中国:政策頼みの金融市場 | ピクテ投信投資顧問株式会社

中国:政策頼みの金融市場 アジア 中国 新興国

2016/02/24新興国

ポイント

中国の2016年1月の銀行融資は急増し、足元の人民元の動向に落ち着きも戻りつつあるなど、当局の対応が市場の安定に一役買った状況です。しかし、過度の信用供与は、不良債権の拡大を懸念させることや、人民元の変動が高まる可能性もあり、中国経済の先行きが世界市場のボラティリティの震源となる状況は当面続きそうです。

1月の銀行融資は急増

2016年1月の中国の融資総額が過去最大規模に膨らんだ背景として、政府当局が、成長支援のための追加刺激策を行う用意があることを示唆した可能性があります。人民元が落ち着きを取り戻したことや、金融市場混乱時の対応の不手際を当局が認めたことも好材料です。中国経済の先行き懸念は一時的には和らいだかもしれませんが、持続的な成長を維持するため、過度の信用の拡大に依存する状況は、将来に問題を先送りする可能性も考えられます。

成長支援のための信用の拡大

2016年1月の中国の融資総額は過去最高の3.42兆元(約5,200億ドル)となり、2015年12月の1.82兆元、市場予想の2.2兆元をいずれも上回りました(図表1参照)。また、国内銀行による人民元建て融資も過去最高の2.5兆元となり、市場予想の1.9兆元を上回りました。

1月の銀行融資の増加は季節要因として市場にも織り込まれていました。中国の銀行には、暦年の新規融資割り当て額が決まるとこれを前倒しで実行する傾向が見られ、1月については特にその傾向が強いからです。また、春節(旧暦の新年)が2015年と比べて11日早かったことも、融資の拡大に拍車をかける結果となりました。とはいえ、1月の融資の拡大幅は、事前予想を遥かに上回るものでした。中国企業の外貨建て債務(融資)の圧縮が人民元安をもたらすのではとの懸念が浮上していましたが、当該融資の削減は僅か1,720億元に留まりました。

中国当局は、国内経済支援のため、追加の経済刺激策を打つものと思われます。2015年10-12月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比+6.8%と四半期ベースでは2009年以来最も低い伸びに留まり、通年ベースでも前年比+6.9%に留まっています。

当局は、2016年の成長率目標を6.5-7.0%の範囲としています。製造業セクターの不振が続く状況で、1月の銀行融資が急増したことは、成長目標の達成に向けた当局、とりわけ、2017年の中国共産党全国代表大会で立場を固めたい習近平国家主席の断固とした決意を示すものと思われます。中国経済の減速を巡る市場の懸念が残る環境では、明るい材料です。

人民元の安定

市場では、元安を巡る懸念が強まっていましたが、直近の当局の対応は、先行きを期待させるものとなっています。中国人民銀行(PBOC、中央銀行)が(春節明けの)2月15日、対ドル基準値を春節前の基準値比0.3%と元高方向に設定したことから、スポット・レートは1%元高の1ドル=6.49元と、年初来最も高い水準を回復しました。

足元のドル安を勘案すると、人民元の安定に必要な対応に過ぎなかったとはいえ、中国人民銀行が現時点での一段の元安を望んでいないことを伝える重要なシグナルであったとも考えられます。金融当局は元安を歓迎したいところですが、2015年8月および12月ならびに2016年1月の元安は、いずれも、中国からの資本流出を加速させ、世界の株式市場を混乱させるという、望ましくない状況を生み出しました。一方、米ドル高の環境で(通貨バスケットに対する)人民元の安定を維持するには、対ドルでの元安が必要となると思われます。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

証券当局、監督不備を認める

金融当局が、市場対応に不手際があったことを公に認めたことも、先行きを期待させます。(2016年1月、株式市場の暴落回避のためとして、準備が十分に整わないまま導入され、数日後には撤回を余儀なくされた「サーキット・ブレーカー」 等)金融政策の不備や、(元安に際しての)市場との稚拙な対話が、月間の市場の混乱を一段と悪化させたことに対し、中国証券監督管理委員会(CSRC)と中国人民銀行に非難が殺到しました。李克強首相は、2月15日、1月の市場の混乱について、「監督当局の対応には不手際があり、内部統制の問題もあった」とコメントすると同時に、市場介入が正当なものであったことを強調しています。中国では、政策の不備を巡る議論が公にされることは極めて異例で、当局が経験から教訓を得たこと、また、市場の安定を確保したいとの意向を示したものと見ています。

信用拡大の効果は一時的であり、将来に禍根を残す

経済への信用供与の拡大は、短期的に、経済成長の押し上げが期待されます。当局の経済浮揚策は、政府の成長率目標達成のために必要とされる「ストップ・アンド・ゴー政策」 (景気拡張策と景気抑制策を交互に繰り返す「開放・調整政策」)の一環と思われます。

一方、信用の過度の伸びは、消費主導型経済への過渡期にある国内経済の均衡を更に崩すことにもなりかねません。中国の1月の信用の伸びは、2009年以降連続で名目GDP成長率を上回っています。新規借入を伴う景気刺激策は、ミンスキー・モーメント(信用によって膨らみきった資産価格の急落)発生のリスクを増すこととなります。数年後には、資産価格の突然かつ大幅な調整が発生する可能性も否めません。

中国の資産価格の調整リスクを巡る分析が散見されますが、近い将来の調整の可能性は低いと思われます。銀行セクターならびに規模の大きいシャドーバンキング・セクターの損失計上が懸念されることは確かですが、足元の流動性は潤沢であり、資本再編が喫緊の課題となる見込みは低いと思われます。また、中国のGDP比の政府債務残高は40%と、先進国平均の100%を大きく下回ることにも示唆される通り、公表されたデータからは当局の政策裁量には十分な余地が残されていると考えられます。

足元の株式市場では、政策頼みの状況が続いています。上海総合指数が、2月16日、前日比+3.3%と、年初来最大の上昇を記録したのも政策期待が主な背景です。ただし、市場には懸念材料もあります。たとえば、不良債権の分類と延滞債権引当金の厳格化を定める新しい規則が、銀行セクターの健全化を損なうことになるのではとの不安感が見られます。足元、明るいニュ ースも散見されますが、中国経済の先行き懸念が世界市場のボラティリティの震源となる状況は当面続きそうです。

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