国際通貨基金(IMF)の信任状を得た人民元 | ピクテ投信投資顧問株式会社

国際通貨基金(IMF)の信任状を得た人民元 グローバル 新興国 アジア 中国

2015/12/03新興国

ポイント

2015年11月30日、国際通貨基金(IMF)は、中国人民元を特別引出権(SDR)の準備通貨に採用することを正式に決定しました。悲願を果たした中国には、今後、一段の金融改革が求められます。また、中国人民銀行の金融緩和を維持するスタンスは緩やかな人民元安を促すだろうと見ています。

IMF、中国人民元をSDR構成通貨に採用

2015年11月30日、国際通貨基金(IMF)は、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円に加え、中国人民元を特別引出権(SDR)の5番目の構成通貨とすることを正式に決定しました。SDR通貨バスケットの新しい構成比率は、米ドルが41.73%(現行の比率は41.9%)、ユーロが30.93%(同37.4%)、中国人民元が10.92%、日本円が8.33%(同9.4%)、英ポンドは8.09%(同11.3%)となります(図表1参照)。IMFの採用基準は、世界の貿易決済に占める当該国の比率が50%(従来は60%)、当該通貨が各国中央銀行(中銀)の準備通貨に占める比率等の金融ファクターが50%(従来は40%)となっています。新しい通貨バスケット比率は2016年10月から適用されます。

SDRの役割

SDRは、加盟国の準備資産を補完するものとして国際通貨基金(IMF)が1969年に創設した国際準備資産です。当時の二大主要準備資産であった金と米ドルの供給懸念ならびに国際的な流動性懸念に対処するため創設されましたが、当初から関係者の全面的な賛同を得ていたというわけではありません。新しい準備資産の性格を巡って議論が戦わされ、「特別引出権(SpecialDrawingRight)」という含意の無い名称が選ばれました。なお、1971年のブレトンウッズ体制の崩壊により、流動性懸念が払しょくされたことから、SDRの役割が薄れたことには留意が必要です。実務上、SDRを保有するIMF加盟国は、SDRと引き換えにバスケット構成通貨を入手することができます。ただし、SDR建ての債券や派生商品(デリバティブ)があるわけではないため、バスケット構成通貨にこれといった特典があるわけではありません。また、世界の金融危機に対応してSDRの大幅増加(214億SDRから1,826億SDR)を認めた2009年を除き、IMFの主要出資国は、SDRを増やすことに消極的です。その結果、各国の中央銀行が有するSDRは、足元3%程度と低位に留まります。したがって、現在のSDRの主な役割は、IMFを含む国際機関の通貨単位にすぎません。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

SDR通貨と中銀準備通貨

SDRに採用されるための基準は、①IMF加盟国・地域が発行する通貨であること、②当該国・地域の輸出額が相対的に大きいこと、③IMFから「自由利用可能通貨」として認められることの3点です。ただし、自由利用可能通貨と認められるのに完全な変動性や兌換性を要求されるわけではありません。通貨は、貿易決済手段として、また、主要為替市場において広範に使われている限り、自由利用可能通貨と定義されるからです。また、通貨バスケットの構成比率が、中銀準備資産の構成に直接的な影響を及ぼすわけではないと理解しておくことも重要です。現行のSDR通貨バスケット構成比率は、英ポンドが11.3%、円が9.4%ですが、2015年9月末時点における各国中銀の準備資産に占める両通貨の比率は、前者が4.7%、後者が3.8%に過ぎません(図表2参照)。各国中銀は、様々な要素、とりわけ、債券市場における取引量や流動性の高さや、完全に近い兌換性を供えているか否かなどを勘案し、どの通貨を準備資産とするかを決定するからです。したがって、2016年10月から適用される新しい通貨バスケットに占める人民元の比率が10.92%だとしても、各国中銀の準備資産における人民元の比率はそれを下回ることが予想されます。仮に、中銀準備資産に占める人民元の比率が5年のうちに5%に達し、その時点での中国を除く中銀準備資産が8兆ドル程度だとすると、人民元に対する需要は年間800億ドル程度となりますが、これは中国の輸入業者が相手方に支払うために調達するドル、あるいは中国の輸出業者が受け取って売却するドルの月額とほぼ同額です。したがって2-3年の間は、人民元のSDR採用が為替レートに大きな影響を及ぼす可能性は低いと考えます。

SDR採用は、人民元の真の国際通貨への一里塚

人民元のSDR採用は、中国の目標が達成されたことと同義ではなく、長い道のりの一里塚を通過したに過ぎません。中国にとって重要な目標は、金融改革を続けること、また、海外投資家に対して、金融市場の一段の開放を続けることです。中国は、2015年7月、各国の中銀や金融機関、政府出資の投資ファンドに対し長期投資の制限を撤廃しました(その他の適格国外投資家については、引き続き、上限が設定されています)。また、中国人民銀行(中央銀行)は、翌8月、IMFの指摘に基づき、人民元の米ドルとの交換レートの目安として毎朝発表する「基準値」の算出方法を変更することにより、基準値と市場実勢の乖離を解消しました。更に、9月には中国財務省が史上初めて3ヵ月物割引国債の発行計画を発表しましたが、これはIMFのSDR金利に3ヵ月物金利が用いられていることに対応する施策だと思われます。IMFは、中国の一連の改革に一定の評価を与え、金融市場の一段の自由化を促すために、人民元をSDRに採用する必要があったものと思われます。中国が、これらの改革と平行して資本取引の完全自由化を進めれば、人民元は将来、主要な準備通貨になり得るものと思われます。とはいえ、中国には急ぐことなく堅実な歩みを続けることが求められます。

人民元のSDR採用の影響

前述の通り、人民元のSDR採用の短期的な影響は小さいと考えます。人民元が準備通貨としての信頼を得るには、国内金融市場の一段の発展と、より柔軟でかつ市場実勢に沿った為替レートが求められます。そのような観点からすると、中国人民銀行が、人民元の(貿易加重)実効レート・ベースでの大幅な減価を容認する公算は極めて低いと考えます。同行が切望する国内資本市場への外資の流入を損なうこととなりかねないからです。もっとも、インフレ率低下の抑制が必要とされる現在の状況では、人民銀の金融緩和スタンス維持が緩やかな人民元安を促すものと思われます。長期的には、SDR採用が人民元に対する信頼を増したことから、資本取引の自由化に向けた歩みが止まらない限り、人民元に対する需要が増すものと考えます。現在、世界の投資家が中国資産を大幅にアンダーウェイトする一方で、中国の投資家は海外資産を大幅にアンダーウェイトしています。資本取引のネットの増減を予測することは、中国が資本取引の完全自由化に向けて改革し続けるのと同じくらい困難です。

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