ギリシャとユーロ:重大な決断へ | ピクテ投信投資顧問株式会社

ギリシャとユーロ:重大な決断へ 新興国 欧州/ユーロ圏 ギリシャ

2015/07/01新興国

ポイント

ギリシャの運命は7月5日の国民投票に委ねられており、投票結果次第では、ユーロ離脱の可能性も否めません。ピクテ・アセット・マネジメント(ロンドン)のストラテジスト、ルカ・パオリーニが、今後の進展を占い、金融市場への影響を解説します。

特集:ギリシャ危機レポート

IMFへの15億ユーロの返済は不履行が確実視され、ECBも民間銀行への追加緊急支援を行っていないもようです。ギリシャは、7月5日の国民投票の結果にかかわらずユーロを離脱することになるのでしょうか?

ルカ・パオリーニ(以下、LP): そうは言い切れませんが、確率は大きく高まったと考えます。国際通貨基金(IMF)への債務返済は、それが「延滞」扱いされるとしても事実上の不履行(デフォルト)となることはほぼ確実です。

もっとも、決定的に重要なのはECBへの35億ユーロの返済期限を迎える2015年7月20日です。

構造改革を条件とした金融支援を巡る合意が7月20日までに得られなければ、欧州中央銀行(ECB)が保有するギリシャ国債のデフォルトは避けられず、ギリシャが混乱のうちにユーロを離脱する事態をもたらしかねません。ギリシャのユーロ圏残留を可能とするため並行通貨を発行するシナリオも考えられますが、そのような状況を長期間持続することは難しいと考えます。

ECB、欧州連合(EU)、IMFから成る債権団(トロイカ)が提示した財政改革案(実際にはユーロ残留)の賛否を問う国民投票が、状況を一層複雑なものとしています。

財政改革案に対する反対票が多数となった場合には、極めて厄介な状況が展開されると考えます。ECBのギリシャ民間銀行に対する支援( 緊急流動性支援(ELA))が打ち切られることは必至です。ギリシャ国債は、もはや融資の担保とはみなされないからです。ELAの打ち切りは、ギリシャのデフォルトひいてはユーロ離脱をもたらすこととなりかねません。また、銀行破綻の可能性が高まることで、経済・政治を巡る不透明感がギリシャ国境を越えて広がる状況も展開され得ると考えます。

一方、国民投票の結果、賛成票が多数となったとしても、短期間のうちに事態が収束するとは限りません。新しい財政改革案が承認されれば、債権団からの新規の金融支援を確保する機会がギリシャに与えられそうに思われるかもしれませんが、政治的な不透明感が一層強まる可能性もあるからです。

賛成票が多数となった場合、急進左派連合(SYRIZA)の立場がどうなるかは不明であり、トロイカがチプラス首相との交渉を続ける意志があるかどうかも定かではありません。首相とトロイカとの関係は良好とはいえず、両者は互いに相手に対する信頼を欠いているからです。

もっとも望ましいのは、賛成票が多数となり、幅広い政党から成る新連立政権が現政権に替わることで、ユーロ圏の政策立案者とギリシャの交渉が容易になることです。

そうなれば、一部債務の減免を含むより柔軟な金融支援策が提案されるかもしれません。

また、米国がドイツに対し、ギリシャに猶予を与え、ユーロ圏に留めるよう、圧力をかけているとの報道も注目されます。オバマ政権が南欧の政治危機を懸念し、いかなる手段をとってもこれを回避したいと望んでいることは明らかです。

直近の世論調査は、ギリシャ国民が債権団の提示する財政改革案に、大差で、賛成票を投じることを示唆するものとなっています。とはいえ、これはSYRIZAが国民に反対票を投じるよう呼びかけるキャンペーンを始める前に実施された調査であることから、賛成票と反対票は僅差となるかもしれません。

ギリシャのユーロ離脱の可能性は、株式市場ならびに債券市場に十分に織り込まれていると考えますか?

LP:ユーロ圏の株式市場は、4月半ば以降、10%程度下落しています。また、この間、イタリアやスペインなど周縁国国債のドイツ国債に対する利回り格差(スプレッド)はほぼ2倍に広がっています。

金融市場が比較的落ち着いているのは、ユーロ圏の政策立案者がギリシャのユーロ離脱を回避することを投資家が信じているからだと考えます。ピクテも同じ見方を取っており、足元の株式市場や周縁国債券市場の下げは、絶好の買い場を投資家に提供していると考えます。もっとも、ギリシャが混乱のうちにユーロを離脱することとなれば、イタリアやスペインの市場が急落する可能性は否めません。投資家は、通貨切下げリスク、つまり、将来イタリアやスペインがユーロから離脱する可能性を見極めようとするからです。

ギリシャのユーロ離脱が現実となった場合、ユーロ圏当局は、域内の重債務国をギリシャと同様の状況に陥らせないためにどのような行動を取ると考えますか?「いかなる手段を講じてもユーロを守る」とのドラギECB総裁の発言を信じてよいのでしょうか?

LP:「いかなる手段を講じてもユーロを守る」とのECBの「誓い」は信じてよいと考えます。ECBによる量的金融緩和は既に実行されていますが、今後、買入額を増額したり、長期債の比率を高めるといった手段を講じることも可能です。実際のところ、ギリシャがユーロ圏から離脱した場合には、このような手段が講じられると考えます。また、(構造改革を約束する国の国債を買入れる)国債買入プログラム(OMT)も選択肢です。当プログラムについては、欧州司法裁判所が合法であるとの判断を下しており、ECBによる流通市場での買入が可能となっています。

また、欧州金融安定化基金(欧州安定メカニズム)の約4,500億ユーロを使うことも可能です。更に、新たに創設された欧州銀行同盟が、ユーロ域内の銀行を銀行破綻の「伝染」から守ることも予想されます。

金融市場の暴落や域内経済の大幅減速の場合には、欧州財務相会合(ユーログループ)が緊縮財政の緩和を決めることもあり得ます。構造改革を実施中のイタリアやスペインには有効な手段と思われます。

ギリシャのユーロ離脱は、ユーロ圏の金融安定につながると考えますか?

LP:中期的にはそうなると考えます。理由は以下の2点です。第一には、政策決定者が、構造改革を実行する国を取り込むことで、域内の金融と財政の統合を短期間のうちに推し進める力となることが期待される点です。第二には、ギリシャのユーロ離脱が、ユーロ加盟国政府と国民に対し、構造改革を軽視したために被る経済的な痛みが甚大であることを印象付けるだろうという点です。

ギリシャのユーロ離脱は、改革に積極的な加盟国の立場を強めると考えます。債務削減を可能とするのは、緊縮財政と構造改革のみだと考えられるからです。このような考えが正しいかどうかは、スペインの総選挙が予定されている11月にも試されることとなるでしょう。

ユーロ圏にとっての長期的なリスクとなり得るのは、ギリシャがユーロ圏外で繁栄することです。このような状況が現実のものとなれば、イタリア等の重債務国政府は、ギリシャに追随する誘惑に駆られるかもしれませんし、国民は緊縮財政から逃れる道だと考えるかもしれません。もっとも、このような状況が実現する可能性は低いと考えます。

ユーロ圏分裂の可能性を受け、FRBが年内の利上げを先送りすることはあるでしょうか?

LP:ギリシャのユーロ離脱を嫌気して世界の市場が暴落し米国経済が危機的状況に陥ったり、一段のドル高によってデフレのリスクが強まるというようなことにならない限り、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを先送りすることは無いと考えます。

他の中央銀行の動きを見ると、例えばスイス中銀は、数日前、対ユーロのスイス・フラン高阻止のため、外為市場での介入を行っており、1ユーロ=1.03スイス・フランを下限目標としたもようです。また、対ユーロの英ポンドも2007年以来の高水準で推移していることから、イングランド銀行がギリシャ危機収束の目途がたつまで、利上げを先送りする可能性はあると見ています。

国民投票の結果、債権団の提案に対する賛成票が多数となり、現政権に代わる連立政権が発足した場合、金融市場にはどのような影響が及ぶと考えますか?短期的な見通し、中期的な見通しを説明して下さい。

LP:少なくとも国民投票の結果が明らかとなるまでは、極めてボラティリティの高い相場展開となることが予想されます。市場が大きく下げた場合には、イタリア、スペイン、ポルトガルの銀行株や長期国債の投資機会を提供するものと考えます。

ユーロには中立的な見方をしており、一段のユーロ安になっても短期間のうちに収束するものと考えます。大方の投資家がユーロに極めて弱気であることから、割安感が際立っています。ピクテのモデルは、対米ドルのユーロ・レートが適正価値を大きく下回る水準にあることを示唆しています。

債権団の提案に対して反対票が多数となった場合、ユーロが売られるかどうかは判断が難しいところです。ギリシャの離脱によりユーロ圏の問題点が取り除かれればユーロ買いの材料とみなされ、ユーロ高につながる可能性もあるからです。

賛成票が多数となれば、ユーロ圏の資産クラスに中期的にプラスだと考えます。欧州株式のファンダメンタルズ(基礎的条件)は堅固だと考えるからです。

2015年のユーロ圏実質GDP(域内総生産)成長率は、2%程度を実現するものと見込まれ、流動性は極めて潤沢です。輸出主導型の経済がユーロ安の恩恵に与っているというだけでなく、企業の利益成長率も良好です。株価収益率(PER)は割安とは言えませんが、企業利益は過去の景気循環のピーク時の水準を下回っており、今後の回復余地が十分に残されています。南欧の国債にも強気の見方をしています。ギリシャがユーロを離脱したとしても、市場の下げは限定的であり、回復局面では戻りの動きが加速度を増すものと見ているからです。

一方、欧州ハイイールド債は売られる可能性があると見ています。市場が乱高下する局面で堅調な推移を続けてきており、これまでの基調が持続可能だとは思われないからです。また、投資家が強気の姿勢を維持しており、市場の流動性が低下しつつあることから、投機的な格付けの債券は、市場が不透明性を増す局面において投資適格債以上に売られる可能性があると見られます。

ギリシャのユーロ離脱が現実となったとしても、欧州株式に長期的な影響が及ぶとは考えません。欧州株式は、中長期的には良好なリターンをあげるものと見ており、対ドルのユーロ・レートも上昇を見込んでいます。

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