ギリシャ:徹夜の協議でも示されなかった最終決着 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ギリシャ:徹夜の協議でも示されなかった最終決着 新興国 欧州/ユーロ圏 ギリシャ

2015/07/15新興国

ポイント

2015年7月13日早朝、ユーロ圏首脳会議はギリシャへの支援協議を再開することで漸く合意しました。ただし、ギリシャ議会が15日までに財政改革案を法制化し、ドイツを含むユーロ加盟国議会での承認が条件です。ギリシャのユーロ離脱は当面、回避される見込みとはいえ、先行きは予断を許しません。

ユーロ圏緊急首脳会議:条件付きの合意

2015年7月12日夕刻に始まったユーロ圏緊急首脳会議は徹夜の協議となり、翌13日早朝、ギリシャに対する第3次支援を巡る協議を再開することで合意しました。

協議再開の条件として、ギリシャのチプラス首相は複数の財政改革案を法制化すると同時に、財務相会合(ユーログループ)の全ての提案についてギリシャ議会の承認を得なければなりません。第3次支援の正式な協議は、法案の成立が確認されて初めて再開されます。

欧州安定メカニズム(ESM)を活用した期間3年間の第3次支援は、総額で820-860億ユーロに達すると予想されます。この中には、銀行の資本増強に活用する資金のほか、正式な支援開始までのつなぎ融資も含まれます。ギリシャ政府が緊急に必要としているのは、期限の迫った返済資金(7月20日期限の約70億ユーロおよび8月中旬期限の約50億ユーロ)です。(図表1参照)


図表1:ギリシャの債務返済期限
(2015年7月~2015年12月)

出所:ピクテグループ

ギリシャ再建の工程表

ギリシャが第3次支援を確実に受けられるよう、ユーロ圏首脳陣は、ギリシャ政府が実行すべき工程表を策定しました。ギリシャには、財政改革案を法制化して「信頼を回復」することが求められています。

ユーログループが示した第一弾の施策は以下の通りです。

  • 税収を増やすために、付加価値税の税率を引き上げ税基盤を拡大する
  • 年金制度の長期的な持続性を高めるための改革を即時実行する
  • ギリシャ統計局(ELSTAT)の独立性を確保する
  • 歳出を半自動的に抑制することなどを含む財政改革を行い、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の目標からの乖離を是正する

第3次支援の正式な協議は、上記の施策に対するギリシャ議会の合意が得られるまでは開始されません。また、ギリシャ議会は、法制度ならびに銀行制度改革(欧州連合(EU)の民事訴訟法ならびに銀行再建・破綻処理指令の採用)に合意することも求められています。

加えて、年初以降の国内経済や財政の悪化に対応するため、先週自らが債権団に提出した(年金制度、製品市場、エネルギー市場、労働市場に関する)改革案の一段の強化に「真摯に取り組むこと」も約束しなければなりません。

さらに、ユーログループは、ギリシャ政府がIMFに対して2016年3月以降の支援延長を要請することも条件としています。

民営化ファンドの創設

ユーログループは、前述の様々な改革案に加え、ギリシャの国有資産500億ユーロを新たに創設する民営化ファンドに移管するよう求めています。ファンドに移管された資産は、民営化等の手段によって現金化され、その50%を銀行の資本増強に、25%を債務の返済に、残る25%をギリシャ経済のために再投資するとしています。ファンドは、ユーロ圏首脳の一部が主張したルクセンブルグではなく、ギリシャ国内に置かれます。

支援金の使途

820-860億ユーロに達するものと予想される支援総額のうち、100-250億ユーロは銀行の資本増強と資産管理費用に充てられることとなっていますが、うち100億ユーロは即刻必要とされる資金です。

また、6月29日に導入された資本規制は、当面継続されます。欧州中央銀行(ECB)は、緊急流動性支援(ELA)の上限を現行の890億ユーロに据え置くものと見られます。

一方、7月から8月にかけて期限が到来する、緊急を要する資金は、7月20日までに70億ユーロ(同日が支払期限となっているECBへの返済金、35億ユーロを含む)、8月中旬までに50億ユーロとなっており、対応については協議が継続されています。

債務再編の内容

ユーログループは、債務再編について、ギリシャの債務の持続可能性を高めるための用意があることを繰り返し明言しています。(2012年の第2次融資の際にも行われた)金利の支払い猶予期限の延長や満期の延長等は実現の可能性があると思われますが、債務元本の削減(ヘアカット)は行われないもようです。

ギリシャ議会の行方を注視

ユーログループが合意した工程表が、ギリシャ議会で法案が否決されるリスクには注意が必要です。ギリシャ議会で急進左派連合(SYRIZA)を率いるチプラス首相に対しては、連立内からの反発が予想されます。

先週金曜日の議会では、連立政府の提案に対し、既に弱体化した連立内から多数の反対票が投じられました。議会の定数は300議席となっていますが、EUの財政緊縮案に対する賛成票は251票となり、162議席を擁する連立与党については、SYRIZAに属する議員のうち、反対票を投じた議員、投票を棄権した議員、投票に欠席した議員の合計が17名となりました。したがって、7月15日が期限の今回の投票で、更に11名の連立与党議員が法案に反対票を投じることとなれば、与党は多数を獲得できず、野党の賛成票に頼らざるを得ない状況に追い込まれます。

もっとも、連立内から反対票が多数出たとしても否決される公算は低いと思われます。親EUの野党が、ギリシャのユーロ残留のためにはいかなる提案も受け入れる用意があると明言しているからです。とはいえ、今後の政局は混迷が予想され、年内の総選挙の可能性も否めません。

各国議会によるギリシャ支援の承認

債権団の求める改革案がギリシャ議会で法制化されたとしても、ギリシャに支援金が支払われるには、(金曜日に開催が予定されている)ドイツ議会の他、フランス、フィンランド、スロバキア等、ユーロ圏加盟国の議会での承認が必要です。また、ギリシャ支援プログラムがESMの承認を得るには、ユーロ圏19ヵ国財務相の全会一致が必要ですが、緊急を要する場合は85%の承認で支援を実行できると定められています。

ユーロ加盟国の中では、ドイツ、フィンランド、スロバキアの議会で、最も強い抵抗が予想されます。もっとも、ドイツのメルケル首相は、「ギリシャ議会がギリシャ支援プログラムを承認し、第一弾の施策を法制化しさえすれば、ドイツ連銀がギリシャ支援協議の再開を認めることは確信できる」と明言しています。ギリシャ支援を巡る合意を危機にさらす議会は無いと考えます。

ギリシャのユーロ圏離脱懸念は後退

ユーロ圏首脳会議が合意に至ったことで、ギリシャのユーロ離脱リスクは、当面、回避されたものと考えます。ギリシャ支援合意のニュースを受け、世界の金融市場は安堵の念を反映して上昇しました。とはいえ、最終的な決着に至るまでには、乗り越えなければならないハードルが幾つも残されています。

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