の苦境の影響を不当に受けた石油関連銘柄が挙げられます。当該銘柄の格付けはBBB-ですが、格付け会社スタンダード&プアーズとムーディーズ・インベスターズ・サービスの両社がロシアのソブリン債格付けを投資不適格に引き下げたため、当該銘柄は国債の格付けを上回っています。また、イールド・スプレッド(利回り格差)は350ベーシス・ポイント、(発行体等による期限前償還等を考慮した)最低利回りは7%を上回っており、発行体の健全な企業ファンダメンタルズを勘案すると、リスクとボラティリティを取る対価は十分に魅力的だといえるでしょう。

ロシアは投資の好機を提供していると考えます。同国のことわざにもあるように、「どんなに激しい嵐もいつかは止み、明るい太陽が顔を出す」からです。

図表3:小売セクターに見られる改善の兆し

 

出所:ピクテグループ

(注1) 出所:国家統計局、2013年
(注2) 出所:ブルームバーグ
(注3) 出所:欧州投資銀行

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