新興国市場モニター:ロシアが米国の経済制裁を見くびる4つの理由 | ピクテ投信投資顧問株式会社

新興国市場モニター:ロシアが米国の経済制裁を見くびる4つの理由

2018/05/29新興国

ポイント

米国のトランプ政権は、2018年3月以降立て続けにロシアに対する経済制裁を発動しました。しかし、今回は2014年の対ロシア経済制裁のときほどの影響を与える公算は低いため、ロシア投資の魅力は増していると考えられます。本稿では、ロシアが経済制裁を無視できる4つの理由について検証します。

 

理由1:原油価格と通貨ルーブルのデカップリング(非連動)

米国は、2014年、原油価格と通貨ルーブルがともに下落する環境で、ロシアに対する経済制裁を発動しましたが、今回の制裁は、ルーブルが下落する一方で原油価格が上昇し、両者間の連動性が薄れる(デカップリング)という異例の状況下で発動されました(図表1参照)。

 

図表1:原油価格とロシアルーブル(対ドル)

 

底堅い世界の原油需要と石油輸出国機構(OPEC)による協調減産の延長が、原油価格を押し上げています。この間、既に割安感の際立っていたルーブルは新たな経済制裁に対するショックを受けて売られましたが、4月の下落率は対米ドルでは6.2%に達したものの、名目実効為替ベースでは僅か0.3%に留まりました。

 

理由2:インフレ圧力の沈静化

ロシアのインフレ圧力は短期的には強まったものの、今年末から2019年初めにかけて収束することが予想されます(図表2参照)。

 

図表2:ロシアのコア・インフレ率とインフレ圧力

 

インフレ圧力は緩やかではあっても金融政策に影響を及ぼす可能性が高いことから、足元の利下げ局面は一時停止の状態にあり、年内の利下げ余地が限定されることを示唆しています。

ロシアの足元の政策金利は7.25%と、ピクテの予想する適正水準(価値)にほぼ一致しています(図表3参照)。家計のインフレ期待を低下させる必要性を考慮すると、年内の利下げ余地は限定的です。ロシア中銀が3月に行った最新の世論調査によると、家計のインフレ期待は7.8%と中銀目標を上回る水準に留まっており、経済制裁によって更に上昇する可能性も考えられます。

 

図表3:ロシアの政策金利と、ピクテが考える適正水準

 

理由3:堅調な国内経済

図表4に示される通り、ロシアの政府債務の状況は極めて健全です。ロシアは他国に対して純債権国であり巨額の黒字を抱える経常収支黒字国でもあることから、経済制裁の影響を十分に吸収することが可能です。

 

図表4:ロシアの公的債務比率(対GDP比)

 

ピクテの景気先行指数も、エネルギー・セクターをけん引役とし、労働市場や鉱工業生産の改善を追い風としたGDP(国内総生産)の高い伸びを示唆しています(図表5参照)。

 

図表5:ピクテ独自モデルによるロシアの景気先行指数

 

理由4:FIFAワールドカップの経済効果

6月にロシアで開催されるサッカー・ワールドカップも、消費の喚起を促すことで経済制裁の影響を軽減すると思われます。

 

図表6:2018年サッカーW杯ロシア大会の経済効果

*GDPへの寄与の大部分が大会前4年間に集中すると考えられる

 

ロシア社債のスプレッド:経済制裁開始後の拡大はわずかにとどまる

カレン・ラム(シニア・クライアント・ポートフォリオマネジャー)
良好なロシアの状況は社債市場でも確認出来ます。JPモルガンCEMBIブロード・ディバーシファイド・ロシア指数で測った利回りスプレッド(ロシア社債と米国国債との利回り格差)は、制裁の発表以降、僅か60ベーシス・ポイント(0.60%)程度、拡大したに過ぎません(図表7参照)。

外貨建てロシア債価格が足元の水準から大幅に下落することはないように思われます。当初のパニック状態は収束した感があることに加え、市場規模が相対的に小さく、かつ、縮小傾向にあり、新規発行も限定的だからです。実際のところ、米国投資家の投げ売り分は国内投資家の需要が全て吸収し、市場を支えると思われます。

 

図表7:ロシア社債スプレッド指数の推移

 

重要なのは株式リスクプレミアム

ヒューゴ・ベイン(シニア・インベストメントマネジャー)
クリストファー・バノン (シニア・インベストメントマネジャー)
ロシア政府が米国の(今回の)制裁に立ち向かう強い姿勢を示しているのと同様に、ロシア企業も回復力を発揮しています。ロシア企業は、ここ数年、欧米資本に依存する状況の見直しを余儀なくされてきましたが、このような傾向は今後しばらく続きそうです。もっとも、多数の企業は負債を完済しています。

 

図表8:ロシア企業の配当利回り

 

配当の支払いは継続されると考えますが、一部企業の配当は過去に例のない水準に達しています。図表8の通り、ロシア企業の配当利回りは過去最高水準に達しています。2015年のクリミア危機時とは異なり、内需型企業、輸出型企業ともに高水準の配当利回りを提供しており、ロシア市場全体が魅力的です。

 

図表9:ロシア株式のリスクプレミアム

 

ロシアに対する経済制裁は「ピーク」に達している可能性があることから、ロシア株式のリスクプレミアムがわずかでも縮小するならば、世界の他市場を大きく上回る投資収益が期待できそうです(図表9参照)。

 

ショックに最もぜい弱な市場を見極める

パトリック・ツバイフェル(チーフ・エコノミスト)
ショックに最もぜい弱な市場を見極める簡単な方法は、経常赤字の水準(リスク指標)と平均実質金利(リターン指標)を用いて外貨建ての資金調達ニーズを見ることですが、図表10が示唆する通り、新興国市場の状況は多種多様でありながら豊富な投資の好機が提供されています。

 

図表10:主な新興国の経常収支(横軸、リスク指標)と実質金利(縦軸、リターン指標)

 

(過剰債務、基軸通貨建て債務、外貨準備など)10のリスク要因を見ると、アルゼンチン、トルコ、コロンビア、南アフリカは危機に瀕していると言えそうです。事実、アルゼンチンは通貨防衛のため、1週間のうちに政策金利を12.75%引き上げて40%としたばかりです。

新興国の中でも規模の大きいBRIIC(ブラジル、ロシア、インド、インドネシア、中国)各国のぜい弱性が、2013年の状況から大きく改善されたように見えることには留意が必要でしょう。

 

(※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内 容が変更される場合があります。)

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