中国の人民元建て債券市場:成長期待と手付かずの将来性 | ピクテ投信投資顧問株式会社

中国の人民元建て債券市場:成長期待と手付かずの将来性

2018/06/15新興国

ポイント

中国の人民元建て債券市場は、世界最大級の規模を有しながら手付かずの潜在性を秘めており、将来が大いに期待されます。海外の投資家は、市場へのアクセスが改善される環境下、魅力的なバリュエーション、相対的に低位のボラティリティ、他の資産クラスとの低相関、債券ポートフォリオの分散等を活用することが一層容易になってきています。加えて、人民元の増価の可能性が投資環境をより有利なものとすることも期待されます。

中国の人民元建て債券市場:成長の可能性

中国の人民元建て債券市場は、既に、市場拡大の「旅」(「1,000マイルの長旅」)に出発しています。人民元建て債券市場の時価総額は約700兆人民元(11兆ドル)と、2002年当時の10倍を超える規模に達していますが、旅がここで終わるわけではありません(注1)。

中国の債券市場は、今後10年間、世界2位の規模を誇る中国経済の資金調達ニーズを満たすため、これまで以上に急速な成長を遂げることが予想されます。中国は、過去に例を見ないスピードで都市化を進め、資本市場を徐々に開放しています。中国経済は今年中にユーロ圏経済を抜き、今後数十年のうちには米国経済と肩を並べることが予想されます。債券市場も同様の道のりを歩む公算が高いと思われます。

人民元建て債券市場は急速に拡大

 

国内インターバンク市場の参加者である機関投資家が取引の主体

現時点では、中国国内の債券市場で取引される債券の半分以上が、クレジット債以外の金利商品です。

  • 中央政府発行の債券:政府支出を賄うため、財務省が発行する債券
  • 政策銀行債・金融債:中国国家開発銀行等の政策融資を担う国営銀行が発行する債券
  • 地方政府債:省政府が発行する債券
  • 社債:市場で取引される債券の3分の1前後を占める中国企業が発行する債券。発行体の大半は国営企業であり、民間企業が発行する債券は社債の僅か4%程度に過ぎない。

市場で取引される債券の90%以上(61.9兆人民元)は銀行間取引市場(インターバンク市場)で売買されています(注2)。中国のインターバンク市場は、1997年設立の、中国人民銀行(中国の中央銀行)の規制下にあるマーケットメーカー(気配値提示)方式の相対市場(OTC)です。市場参加者の構成は、ここ数年で分散化が進みましたが、これは、中央政府が海外投資家を呼び込み、海外資金の流入を促す目的で市場開放を進めているためです。政府は、2017年3月以降、厳選した海外投資家のみを対象に、より安価でかつ流動性の高い国内派生商品(デリバティブズ)を使った為替ヘッジを認めています。また、同年7月には、香港で「債券通」(「ボンド・コネクト」、香港と中国本土間の債券相互取引制度)を導入していますが、これは、海外投資家の中国債券市場へのアクセスという観点では史上最も重要なイベントとなりました。

インターバンク市場以外では、上海証券取引所と深圳証券取引所で、中国証券監督管理委員会管理下のオーダードリブン(オークション)方式の売買が行われていますが、投資家の主体は、中小の証券会社および個人投資家です。

中国の債券取引は国内投資家を中心に行われています。商業銀行は売買高の半分以上を占める最大の投資家です。これは、中国の預金者の主要な投資経路が銀行預金であり、潤沢なキャッシュを持つ銀行が預金者から集めた資金を再投資する必要があるためです。海外の機関投資家の市場シェアは、足元2%に届かないものの、拡大基調を辿っていることは確かです(注2)。

国内債券市場の投資主体別売買動向では商業銀行がトップ

何故、人民元建て債券市場に投資すべきか?

中国の人民元建て債券市場は、現在の低収益環境にあって、魅力的な利回り、ポートフォリオの分散、通貨の増価がもたらす追加的な収益獲得の可能性等を提供します。中国国債の利回りは、同等の米国国債利回りや格付けが類似した国の国債利回りを上回ります。また、中国国債は他の資産クラスとの相関が低い点でも注目されます。

中国国債は先進国ソブリン債を超える利回りを提供

相関係数

年率僅か3.5%と相対的に低水準のボラティリティ(利回り及び債券価格の変動率)もプラス要因です。海外投資家を対象とした国内債券市場開放策が主要なグローバル債券指数への中国債券の組入れを促す可能性も考えられますが、このことが、中国債券の戦略的資産クラスへの進化の過程における重要な一歩となることは間違いありません。ブルームバーグは、人民元建て債券(国債および政策銀行債)を2019年4月からブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合指数に組入れることを発表しています。JPモルガンやシティグループ等、他の債券指数プロバイダー大手がブルームバーグに続くこととなれば、最大で2,860億ドル程度の新規資金が中国市場に流入することとなりそうです。

人民元建て債券の魅力的なリスク調整後リターン

成熟した経済

人民元建て債券投資は、投資家が、中国経済の長期構造改革の恩恵に与ることを可能とします。

中央政府は、輸出主導型経済から国内消費主導型経済への転換を図っています。その結果、経済成長率は、過去10年平均の年率10%程度から持続可能な水準へと低下することが予想されます。

インフレ率は抑制された水準に留まって、債券投資家に良好な環境を提供すると見られます。ピクテのエコノミスト・チームは、中国のインフレ率が今後5年間、中央銀行が目標とする3%を下回る水準に留まると見ています。

政府の債券市場支援

政府は以下の複数の理由から、債券市場の発展を後押ししています。第一には、銀行融資に過度に依存する地方企業向けの新しい資金調達源を確保したいということです。金融当局は、発行体に対し、開示と透明性の改善を促していますが、このことは、長期にわたって投資家に恩恵を与えると思われます。

金融当局は、経済成長の次の波を推進するために、労働者の都市への移動が進む環境下、債券市場を、インフラ整備や各種建設プロジェクトの資金調達源にしたいと望んでいます。

世界銀行は、経済と人口動態の変化に遅れをとらないためには、2040年までに1.9兆ドル規模のインフラ投資が必要になると試算しています。2050年までには、今世紀初頭の2倍を超える人口の4分の3以上が都市部に居住することになると見られます(注3)。

人民元の国際化

金融当局は、経済の成熟化が進むにつれて、金融市場の緩やかな改善、資本勘定の自由化、国外での人民元の利用の拡大等への関与を強めています。

中国企業は、モノやサービスならびに海外直接投資の人民元決済を増やしています。人民元建て商取引の決済は2012年1月以来、年率40%程度の伸びを示しています(注4)。

2016年10月以降、人民元を国際通貨基金(IMF)の通貨バスケット(特別引き出し権(SDR))に採用するとのIMFの画期的な決断は、人民元の国際化の道程の重要な節目となりました。IMFの決断は、中国政府の経済改革を評価したものであり、国際準備通貨としての人民元の地位を高めるものとなりました。

中国は国境を超える資本の流れに対する規制を緩和し続けていることから、中国への投資資金の流入は、今後、一段と拡大する公算が高く、人民元の緩やかな増価を促すと見られます。

人民元建て債券は今後5年にわたって上昇基調を辿るか?

ピクテのモデルで測定した長期の適正価値は、人民元が今後5年のうちに、足元の1ドル=6.3人民元から増価する可能性を示唆しています。これが実現すれば、債券ポートフォリオの収益率が押し上げられる可能性も考えられます。

債務水準は対処可能

中国の政府債務残高はGDP(国内総生産)比46%程度と低水準に留まります。一方、(金融セクター以外の企業ならびに家計が保有する)民間債務はGDP比200%程度と新興国の中で最も高い水準に達しています。

数値が高いとはいえ、中国の債務状況を巡る懸念には、多くの理由で行き過ぎの感があるように思われます。

第一に、民間債務の大半は、国営あるいは準国営企業が保有していることです。第二には、債務がほぼ国内で保有されており、対外債務はGDP比僅か13%程度と低位に留まることです。

中国の民間債務リスクは限定的

第三には、潤沢な国内貯蓄が市場の衝撃を吸収できることです。中国の貯蓄率は世界で最も高く、GDP比50%に迫っており、海外からの投資資金の流入も限定的です。

第四には、ピクテの自社開発モデルと不動産価格や貯蓄率等の指標を用いて測定した国の信用状況から判断すると、中国の民間債務のファンダメンタルズ(基礎的条件)が良好なことです。

実際のところ、中国はブラジルやトルコ等の新興国と比べて良好な状況にあり、1980年代後半の日本を襲った不動産バブルの崩壊や2000年代後半のユーロ圏や米国の窮状とはかけ離れた状況にあります。

第五には、大手行に義務付けられる預金準備率、常設貸出ファシリティー(SLF)、中期貸出ファシリティー(MLF)、レポレート等の複数の政策手段を駆使し、経済成長を支え、流動性を確保する意思を中国人民銀行が明確に示していることです。いずれも、金融システムに潤沢な流動性を供給し、経済成長を支えるための施策であり、人民元建て債券投資に良好な投資環境を提供する結果につながると思われます。

最後に、民間セクター債務と金融セクター・リスクを軽減するための中央政府の取り組みは、中国経済のファンダメンタルズの改善を促すものと考えます。

人民元建て債券市場を取り巻くリスク

中国債券の格付け格差

中国国内の格付け機関は、地方債の約97%にAA以上の格付けを付与しており、BBB以下の格付けは1%未満に過ぎません(注5)。

これに対し、スタンダード・アンド・プアーズやムーディーズ、フィッチ等、格付けの基準と手法を異にする投資家に広く認められる国際的な格付け会社は、地方債の多くを無格付けとしています。

このような格差の存在から確認されるのは、投資に際して個別債券の徹底的な信用分析を行うことが極めて重要だということです。

透明性を巡る課題

中国の債券市場は未だ発展途上にあり、企業の投資家向け広報活動(インベスター・リレーション)が普及しているとも思われません。また、関係官庁に提出する書類は中国語で書かれています。証券会社(セルサイド)の調査活動もあまり普及していません。このような状況は地場の投資家が有する専門知識や情報の入手が海外の投資家には困難となる情報の非対称性の状況を生み出しています。

債務不履行(デフォルト)を巡る懸念

中国企業の債務水準や市場リスクを巡る投資家の懸念が強まっています。2014年3月、太陽光パネル製造の上海超日太陽能科技(Chaori Solar)が社債の利払いが行えず、中国債券市場で初めての債務不履行(デフォルト)に陥った後、2015年4月には変圧器製造の保定天威集団(Baoding Tianwei)が国営企業で初めてデフォルトを宣言したためです。

今後数年間、企業のデフォルトや信用事由がなくなる公算は低いと思われます。中央政府が債務圧縮キャンペーンの一環として、非中核セクターや非生産的なセクターの過剰生産能力の削減を進めているからです。債券に内在するリスクの正確な測定には、地場の格付けに頼らず、独立した信用分析を行うことが極めて重要です。

とはいえ、中国のデフォルト率は僅か0.03%に過ぎず、先進国や中国以外の新興国と比べて遥かに低位に留まります。一方、米国市場では、2018年1月までの1年間で社債の1.8%がデフォルトに陥っています(注6)。

注1:JPモルガン、「チャイナ・ボンド」、2017年12月29日現在
注2:BNPパリバ、2017年6月30日現在
注3:国連、「世界都市化予測2014」
注4:ピクテ・アセット・マネジメント、CEIC、トムソン・ロイター・データストリーム
注5:BNPパリバ、Wind
注6:過去12か月のデフォルト率、Moody’s、2018年1月31日現在

(※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。)

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