ギリシャ:終わりの見えない危機 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ギリシャ:終わりの見えない危機 新興国 欧州/ユーロ圏 ギリシャ

2015/06/17新興国

ポイント

ギリシャ支援を巡る交渉について、状況は目まぐるしく展開しています。6月18日に予定されている交渉の行方は予断を許しません。合意に至った場合には、新政権の誕生も予想されます。合意に至らなかった場合には、銀行閉鎖、資本規制等の緊急措置が講じられると見ています。

懸念される足元の動向

ギリシャ支援交渉を巡る足元の状況は、最悪のシナリオが実現する確率を大きく高めるものとなっています。2015年6月11日の会合では、国際通貨基金(IMF)の担当者が、交渉に進展がないことを理由に米国に帰国してしまいました。また14日には、交渉開始後わずか45分で、「ギリシャと債権団との隔たりが大き過ぎることから合意は困難」との結論に達しました。

ギリシャ、欧州債権団、IMFの三者が交渉に関わっていることが事態を困難なものとしていることは明らかです。三者がいずれも各自の制約に縛られているからです。IMFは、債務返済能力のない国への融資が出来ないことからギリシャの債務削減を求めていますが、これは欧州債権団にとって、少なくとも現時点では受け入れ難い要求です。しかし、IMFは、財政再建については強硬な姿勢を崩しておらず、ギリシャ政府が反発の姿勢を示しています。

土壇場の交渉続く

ユーロ圏財務相(ユーログループ)会合が予定される6月18日には、ギリシャと債権団との土壇場の会合が再度開かれます。ギリシャ危機は6ヵ月に及んでいますが、「これが最後」とされた交渉の決裂後に、常に新たな交渉の場が設けられたことが、危機感を薄れさせる結果になったものと考えます。とはいえ、時間の経過に伴い、交渉が時間切れとなってギリシャの国庫が底をつき、最悪のシナリオが現実となる確率が増しています。

最悪のシナリオ

6月18日の交渉が決裂した場合には、ユーログループが「ギリシャはもはや財政再建プログラム下にない」との結論を下すことが予想されます。このような結論は、欧州中央銀行(ECB)が同行の規則に沿った行動を起こす引き金となり得ます。ドラギ総裁が最近何度か明言している通り、ECBは規則を遵守する機関だからです。ECBは、投資適格以下の格付けの国の国債がECBの融資の担保として認められるには、当該国が財政再建プログラムを実行しなければならないとの規則を定めています。ユーログループによる声明が出されれば、ギリシャの銀行制度の早期の破綻を招く可能性が増すものと考えます。銀行破綻が現実のものとなれば、預金者は自国の銀行への信頼を失い、預金の引き出しに走ることが予想されます。預金の流出に拍車がかかれば、金融当局は銀行制度を守るため、銀行の閉鎖と、(預金の引き出し制限や送金規制等の)資本規制を余儀なくされるものと考えます(図表1参照)。

このようなシナリオが現実のものとなれば、ギリシャの国民にとっても、ギリシャの現政権と欧州通貨同盟の存続にとっても、予想のできない、悲惨な結果がもたらされる可能性は否めません。したがって、期限内の合意を実現するインセンティブは極めて強いのです。


図表1:ギリシャの銀行預金残高の推移
(月次、期間:2003年1月~2015年5月)

 

出所:ピクテグループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

ツィプラス首相、歩み寄りか?

最近の報道によると、ギリシャ側の提案はギリシャがわずかながらも債権団に歩み寄ったことを示唆するもののようです。論争の的となってきた基礎的財政収支(プライマリー・バランス)黒字の達成目標について、ギリシャ側がようやく債権団の要求に歩み寄る姿勢を見せ、2015年目標をGDP(国内総生産)比0.6%から同1.0%に、2016年目標を同1.5%から同2.0%に引き上げたもようです。ギリシャ政府が(GDPの1.7%程度、30億ユーロ程度とされる)歳入・歳出ギャップを、歳出削減ではなく法人税率の引上げで埋めようと算段しているとしても、首相の提案が合意に向けた重要な一歩であることは間違いありません。

今週中の合意は可能か?

首相の提案が土壇場の合意に至る可能性を増しはしましたが、ギリシャと債権団との交渉は、両者が態度を急変させる、険悪な状況で続くものと思われます。その結果、6月18日の交渉は、翌19日あるいは週末にずれ込む可能性もありそうです。

交渉の結果、合意が得られたとしても、ギリシャには現行の支援プログラム下で凍結されている72億ユーロが支払われるだけで、当座しのぎの対応に留まります。とはいえ、限定的な対応をもたらすのみの合意が、与党急進左派連合(SYRIZA)の連帯を試すものになることは間違いありません。連合の分裂は予想されるものの、穏健派に加え、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)ならびに中道左派Potamiの一部の議員が合意を受け入れる可能性はありそうです。もっとも支払いの実行には、ドイツをはじめとしたユーロ圏各国の議会の承認が必要です。

関係各国の議会の承認が得られれば、ギリシャへの72億ユーロの支払いの準備が整います。支払いはギリシャに対する一時的な救済です。ギリシャは期限の迫 る債務の一部を返済することが可能となりますが、夏以降の返済を続けるには、(250-300億ユーロ相当の)第3次支援を巡る交渉が必須です。

ギリシャ銀行制度の凍結

ギリシャと債権団が21日までに合意に至らなかった場合には、最悪のシナリオを回避するため、緊急対応策が講じられる必要があります。欧州金融当局は、ギリシャの民間銀行の取付けリスクを勘案し、銀行制度を維持するため、銀行制度「凍結」の可能性を探っています。恐らく、民間銀行の閉鎖、資本規制の導入、並行通貨の発行等の措置が取られるものと考えます。ギリシャ国民が預金を引き出せないとなると、その影響は甚大であり、SYRIZAを中心とする現政権の支持率は急落する公算が高いと思われます。ギリシャにとっては深刻な危機的状況が展開されるとしても、土壇場の合意へ望みをつなぐために、上述の緊急対応策や民間銀行に対する現行のECBの支援を通じて、ギリシャは当面隔離される公算が高いと考えます。

ギリシャのデフォルトはユーロ離脱(グレジット)と同義ではない

合意に至らなかった場合でも、ギリシャに、現政権よりも中道寄りの政権が誕生するものと考えます。新政権は債権団との合意を成立させ、民間銀行の存続とギリシャのユーロ残留を可能とするでしょう(図表2参照)。

そうなれば、ギリシャ危機の周縁国への波及は限定されると考えます。欧州の銀行は、資本の再構築を行い、ギリシャ向け債権を大幅に減らしています。また、ECBの量的金融緩和と国債買取プログラムが国債市場を含む金融市場を下支えるものと考えます。


図表2:ギリシャがデフォルトした場合にユーロ離脱を回避する道すじ

 

出所:ピクテグループ

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