新興国株式、転換点に向けた変化の兆し | ピクテ投信投資顧問株式会社

新興国株式、転換点に向けた変化の兆し グローバル 新興国

2015/11/19新興国

ポイント

新興国株式はPBRでみると歴史的にみて割安水準にあり、投資家の投資比率は大きく引き下げられていると見られます。今後、米国の利上げ開始や中国経済への過度な懸念の解消、商品価格の底打ちなどによって、大きく反発する可能性があります。相場の転換点につながる可能性のある小さな変化も見え始めており、注目しています。

商品市況の長期トレンドからみる、底打ちの兆し

1971年に米ニクソン大統領(当時)が、ドルと金の交換停止(金本位・ドル固定為替制度廃止)を発表し(いわゆる、ニクソン・ショック)、1973年には日本をはじめ主要国が変動相場制へと移行しました。これにより各国の通貨発行の自由度は高くなり、時として、実体経済で必要となる以上の通貨が供給されうることとなりました。余剰資金が金融市場に出入りすることで価格形成にも影響を与える一因となり、商品価格の変動幅も大きくなった様子がうかがえます(図表1参照)。 足元の商品価格は、供給過剰・需要減少懸念などを受けて下落基調となっており、日本が変動相場制に移行した1973年2月末から足元(2015年10月末)までの間、仮に年率2%で上昇したとするライン(図表1の「年率2%上昇ライン」)に近い水準にまで下落しています。なお、この期間で商品価格が年率2%上昇ラインを下回った後、その後5年間の商品価格の騰落率をみるといずれもプラスで1度もマイナスにはなっていません(図表2参照)。

足元では、世界第2位の経済大国である中国の経済成長の減速懸念など、世界的な景気回復にいまひとつ力強さが見られない一方、主要国では利上げの時期を探る米国以外では、ユーロ圏や日本をはじめ世界的には金融緩和基調が続いています。大きく下落した商品市況の転換点を探る投資マネーがいずれの時点で商品市場に回帰する可能性もあると考えられます。 新興国には原油や鉱物など様々な資源を豊富に有する国が多く存在し、その経済や株式市場は商品市況に影響を受けやすい傾向が見られます。足元の商品市況の下落は特に新興国の商品関連セクター、ひいては新興国株式市場全体の株価の重石となってきました(図表3参照)。一方で、非商品関連セクターの株価は相対的に底堅く推移し、既にリーマン・ショック前のピークを上回っています。商品市況が底打ちした場合には、商品関連セクターの株価も大きく反発する可能性があり、新興国株式市場全体の上昇を後押しする可能性があると考えます。

 

 

【図表1、2】※年率2~5%上昇ラインは、1973年2月末を起点とし、年率で成長した場合のラインを示す(日本円が変動相場制に移行した1973年2月以降) ※図表1、2の商品価格は1994年1月まではContinuous Commodity指数を使用し、それ以降はCRB指数を接続して使用 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 【図表3】※新興国のうち商品関連セクターは、エネルギー、素材、資本財・サービスの3セクターについて、新興国のうち非商品関連セクターは、一般消費財・サービス、生活必需品、ヘルスケア、金融、情報技術、公益、電気通信サービスの7セクターについて、MSCI新興国各業種指数を使用し単純平均して算出※商品価格はCRB指数 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

※将来の市場環境の変動等により、記載の内容が変更される場合があります。

当ページの図表データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

 

新興国債券市場には変化の兆しも

2012年以降の新興国債券・株式市場の資金流出入の動向をみると、2012年9月からスタートした米国の量的金融緩和について、2013年5月に米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長(当時)が、縮小を示唆する発言をしたことなどを受けて、投資家のリスク回避の動きにより、新興国市場から資金を引き揚げる動きが強まりました。その後も米国の金融政策を巡る思惑や、地政学リスクの高まり、中国経済に対する懸念などを受けて投資家の投資心理が冷え込んだ局面では、新興国市場から資金流出の動きが大きくなりました。

直近では新興国債券市場で変化の兆しも見え始めた可能性があります。2015年10月時点では資金流出額が縮小し、新興国国債(米ドルベース)のパフォーマンスには改善の兆しが見えています。この背景には、投資家心理が徐々に改善し、リスク資産を買い戻す動きを始めた可能性もあることなどが考えられます(図表4参照)。

一般に、投資家心理が徐々に改善し、投資対象を広げる段階において、相対的にリスクの低い資産から、投資資金が流入しやすいという傾向があります。株式より債券へと先に投資資金が流入しやすく、債券市場の回復が株式市場より先行する可能性が高いと考えられます。実際に、過去20年間において、市場が大きく調整したいくつかの局面における新興国株式と新興国国債のパフォーマンスを比較すると(ここでは、①アジア通貨危機やロシア危機(1997~98年)、②リーマン・ショック(2008年))、いずれの局面でも、新興国国債が底打ちから回復に至るペースが新興国株式より速かったことがわかります(図表5参照)。

足元で新興国国債を含む新興国債券市場に回復の兆しが見られ始めるとすれば、新興国株式市場の回復へ一歩前進する可能性もあるため、こうした動向には注目しています。

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当ページの図表データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

新興国株式への投資意欲は過去3年半で最低水準~悪材料は織り込み済か

世界の機関投資家を対象としたメリルリンチ・ファンドマネージャー・サーベイによると、新興国株式に対する投資意欲は2015年半ば以降急速に冷え込み、足元では過去3年半で最低水準にあり(図表6参照) 、新興国株式の投資比率は大きく引き下げられている状態にあります。 この背景には米国の利上げによる影響や中国経済への先行き懸念、前述のような商品市況の低迷など様々な要因が考えられます。 ひとたび悪材料が払拭されていけば、世界の機関投資家が新興国株式を買い戻す動きを強めることも予想され、株価の反発につながるとも考えられます。

投資家の投資意欲が重要な鍵を握った例の一つとして、日本をみると、2012年10月には日本株式に対する世界の投資家の投資意欲は非常に低い状態にありましたが、2012年12月の衆議院総選挙を経て、自民党・安倍政権が誕生、その後、アベノミクスといわれる一連の経済政策が打ち出されたことにより、日本の経済再生への期待が高まりました。こうした期待を背景に、投資家の日本株への投資意欲が回復し、買い進められたことから、株価も大きく上昇しました(図表7参照)。

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新興国株式は割安水準

新興国株式市場は、足元の株価下落などの影響を受けて、バリュエーション(投資価値評価)水準は低下傾向にあります。当然ながら、収益性を基にしたバリュエーション指標である株価収益率(PER)も低下傾向が見られますが、中国をはじめ世界的な景気の先行きに不透明感が残る中で企業業績見通しは予想しにくくなっており、こうした環境下では低PERが必ずしも割安感につながらないこともあります。そこで、株価純資産倍率(PBR)に注目すると、2015年10月末時点における新興国株式の実績PBRは1.4倍と先進国株式の2.0倍を下回り、また、過去約20年間の平均(1.8倍)から-1標準偏差近辺の水準にあるなど、割安感が強まっていると考えられます(図表8参照)。 また、過去の実績では、PBRの水準とその後のリターンには高い関連性がみられ、実績PBRが低水準をつけた後には、良好なリターンを示してきました(図表9参照)。

新興国株式市場は、足元のPBR水準を考慮すると、中長期的な投資機会を迎えている可能性もあると考えられます。

新興国通貨にも歴史的な割安感

また、株式のバリュエーションのみならず、多くの新興国通貨は、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を考慮すると過小評価されている可能性があるとピクテでは考えています。 新興国通貨は過去3年間で見ると減価が際立っており、市場が米国の利上げを強く織り込み始めたと見られる2014年7月以降はさらに下落の勢いが加速しています。 過去の長期的な経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)などをもととしたピクテ独自の通貨評価モデルによれば、歴史的な対米ドルでの割安水準にあるとも考えられます(図表10参照)。 ここ最近、新興国における経済のファンダメンタルズは大きく改善傾向にあり、また、構造改革の進展によりよい方向への変化も今後期待されます。こうした中で、新興国通貨が今後、反発する可能性が高いと考えられます。もちろん、新興国通貨が過小評価される局面が今後もしばらくは続く可能性もゼロではありません。この場合にも、新興国経済にとって、通貨安は競争力の改善に資するという点ではプラスと考えられます。

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新興国株式のカタリストは?(1)FRBの利上げ(=米国の景気回復)

1990年から足元までで、米国の政策金利が大きく上昇に転じたのは、1994年以降と2004年以降の2回ありますが、いずれの局面でも、新興国通貨(対米ドル)は米国の利上げ局面で増価しました(図表11参照)。この背景には、新興国通貨は世界景気に対して敏感であり、米国の利上げの背景には景気回復があったため、新興国経済もこうした景気回復の恩恵を受けるとの見方が強まったことなどがあったと考えられます。 足元では米国の利上げ時期を巡って、利上げによって新興国市場から投資資金が引き揚げられるのではないかといった懸念などがあり、こうした懸念は新興国株式の株価の足かせとなってきましたが、ひとたび米国が利上げに踏み切り、その後、米国の景気回復の恩恵を享受できるとすれば、懸念は解消されていくと考えられます。

新興国株式のカタリストは?(2)中国経済のポジティブサプライズ

「投資」から「消費」主導の経済へと経済構造の転換期を迎える中で、中国の経済成長ペースは減速が見られていますが、これは経済のハードランディング(急減速)を意味するものではなく、経済構造の転換期を迎え、まさに「ニューノーマル(新常態)」の局面への移行過程であると考えられます。また、中国政府は2015年10月には長期的な経済の活力を阻害する高齢化、労働人口減少懸念という構造問題に対して1979年より続けられてきた「一人っ子政策」の完全撤廃を発表しました。こうした改革の進展もまた中長期的な経済構造の転換に寄与するものと期待されます。こうしたことから、今後も中国の持続可能なレベルで経済成長が続く可能性が高いと考えられます。 さらに、中国当局は景気の下振れリスクについては、大規模なものではないものの、景気刺激策を打ち出しており、経済のハードランディング回避を図っていると考えられます。2014年11月以降、中国は金融緩和基調へと舵を切っています。2015年10月23日には、過去1年間で6度目となる利下げを発表、預金準備率も再び引き下げ、景気の浮揚を図る一方、預金金利の上限の撤廃も決め、金利自由化を進めました。今後も景気浮揚に向けて一段の金融緩和の可能性もあると見られます。一連の金融緩和の効果は低迷していた不動産市場などの一部で回復が見られるなど、少しずつ出始めているとみられます。過去をみても、金融緩和を背景としたマネーサプライの増加は、追って経済成長率の浮揚に寄与してきました(図表12参照)。 財政刺激策についても、的を絞りながらも少しずつ打ち出されており、こうした政策効果から市場で懸念されるほど中国経済は悪化しない可能性もあると考えられます(図表13参照)。 また、国際通貨基金(IMF)は人民元を特別引き出し権(SDR)の構成通貨へ採用する方向を示しているほか、ここ最近で英国やドイツなどの欧州諸国が中国との経済関係強化を進めるなど、中国を取り巻く経済関連の動きが活発化しています。こうしたことからも、中国経済の今後の可能性には注目していくべきと考えます。

 

 

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新興国株式のカタリストは?(3)資源供給サイドで調整が始まる

商品価格の下落が長引けば、資源国の財政悪化につながる可能性があります。例えば、2015年10月末に発表されたIMFの報告書によると、原油価格の下落が長引く中で、サウジアラビアは政府が現在の政策を継続した場合、歳出維持に必要な金融資産が5年以内に尽きると指摘しています。こうした状況を受けて、今後、産油国は生産調整に踏み切る可能性もあると考えられます。仮に石油輸出国機構(OPEC)が減産に踏み切れば原油価格は大きく反発する可能性もあると考えられます。 また、英国のBP、米シェブロン、フランスのトタルなど欧米の石油大手企業においても、投資計画の圧縮や、資産売却の動きを加速させています。こうした動きは中長期的に供給力の削減となり、原油価格の上昇要因となると考えられます。

前述の通り、原油をはじめとした商品市況と新興国株式市場は連動性が高いことから、資源の供給サイドでの調整が始まり、商品市況が反発すれば、新興国株式の上昇にもつながると期待されます。

相場の転換点は後になってから認識される

中長期的にみれば新興国経済は先進国を上回る成長力を有しているとの見方には変化はないものの、2011年以降、足元までで新興国株式は先進国株式に対してアンダーパフォームしてきました。現状においても、新興国株式市場について悲観的な見方をする向きも多いとみられます。しかし、こうした悲観の中にも、少しずつ変化の兆しがみられはじめていると考えられます。今は小さな変化であっても、後にそれが相場の転換点のシグナルとなっていたと認識される可能性もあります。 新興国株式のバリュエーション水準はPBRでみると歴史的にみて割安水準にあることや、世界の機関投資家における新興国株式の投資比率は既に大きく引き下げられていることなどを勘案すると、米国の利上げの影響や中国経済に対する過度な悲観が後退したり、商品市況が底打ちした場合には、新興国株式市場は大きく反発する可能性が考えられます。「小さな変化」を見逃さず、市場動向を見ていく必要があると考えます。

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