新興国バリュー株式に復活の兆し | ピクテ投信投資顧問株式会社

新興国バリュー株式に復活の兆し 新興国 新興国株式 グローバル

2016/04/06新興国

ポイント

新興国株式のパフォーマンスは、2015年2月までの過去5年で年率5%超のマイナス(米ドルベース)となりました。しかし、バリュエーション水準に目を向ければ、新興国のバリュー株式に投資妙味があると考えます。新興国バリュー株式は、資産分散を徹底したポートフォリオにおけるリターンの源泉としての地位を取り戻す可能性があると見ています。

概要

新興国株式は、2008年の金融危機直後には上昇基調を辿り、資産分散を徹底したポートフォリオにおける投資リターンを高める資産だと見なされていました。

しかし2011年以降は、米ドル高の進行などを背景に5年連続の下げを記録しています。現在、新興国株式は、先進国株式に大きく出遅れており、投資家のポートフォリオに占める比率は過去最低水準に低下しています。

しかしながら、新興国株式は、もはや戦略投資に必須の資産クラスとはいえない、という結論を下すのは性急過ぎると思われます。新興国株式の足元のバリュエーションは、新興国の潜在成長力を反映していないと見られるからです。

ドル高の修正や世界貿易の回復に伴い、新興国企業を取り巻く事業環境は改善することが予想されます。また、長期的な観点では、インフラ投資と構造改革が新興国企業の利益成長と利益率の改善に寄与すると期待されます。

このような恩恵を最も享受すると予想されるのは、ここ数年、長期の利益見通しが不当に過小評価されてきた新興国のバリュー株式だと考えます。

新興国株式下げ相場の背景

2010年以降、新興国株式のリターンは先進国株式のリターンを大きく下回っており、パフォーマンス格差は開く一方でした(図表1参照)。これには(1)~(6)の理由が考えられます。

(1) 投資家の選好シフト

2010年に、中国が第12次5ヵ年計画で消費主導型経済への転換を宣言し、世界の貿易量が減少し始めたことから、新興国経済に危険信号が灯り始めました。

この年を境に、新興国経済と先進国経済間の成長格差が縮小し始め、新興国株式投資は、主要テーマの一つを損なうことになりました。

新興国から先進国への投資家の選好シフトは、株式市場からも確認されます。2010年年初、新興国株式の株価純資産倍率(PBR)は先進国のPBRを上回っていましたが、新興国経済の伸び悩みが企業収益の悪化をもたらすにつれ、これが逆転し、その後も格差は広がる一方です(図表2参照)。

(2) バーナンキ・ショック 2013年には、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長(当時)が、量的緩和縮小の可能性に言及し、市場に衝撃を与えたことが引き金となり、新興国株式市場は大きく下落しました。新興国株式市場の動揺は、新興国通貨にも波及しました。

(3) 海外投資家の動向 米ドルの持続的な上昇によって、新興国経済の構造的なぜい弱性が露ていしました。多くの新興国市場は、海外投資家の動向に翻弄される状況です。新興国市場は、国内の投資家基盤が著しくぜい弱であるため、市場の緊張が高まる局面では、海外資金の流出が振れを増幅させます。

(4) 経済の多様性の欠如 新興国経済が、先進国経済に比べて多様性に欠けることも一因です。このことを最も顕著に表しているのが、輸出品の構成です。新興国の輸出統計から確認されるのは、新興国の輸出品目が先進国のそれを平均50%程度下回り、一部の製品に偏っていることです。このような経済の不均衡が、市場の混乱時に、新興国の経常収支に負の影響を及ぼします。

(5) 過剰な米ドル建て債務 米ドル高による新興国企業の債務の増加も懸念材料です。銀行規制の強化に伴って銀行借入が難しくなったことから、新興国企業は資本市場での資金調達を増やしており、ドル建て新興国社債の残高は過去最高水準に膨れ上がっています。国際通貨基金(IMF)の調べによると、金融セクターを除いた新興国企業のドル建て債務は、2003年の2,000億ドル以下から、足元では2兆ドル程度に増加しています。今後も米ドル高が続けば新興国企業は利払いに支障をきたすのではないかとの懸念が強まっています。

(6) 一貫性に欠ける政策 最近では、不透明さを増している中国の政策も懸念材料の一つとなっています。

投資環境は、過去に比べてより安定的になっている

短期間のうちに新興国株式市場が下落するなか、多くの新興国では、機動的な為替制度を採用し従来よりも柔軟な対応を可能としていることから、本格的な危機が発生する確率は大幅に減少していると考えます。

外貨準備も、数年をかけて大きく積み上がっており、短期債務に対する外貨準備の倍率は、1990年代の水準をはるかに上回っています。例えばブラジルの外貨準備は、1998年には短期債務の2倍にすぎませんでしたが、足元では10倍となっています。

また、FRBの利上げの影響が懸念されていますが、矢継ぎ早の利上げが行われる公算は小さいと考えます。

2000年代初めのような新興国株式市場の急激な拡大は見込めないにしても、1980年代後半から1990年代初めにかけての危機的状況が再来する公算は小さいと考えます。

こうしたことから、過去に比べて上昇ペースは緩やかになる可能性が高いと考えられますが、新興国株式には十分回復が期待でき、過度に危機的な状況を懸念する必要は無いと考えます。

危機的状況が回避されることを前提とすれば、新興国市場のバリュエーションが企業ファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映していないことは明らかです。

新興国株式のPBRは、先進国のPBRを大きく下回っており、乖離幅は10数年ぶりの水準に達していますが、以下に詳述する4つの理由から、格差は縮小すると見ています。

1:企業利益の回復

新興国企業の1株あたり利益は、4年前に天井を付けた後は低調な推移となっています。2008-2009年のリーマン・ショックや1997年のアジア危機の直後の時期と比べると、利益の落ち込みの局面が長期化しています。 ただし今後は、世界貿易の回復がきっかけの一つとなり、近いうちに反転することが予想されます。 数量ベースの輸出入の伸びは、ここ4年を通じて平均以下で推移しており、足元では僅か年率+3%と、1998-2003年平均の年率+6%から半減していました。しかし、米国の景気回復が鮮明となり、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など多数の地域貿易協定が締結されたことを勘案すると、貿易量が回復に転じる環境は整いつつあると見られます。世界貿易機関(WTO)は、 2016年の世界の貿易見通しを前年比+4%としています。新興国企業は、先進国企業に対して生産性優位を維持することが予想され、貿易の改善は、新興国企業の利益率改善に資することが期待されます。

2:ドル高の修正

ここ3年の持続的なドル高は、新興国市場の強い下押し圧力となってきました。ドル高は、多くの新興国の主要輸出品である資源の価格下落をもたらしただけでなく、過去最高水準のドル建て債務を抱える新興国企業の利払いコストを押し上げてきました。 しかし、米ドルは割高感が強まっていると考えられます。ピクテの試算では、新興国通貨は、ドルに対して30%程度割安です(図表3参照)。 米ドルが新興国資産に及ぼす影響を過小評価するべきではありません。米ドル安は、資源価格の上昇につながり、資源国に利益をもたらします。また、投資家のリスク選好を強める傾向もあります。このことは、新興国株式に対する投資家心理が極端に冷え込む局面では、特に重要だと考えます。

3:構造改革の進展

新興国は、2000年代初めの好況期に構造改革に対する意欲を失っていました。1997年のアジア危機以降、景気拡大局面にもかかわらず、新興国の構造改革には殆ど進捗が見られませんでした。貿易の自由化と制度改革は、先進国向け輸出の増加に伴って優先事項リストから外れ、低金利と資源市場の活況が改革の勢いを削ぐ結果となりました。 一方、景気低迷期には、構造改革が自ずと政策立案の優先課題となる傾向が、新興国の歴史から確認されます。インドと中国はいずれも国内経済の阻害要因を正しく分析しており、他の新興国についても同様の分析がなされることが期待されます。 主要新興国の大半は、2013年から2014年にかけて、経済協力開発機構(OECD)が推奨した改革の40%程度を実行したに過ぎません。この数値が僅かに改善するだけで、新興国経済の長期展望には大きな改善が期待できると考えます。

4:インフラ整備

新興国経済の将来は、インフラ関連支出の増額によっても改善可能だと考えます。 経済的生産性の改善にはインフラの改善が必須です。世界銀行は、最近公表した報告書の中で、多くの新興国、発展途上国で清潔な水と電力が不足していることを指摘しています(図表4参照)。通信網や鉄道網も先進国の基準に達していません。インフラ投資は、短期的にも長期的にも、新興国経済に大きな恩恵をもたらします。 新興国は、景気循環調整ベースの財政赤字がGDP (国内総生産)比2%と、過去平均の2.5%を下回っており、財政支出の増額を可能とする余力があります。 国内のインフラ投資だけでなく、世界のインフラ投資の恩恵も期待されます。先進国のインフラ設備は老朽化が進んでいます。2007年から2012年にかけての先進国のインフラ投資はGDP比2.5%に留まり、必要とされた同3.5%を下回ったという調査結果も出ています。先進国でインフラ設備の更新が進めば、素材需要が拡大し、資源国が恩恵に与ることになります。

バリュー株式は新興国株式市場のスイート・スポット

新興国株式市場は2011年以降、先進国株式市場に出遅れており、2つの資産クラス間のバリュエーション格差は極端に広がり、新興国株式の相対的な割安感が高まっています。 新興国株式の中でも、優れた実績を有するバリュー株式がとりわけ注目されます。 バリュー株式は、過去5年、グロース株式に大きく出遅れています(図表5参照)。2016年3月末時点でバリュー株式のPBRはグロース株式のPBRを59%下回り、2003年以来の割安水準で推移しています(図表6参照)。 ピクテ独自のバリュエーション分析モデルであるピクテ・バリューによると、多くの新興国企業の企業価値(EV)が資産の取替コストを下回っていることを示しています。鉄鋼セクターでは企業価値が取替コストを50%下回り、2003年1月ならびに2009年1月以来の水準に沈んでいますが、このような状況は、過去の例に照らすと、長期的かつ持続的な上昇相場が展開される前触れだと考えられます。

新興国バリュー株式に投資妙味

株式投資におけるバリュー効果の持続性を説明するにはいくつかの要因があると考えられます。 低バリュエーション銘柄は相対的に価格変動リスクが大きい傾向があることを示すに過ぎないアノマリー(理論では説明できない経験則)だ、という意見もあります。しかし、これを過去データで説明することは非常に難しいと言わざるをえません。その一方で、バリュー株式はグロース株式に比べて価格変動リスクが低いということを示すデータは数多く存在します。 バリュー効果の最も説得力ある説明の一つは、人間の投資判断の非合理性に起因するという説です。 投資家は過去の投資リターンに基づいて遠い将来を予想します。利益の伸び率が一貫して予想を上回ってきた企業の株式は、投資家の過度の需要を集め、このことが、バリュエーションの(平均からの)顕著な乖離を生み出すのです。「魅力的な企業」の株式のPERは、利益の伸びが緩やかな企業と比べて、相対的に上昇ペースが速くなりがちです。このように、市場参加者は「魅力的な企業」の利益見通しを楽観し過ぎる一方で、利益の伸びが緩やかな企業の先行きを悲観し過ぎているため、バリュー株式に投資機会が生まれます。 新興国株式市場では、こうした傾向がとりわけ顕著です。新興国経済は、景気循環の面でも、投資資金のフロー(流出入)の面でも、先進国以上に振れが大きいからです。 また、新興国株式が、グロース株式志向の投資家を先進国株式以上に惹きつけることも一因です。さらに、新興国市場が先進国市場に比べてアナリストのカバレッジに欠けることも相俟って、新興国株式は価格の歪みが大きいのです。 これらの要因は、新興国バリュー株式が先進国株式のパフォーマンスを上回る可能性を示唆していると考えます。

まとめ

新興国株式市場は、2008年の金融危機直後の時期には上昇基調を辿り、先進国株式とは異なる特性を持つことから、資産分散を徹底したポートフォリオの投資リターンを高める資産だと見なされていました。 2011年以降は、中国経済の減速やアジアならびにラテン・アメリカ諸国の輸出を下押す米ドル高の進行を背景に、新興国株式市場は5年連続の下げを記録しています。 現在、新興国株式は、先進国株式に大きく出遅れており、投資家のポートフォリオに占める比率は過去最低水準に低下しています。 しかしながら、新興国株式は、もはや戦略投資に必須の資産クラスとはいえない、という結論を下すのは性急過ぎると思われます。新興国株式の足元のバリュエーションは、新興国の潜在成長率を反映していないと見られるからです。 ドル高の修正や世界貿易の回復に伴って、新興国企業を取り巻く事業環境は着実に改善することが予想されます。また、長期的な観点からすると、インフラ投資と構造改革が、新興国企業の利益成長と利益率の改善に資することも期待されます。 このような恩恵を最も享受すると予想されるのは、ここ数年、長期の利益見通しが不当に過小評価されてきた、新興国のバリュー株式だと考えます。世界経済が改善に転じた際に、新興国株式投資戦略のなかで最初に回復するのはバリュー株式だと考えます。

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