新興国市場モニター:米国トランプ政権の保護主義的な通商政策による打撃を考察する | ピクテ投信投資顧問株式会社

新興国市場モニター:米国トランプ政権の保護主義的な通商政策による打撃を考察する 新興国 北米

2018/02/27新興国

 

パトリック・ツヴァイフェル(チーフエコノミスト)

 

ご参考資料

ポイント

本稿では、トランプ米大統領が選挙公約である保護主義政策を実行に移しつつある状況下、どの新興国が最も大きな打撃を受ける可能性があるかについて考えます。
2018年1月22日、トランプ米大統領は、明らかに中国を標的として、ソーラーパネルおよび洗濯機に高率の輸入関税を賦課する緊急輸入制限(セーフガード)を発動しました。
このことは、通商政策の強化を巡る選挙公約を果たすとの大統領の意志(コミットメント)を示すものであり、中国に限らず他の新興国にも被害が及ぶ可能性があると考えます。

 

図表1 トランプ米大統領は就任以来、いくつもの貿易に関する措置を表明

2018年2月時点

米国の全輸入品目にかかる関税の単純平均値は約3.5%(図表4ご参照)

出所:ピクテ・アセット・マネジメント、各種報道資料、米国商務省

 

中国が最も大きな打撃を受けるか?

名目ベースでみた米国の最大の貿易赤字相手国は中国本土(3,750億ドルの赤字)(注1)ですが、巨大な中国経済全体に占める対米輸出の割合はGDP(国内総生産)比でみると僅か3.6%に過ぎません。図表2が示している通り、米国の輸入関税の税率が引き上げられた場合には、メキシコ等、他の新興国が遥かに大きなリスクにさらされる可能性が高いと思われます。
もっとも、ピクテでは、グローバル・バリューチェーン(世界規模の価値連鎖)に組み込まれた国の経済を分析することで、状況の本質をよりよく見抜くことができると考えます。図表3は、製造活動の過程を通じ、各国間で交易される全てのモノの移動状況を表わしています。
この手法で測ると、グローバル・バリューチェーンに組み込まれている輸出の比率が最も高いのは台湾(67%)で、欧州新興国がこれに続き、台湾以外のアジア各国も上位を占めています。一方、中国は図表のほぼ中央に位置しており、(下位に位置する)ラテン・アメリカに及ぶ影響は最も小さいということになります(注2)。

 

図表2 米国への輸出が各国のGDPに占める割合

2018年2月時点

出所:ピクテ・アセット・マネジメント、CEIC、トムソン・ロイター・データストリーム

 

図表3 グローバル・バリューチェーン参加率~グローバル化が進んでいる経済ほど、複数国に対する関税措置の影響が大きくなると予想される

2018年2月時点

出所:ピクテ・アセット・マネジメント、CEIC、トムソン・ロイター・データストリーム

※自国の輸出品に使用された輸入品の付加価値(川下への参加)と、他国が輸出品に使用するための自国からの輸出品の付加価値(川上への参加)の合計値を算出

 

トランプ政権の通商政策が一段と強化される可能性はどれくらいあるか?

トランプ政権の通商政策が一段と強化される可能性はかなり高いと考えます。議会の承認が必要となる税や移民に関するその他の保護主義的な経済政策と比べ、トランプ大統領は、通商政策により大きな裁量を有しており、輸入関税や輸入割当の賦課を決める権限があるからです。 トランプ大統領の支持者は、それが妥当であるかどうかは別として、米国の製造業セクターが主導権を失った原因が、中国およびその他主要貿易相手国との不当な競争にあると考えています(注3)。また、図表4に示される通り、米国の輸入関税は、世界貿易機関(WTO)加盟国と比べて相対的に税率が低いという事実を認識しておく必要があります。換言すると、税率引き上げの余地が残されているということになります。

 

図表4 各国の輸入関税の単純平均~米国の輸入関税率は他国を大きく下回る水準

2018年2月時点

出所:ピクテ・アセット・マネジメント、CEIC、トムソン・ロイター・データストリーム

 

先行きをどう予測するか?

トランプ大統領が二国間協定を好んでいることを勘案すると、図表5の選択肢1および選択肢2が継続される可能性が最も高いと思われますが、このような状況で最もリスクが高いのは、GDP比の輸出先比率で米国の比率が最も高い新興国、とりわけ、メキシコ、ベトナム、香港であるとみています(図表2ご参照)。 一方、可能性はかなり低いものの、選択肢3あるいは選択肢4が現実となった場合には、グローバル・バリューチェーンへの参加比率が最も高い新興国のリスクが最も高く、台湾を筆頭にハンガリーとチェコが僅差で続くと考えます(図表4ご参照)。

 

図表5 米トランプ大統領は政策の選択肢を4つ持っており、それぞれが国際貿易に対して異なる影響力を持つ

2018年2月時点

 

出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

ピクテ新興国株式運用チームの見方
ープラシャント・コタリ(シニア・インベストメント・マネジャー)

上述の(パトリックの)分析の通り、インドに、米国の通商政策強化の大きな影響が及ぶリスクは高くないと考えます。
とはいえ、特定の業種セクターが他のセクターより大きなリスクに晒されていることは確かであり、情報技術(IT)サービス・セクターについては、米国の保護主義的施策が懸念されて否定的な報道が数多くなされました。
インドのITサービス・セクターを取り巻く環境が厳しいことは疑いようがありませんが、一方、当セクターは幅広い売上の源泉を有することから、機敏な対策を講じることのできるセクターであると考えます。2016年第4四半期以降、欧州(の需要増)を源泉とした売上の伸びは顕著です。このようなトレンドは今後も力強さを増し、米州を源泉とした売上の伸びを上回って、米国の輸入関税強化による打撃を相殺し得ると考えます。
ITサービス・セクターが事業戦略を修正する能力を有することも重要な鍵だと考えます。このことは、インド企業の米国法人における現地雇用比率の引上げを通じて確認されると同時に、インド経済そのものの活性化、すなわち、業務の海外移転を通じても確認することが可能です。
したがって、インドのITサービス・セクターの先行きに対する懸念は正当化されないと考えます。

 

注1 出所:ピクテ・アセット・マネジメント、CEIC、トムソン・ロイター・データストリーム;2017年の対米貿易赤字
注2  このグラフでは、台湾が輸出品を作るために輸入した品目(川下への参加)および、他国の輸出品に使用される目的で台湾から輸出された品目(川上への参加)の両方を含んでいます。
注3 米国の雇用全体に占める製造業の割合は、第二次世界大戦終了以降、構造的な下落傾向にあります(出所:ピクテ・アセット・マネジメント)。米国では1995年以降、製造業での雇用は500万人減少しています(出所:米国労働省労働統計局)。

 

(※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内 容が変更される場合があります。)

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