債権団との交渉で極限を試みるギリシャ | ピクテ投信投資顧問株式会社

債権団との交渉で極限を試みるギリシャ 新興国 欧州/ユーロ圏 ギリシャ

2015/05/19新興国

ポイント

ギリシャの資金繰りが逼迫する状況は変わらず、債務不履行(デフォルト)の可能性は否めません。ギリシャは債権団との合意を引き延ばしているものの、最終的には支援再開の条件を受け入れざるを得ないと考えます。連立政権の選挙公約が守られなければ政治危機も予想されますが、ユーロ離脱の公算は低いと見ています。

ポイント解説

・2015年5月11日開催のユーロ圏財務相会合では、幾つか小さな歩み寄りがあったとはいえ、目立った進展は見られませんでした。

・バルファキス財務相は、予想されていた通り、5月12日が期限となっていたIMFへの返済(7億5,000万ユーロ)を実行しました。

・ギリシャの国庫の正確な状況は定かではありませんが、今後数週間以内のギリシャの債務不履行(デフォルト)の公算は極めて高いと考えられます。

・ 労働市場改革、公的年金制度改革、国有企業の民営化等、ほぼすべての重要案件について、ギリシャと債権団との歩み寄りは見られません。

・ギリシャ政府は現状を無視しており、瀬戸際に追い込まれて初めて債権団の条件を受け入れるものと考えます。条件受け入れは、ギリシャ与党の急進左派連合(SYRIZA)が選挙公約の殆どに違反することを意味します。

・ギリシャと債権団がどう合意に至るかは、ギリシャ連立政権ならびにSYRIZAの存在を試すものとなり、政治危機ならびに早期の総選挙の可能性も否めません。

・ギリシャのデフォルトがギリシャの自動的なユーロ圏離脱(グレジット)を意味するわけではありませんが、民間銀行の閉鎖、資本規制の導入、並行通貨の発行等が予想されます。ギリシャにとって深刻な危機となることは間違いありませんが、資本規制と欧州中央銀行(ECB)による民間銀行支援を通じ、ギリシャはユーロ圏の他の加盟国から隔離されるだろうと考えます。

・ 欧州民間銀行のギリシャ債権が大幅に減少したことから、ギリシャのデフォルトの影響がユーロ圏の他の加盟国に及ぶ可能性は限定的だと考えます。


図表1:ギリシャ危機の経緯

 

出所:ピクテグループ

希望と絶望の狭間で

ギリシャを巡る最近の動向は極めて流動的です。2015年5月11日開催のユーロ圏財務相会合では、幾つか小さな歩み寄りがあったとはいえ、目立った進展は見られませんでした。

明るい材料としては、12日が期限となっていた国際通貨基金(IMF)への返済(7億5,000万ユーロ)が実行されたことが挙げられます。ギリシャ政府は、返済に先立って、地方自治体が保有する資金を中央政府の口座に集約する政令を出した他、バルファキス財務相を債権団との直接の交渉役から外していたことから、ギリシャと債権団が合意に至る確率が増し、ギリシャの差し迫ったデフォルトのリスクは先送りされていました。

一方、懸念材料は、債権団がギリシャ国債の大幅減免を行い欧州委員会(EC)が経済成長見通しを下方修正しない限り、ギリシャ支援は減額せざるを得ないとの声明がIMFから発表されたことです。

資金繰りは逼迫

ギリシャの国庫の正確な状況は定かではありませんが、2週間程前には、ギリシャがデフォルトの危機に瀕していることが明らかとなっていました(2014年12月16日発行のピクテ・グローバル・マーケット・ウォッチ「ギリシャ:後戻りできない、サマラス首相の決断」、2015年4月6日発行のピクテ・マーケット・フラッシュ「正念場を迎えるギリシャ」をご参照下さい)。

ギリシャ政府は、(1)地方自治体が保有する余剰資金を25億ユーロを上限として中央政府の口座に集約し、5月中に期限が来る債務返済に充てる、(2)債権団との直接交渉役からバルファキス財務相を外して難航していた交渉の円滑化を図る、という二つの決定により当面のデフォルト・リスクを回避しました。もっとも、バルファキス財務相は、5月11日、「ギリシャの国庫は2週間程で底をつく」と発言しています。

連帯の危機にさらされるSYRIZA

上述の政府決定がなされたとはいえ、ギリシャが依然として危機的な状況にあることは変わりません。資金繰りは逼迫しており、デフォルトの確率は極めて高い状況です。

また、ギリシャと債権団との歩み寄りは見られません。債権団側は一致団結し、譲歩は一切しないとの姿勢を崩していません。特に、ドイツ国内では、メルケル首相率いるドイツ・キリスト教民主同盟(CDU)内部で、ギリシャが離脱した方がユーロ圏にはよいとして、ギリシャを通貨同盟に引き留める必要はないとの意見が強まっているようです。このような状況下では、ギリシャが債権団の条件を受け入れざるを得ないこととなりかねず、ギリシャ与党のSYRIZAはほとんどの選挙公約に違反する状況に陥るかもしれません。

ギリシャと債権団との合意内容は、ギリシャ連立政権やSYRIZAの存在を試すものとなり、政治危機ならびに早期の総選挙の可能性も否めません。

IMF、窮状回避の姿勢

足元の状況がギリシャに有利とはいえない理由は、(1)債権団がギリシャ国債の大幅減免を行わない限りIMFのギリシャ支援が減額される可能性があること、(2)ギリシャの経済成長ならびに財政収支が2014年末以降、悪化の一途を辿っていること、の2点です。

2010年のギリシャ危機発生以降、IMFはギリシャの財政状況が持続不可能であることは明らかだと見て、債務再編が有効だとの見方を示してきました。

一方、欧州の債権団は、債務再編は財政移転に当たるとしてこれを一蹴しています。換言すると、IMFは、ギリシャには中期的な支払能力が十分に備わっていないと判断し、IMFの融資条件に抵触することがわかっていながら、ギリシャへの融資を強制されたことになります。当該融資の決断は、新興国を中心とした欧州以外のIMF加盟国から強烈な批判を受ける事態となりました。

IMFは前述の声明の中で、ギリシャ問題を巡る妥協は繰り返さないとの決意を示唆したと見られます。この決意は、第3次ギリシャ支援を巡る交渉に対して、(1)欧州以外の機関から期待される支援が減額される、(2)ギリシャに対する欧州債権団の関与が増す、(3)IMFが債権団の中心的な役割から外れることでギリシャ危機の解決策を巡る経済的な査定よりも政治的な議論が優勢となる、という直接的影響を及ぼすと考えます。

悪化際立つギリシャの経済状況

ギリシャが数年にわたって真摯に取り組んできた緊縮財政の効果は、2014年後半時点に現れ始めていました。経常収支が黒字転換を果たし、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)がユーロ圏の最高水準に近づきつつあった他、実質GDP(国内総生産)成長率は、3四半期連続のプラス成長を達成して平均で前期比+0.6%と、ユーロ圏の平均を上回っていました(図表2参照)。

図表2:ギリシャの実質GDP成長率と景況感指数の推移
(四半期、期間:1999年1-3月~2014年10-12月)

 

EC景況感指数は3ヵ月平均値(2015年1-3月平均まで)
出所:ピクテグループ

  ところが、2014年12月、サマラス前首相が大統領選の前倒しを告示し、2015年1月25日に総選挙が実施されたことで、先行きを巡る不透明感が極度に強まり、投資の中止や納税の先送り、銀行預金の引き出しなどが相次ぎました。ギリシャ経済は、おそらく2014年末前後にリセッションに逆戻りしたものと考えます。

 欧州委員会(EC)は、5月5日、ギリシャの2015年の成長率ならびに財政黒字(プライマリー・バランス・ベース)見通しを改定し、前回見通しから大幅に下方修正しました。また、経済調整プラグラムが継続されると仮定した場合のギリシャの公的債務は、前回見通しを上回るGDP比173%としました。欧州委員会の予想は過度に楽観的な見通しに基づく傾向があります。(成長率、インフレ率、財政黒字の)より現実的な見通しに基づけば、当面は公的債務が縮小する可能性はないように思われます。

経済ファンダメンタルズ(基礎的条件)が悪化する状況下、ギリシャが近い将来、資本市場に復帰するための最低条件を満たす可能性はほぼないように思われます。したがって、債権団に課された条件に従うのではなく自立財政を取り戻すとする政府目標は、実現する公算が低いと考えます。ギリシャの債務の大半は欧州の公的機関が保有していることから、当面のところ、債務返済(元利金の返済)に問題はなさそうです。ギリシャの2014年の年間債務返済はGDP比3.9%に留まっており、イタリア、アイルランド、ポルトガルの水準を下回っています。

ギリシャがユーロ圏に留まる方法は一つしかありません。債権団の条件を受け入れて、労働市場ならびに年金制度の改革を進めることです。(2014年末に達成しかけていた)経済ファンダメンタルズの安定なくして、ギリシャの資本市場への復帰はあり得ないからです。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

当資料をご利用にあたっての注意事項等

●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。 ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

ページの先頭へ戻る