「リスク」により敏感となる中での新興国株式投資 | ピクテ投信投資顧問株式会社

「リスク」により敏感となる中での新興国株式投資 新興国

2018/06/05新興国

ポイント

新興国株式市場は足元、特に、経済のファンダメンタルズが比較的ぜい弱とみられる国の株式・通貨の下落率が大きく なっています。当面は、各国の経済政策・政治動向には注視すべき展開が続くと考えられますが、堅調な企業業績見 通しや魅力的なバリュエーション水準は株価の下支えとなるでしょう。こうした環境下では、特に広く分散投資を行うこと が重要と考えます。

 

経済のファンダメンタルズがぜい弱な国が 特に大きくマイナスの影響を受ける

新興国株式市場は、2018年1月に直近の高値をつけて 以降、上下を繰り返しながらも下落基調となっています。

この背景には、米トランプ政権による保護主義的な通商政 策により世界的な貿易戦争に対する懸念や、米国の長期 金利・米ドル上昇などを受けた借り入れ負担増や輸入イン フレ懸念などの高まり、地政学リスクの高まりなどにより投 資家のリスク回避の動きなどがありました。

こうした中でも、特に、経済のファンダメンタルズ(基礎的 条件)(2ページ目の図表3参照)が比較的ぜい弱とされる 国、たとえば、トルコやブラジルなどの株式・通貨に対して マイナスの影響度が大きくでています(図表1、2参照)。

当面は注視が必要も 世界の経済成長は追い風に

当面は、前述のような問題を巡って値動きが大きくなる可 能性が依然として残されており、各国の経済政策・政治動 向などには十分注視していく必要があると考えます。

現時点では、世界経済は引き続き緩やかながらも改善基 調にあるとみられ、新興国経済および新興国企業はこうし た恩恵を受けるとの見方には変わりありません。また、新 興国株式のバリュエーション(投資価値評価)水準は依然 として先進国株式に比べて魅力的であることも、株価の下 支えとなると考えられます。

特に、「リスク」に対して市場がより敏感となっている局面に おいて、相対的にリスクが高いと考えられる新興国への投 資では、広く分散投資を行うことが重要であると考えられます。

 図表1:主要株価指数の騰落率 期間:2018年1月末~2018年5月末、すべて現地通貨ベース、図表2:主要通貨に対する対円レート騰落率 期間:2018年1月末~2018年5月末

図表3:主要新興国の経済ファンダメンタルズ 2017年

経済が比較的ぜい弱な国 ①トルコ

トルコは財政赤字と経常赤字の「双子の赤字」を抱えてい ます。足元の財政赤字の規模は対GDP比で約2%、経常 赤字の規模は対GDP比で約5%となっており、赤字の規模 自体は懸念すべき大きさではありませんが、その他様々な 要因があいまって、足元の株式・通貨の下落につながった と考えられます。

トルコは新興国の中でもインフレ率の高い国です。名目金 利は高いものの、企業部門は実質的にはより低金利で借 り入れをすることが可能でした。トルコの企業部門や公的 部門の全体でみた債務水準はさほど高水準ではなく、特 に公的部門の債務比率(対GDP比)は30%以下に留まっ ています。

しかしながら、高インフレ下においてもエルドアン大統領は、 低金利を中央銀行に指示するなど型破りな経済政策を 採っています。2018年6月後半には大統領選挙および国 会総選挙が予定されており、政治的な動きが当面は金融 市場の変動要因になると懸念されます。

こうした環境下、海外投資家はトルコから資金をいち早く 引き揚げる動きをみせたことなどから、通貨リラは大幅な 下落となりました。さらに、トルコは原油輸入国であることも あり、最近の原油価格の上昇に加えて、通貨の下落が輸 入価格の上昇につながり、経済を圧迫すると懸念されて います。

市場の不安を和らげることを意図して、先ごろ、エルドアン 大統領はロンドンを訪れ、投資家向け説明会の場におい て、選挙後に、金融政策に対するコントロールを強化する 旨を発表したことから、かえって、投資家の間では中央銀 行の独立性に対する懸念が高まっています。
足の速い海外勢は資金を引揚げる動きを加速させたこと などから、エルドアン大統領と中央銀行は通貨下落に対 応せざるを得なくなり、5月23日には一度に300べーシス・ ポイントの緊急利上げ(→16.5%)を発表しました。

このように、政治的不透明感が残り、経済にマイナスの影 響を及ぼしかねないと考えられるトルコについては、国とし ては注視をしていく必要があると考えます。

経済が比較的ぜい弱な国 ②南アフリカ

南アフリカの経常赤字は対GDP比で約2%超の規模にあり、 こちらも、米国の金利上昇局面において、マイナスの影響 を受ける可能性が懸念される国の1つです。

しかし、これに対して、ラマポーザ大統領による経済改革 期待が大きな下支え要因となっており、株式・通貨の下落 幅はトルコなどに比べると小幅に留まっています。

政権交代により緩やかながらも改革が進み、経済が改善 していくことが期待できることなどから、南アフリカについて は現時点で大きな懸念はないと考えています。

経済が比較的ぜい弱な国 ③ブラジル

ブラジルの経常赤字の規模は、足元で対GDP比0.5%程度 の規模にありますが、ここ最近の原油価格の上昇などもあ り、赤字幅は縮小していく可能性があるとみられます。

インフレ率が低下し、低金利となったことで、家計部門や 公的部門が借り入れを拡大しやすい環境となっています。
インフレ率は足元で3%台であり、インフレ目標の4.5%を下 回る水準にあります。この点で、ブラジルは、トルコやアル ゼンチンなど通貨防衛のため利上げを余儀なくされている 国々と異なります。
インフレ目標に対して、足元のインフレ 水準は余裕がある水準であり、現時点で利上げを行う必 要性はないとみられます。

経済のファンダメンタルズは改善傾向にありますが、債務 の面では少し懸念が残ります。しかし、よくある新興国市場 の下落の引き金となるような対外的なぜい弱性や高インフ レといった問題については、現時点ではコントロールされて いる状態にあると考えられます。

問題は政治的な混乱が依然として続いていることです。 10月には大統領選挙が予定されています。
世論調査で は依然として前大統領で現在服役中のルラ氏が首位と なっています。現時点では中道政党の候補者が勝利する 可能性が高いとみられますが、依然として選挙結果を見 通すことは困難です。
現時点で課題となっている経済改革が選挙後にも推進さ れていくとすれば、経済成長につながると期待されます。 反対に、経済改革が進まなければ、経済にとってもマイナ スとなりかねません。選挙動向には今後も注視していく必 要があると考えられます。

また、5月後半より、ディーゼル油高騰に抗議したトラック 運転手のストライキにより、経済に対するマイナスの影響 が懸念されています。
このストのきっかけは、2017年7月 にブラジル石油公社(以下、ペトロブラス)が国際原油相 場にあわせて燃料価格を変動させるしくみを導入したこと がきっかけで、先ごろの原油価格高騰の怒りの矛先はペト ロブラスと政府に向かいました。
こうした混乱を受けて、ペト ロブラスのパレンチCEOは6月1日に辞任を表明しています。 同国の主要銘柄でもあるペトロブラスの株価は5月半ばの 高値から6月1日までで4割近く下落したことなどが響き、 ブラジル株式市場全体の下落の要因となりました。

ブラジルについては前述の通り、政治的な不透明感が懸 念材料ではありますが、こうした中でも構造的な成長が期 待できる優良銘柄は存在することから、銘柄選別が重要 になると考えられます。

経済が比較的ぜい弱な国 ④その他の国

アルゼンチンは、新興国株式市場の代表的な株価指数 であるMSCI新興国株価指数の採用国ではありませんが、 経済のぜい弱性についてはトルコなどと同様に懸念される 国の1つです。
異なる点としては、マクリ大統領は改革派で あることです。経済改革推進にあたり、改革に伴う国民の 負担を緩和するために財政赤字を容認する政策を行って きました。
しかし、こうした政策は十分コントロールしきれて いなかったことなどから、海外投資家が資金を引揚げる動 きが再び加速したとみられます。

しかし、トルコとは異なり、市場はアルゼンチン政府に対す る信頼を完全に失ってはいないと考えられます。
マクリ大 統領は国際通貨基金(IMF)に対して支援を求めています。 IMFがアルゼンチンに対して支援を行うこととなれば、IMFは 財政再建を優先させることとなるでしょう。アルゼンチン政 府として、これは受け入れると考えられています。

また、インドとロシアについては、より楽観的な見方を持っ ています。

インドについては、株式のバリュエーション(投資価値評 価)の面から、相対的な割高感がある一方、足元で、経済 のファンダメンタルズは改善傾向にあるとみられています。
依然として経常赤字が続いていますが、2013年のバーナ ンキ・ショック時などに比べると、改善しており、米国の金利 上昇に対する耐性が高まっているとも考えられます。

インドについても、2019年に総選挙が控え、政治的な不 透明感が残りますが、経済のファンダメンタルズはより強固 となっている点が楽観的にみる根拠です。

ロシアについては、マクロ経済の面から新興国の中でも、ピ クテが自社開発したマクロ経済ぜい弱性分析で最も耐性 があるとみられる国の1つです。
懸念材料としては欧米諸 国による経済制裁を巡る動向があり、この点については注 意深く動向を見守る必要があると考えます。

(※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内 容が変更される場合があります。)

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