ギリシャ:土壇場の急展開 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ギリシャ:土壇場の急展開 新興国 欧州/ユーロ圏 ギリシャ

2015/07/02新興国

ポイント

ギリシャ政府の一貫性を欠く発表が相次いで報道されるなか、ギリシャのユーロ離脱のリスクが高まっています。ピクテでは、ギリシャのユーロ残留は可能だろうと見ています。ただし、7月5日の国民投票で、反対票が多数となったとしても、賛成票が多数となったとしても、ギリシャ危機を巡る不透明感が短期間のうちに払拭される可能性は低いと考えます。

特集:ギリシャ危機レポート

収拾不能の事態が続く

チプラス首相が債権団の最終提案を拒否し、緊縮財政策に対する賛否を問う国民投票の実施を発表してから、刻一刻と変化するギリシャ情勢が逐次報道されています。国内の経済状況や銀行制度を取り巻く環境が悪化する中、首相は現状をコントロールし切れていないように思われます。ギリシャは6月30日、国際通貨基金(IMF)への15億ユーロの返済を行わず、事実上の債務不履行(デフォルト)となりました。

ギリシャは債権団に対し、現行の支援策の短期間の延長と欧州安定メカニズム(ESM)からの2年間の融資を含む新たな支援策を要請しています。欧州中央銀行(ECB)は、7月1日の理事会で、ギリシャの民間銀行に対する緊急流動性支援(ELA)の延長を討議しましたが、チプラス首相が新たな支援策を要請した裏には、ECBからギリシャに有利な決断を引き出したいとの思惑があったように思われます。また、幾つかの条件が受け入れられれば債権団の提案を受け入れ、国民投票の中止あるいは延期も可能とした首相発言にも同様の思惑がありそうです。

市中銀行の営業停止と資本規制導入を巡る政府の決定が、ギリシャの国民生活に直接的な影響を及ぼし始めています。現金が底をついたATM(現金自動預入支払機)もあり、年金受給者への支払いにも影響が出始めています。このような状況下、直近の世論調査は、緊縮財政策に反対の票が多数となることを示唆しており、銀行の営業が停止された後に行われた調査では、反対が46%と賛成の37%を上回っています。

NO(反対票)が多数となった場合

緊縮財政策に対する反対は、ギリシャに対する欧州連合(EU)からの支援が打ち切られることを意味しますが、ECBがギリシャの銀行制度に対する支援を再検討する可能性もあります。そのような状況が現実となった場合、ギリシャ政府は銀行営業を再開するため、並行通貨の発行を余儀なくされますが、これはEU法に抵触することから、ギリシャの事実上のユーロ離脱(グレジット)を意味することとなります。

金融市場では、ギリシャの離脱によりユーロが強含む可能性もあるとの見方が大勢です。とはいえ、ユーロ加盟国政府は、「欧州プロジェクト」の失敗を意味するユーロ離脱に対して責任を取るのでしょうか?ギリシャのユーロ離脱は、欧州が平和と民主主義と繁栄の地ではなくなったこと、欧州連合の創設者たちの夢がついえたことを意味します。また、ユーロ圏拡大の試みの崩壊に向かう一歩ともなりかねません。

したがって、反対票が多数となった場合、債権団はユーロが混乱のうちに、また、短期間のうちにユーロを離脱する事態を回避するため、何等かの対策を講じるものと考えます。

YES(賛成票)が多数となった場合

チプラス首相は、賛成票が多数となった場合には、債権団の要求を受け入れることを明言していますが、首相に対する(債権団の)不信感は強まる一方です。また、賛成が多数となった場合、明言は避けているものの、退陣もあり得ることを示唆しています。連立の組み替えも、あるいは官僚主導の政権が現政権を引き継ぐ可能性も考えられます。債権団に協力的な政権の誕生が金融市場にプラスとなることは明らかです。

とはいえ、債権団と新政権の交渉はゼロから始めることとなり、おそらく数週間を要することが予想されます。その間に期限が到来する債務の返済、なかでも7月20日のECBへの返済(35億ユーロ)はどうなるのでしょうか? 当分の間は、混乱した状況が続くものと予想されます。

ギリシャのデフォルトによる民間セクターへの影響は限定的

ギリシャの債務の大半は公的機関が保有することから、ギリシャのデフォルトによる民間セクターへの影響は限定的なものに留まると考えます。

民間セクターが保有するギリシャ債券の価格は既に額面の50%に下落しています。推定では、ユーロ圏の民間銀行が保有するギリシャ債権は、900億ユーロから80%程度削減され、170億ユーロとなっています(図表1参照)。したがって、ギリシャの銀行破綻が欧州の銀行制度全体に波及するシステミック・リスクの可能性は小さいと考えます。

図表1:ユーロ圏の民間銀行が保有するギリシャ債権の残高

 

出所:ピクテグループ

ギリシャのユーロ離脱(グレジット)の影響は甚大ではあっても対処可能

民間セクターのギリシャ債権はその大半が公的セクターに移管されています。ECBは国債180億ユーロ(図表2参照)と流動性支援を併せて1,420億ユーロ、また、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が1,840億ユーロなどとなっています。

ギリシャのユーロ離脱と完全なデフォルトが現実のものとなった場合、ユーロ圏の損失は、ギリシャを除くユーロ圏のGDP(域内総生産)のおよそ3%に相当します。これに民間セクターの損失を加えると対GDP比はおよそ4%となり、甚大な影響が及ぶことは間違いありませんが、ユーロ圏の経済規模を考えると対処可能だと考えます。

図表2:ギリシャ国債の保有額

 

出所:ピクテグループ

ギリシャ危機は続く

【ピクテの予想する今後の基本シナリオ】
・銀行休業と資本規制が奏功し、ギリシャの銀行制度は国民投票まで持ち堪える
・EUとECBは国民投票の結果が明らかになるまで、ギリシャの状況を悪化させるような措置を講じない
・国民投票は僅差となることが予想される ・反対票が多数となっても、債権団がグレジット回避のための手段を講じる可能性は残る
・賛成票が多数となり、債権団に協力的な政権が誕生したとしても、政治的混乱は避けられず、デフォルトに至る可能性は極めて高い。
・次の債務返済(7月20日、ECBへの35億ユーロの返済)を履行するために、つなぎ融資が必至となる。

チプラス首相の捨身の戦術は、グレジットが現実のものとなるリスクを増しています。金融市場は、先週末の予想外の発表に対して否定的な反応を示した後、国民投票の結果を待ちつつ、新しい報道に一喜一憂している状況です。

賛成票が多数となっても、反対票が多数となってもギリシャ危機が短期間のうちに解決されるとは思われません。ギリシャ情勢は、当面、金融市場に影響を及ぼすものと考えます。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

当資料をご利用にあたっての注意事項等

●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。 ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

ページの先頭へ戻る