中国の消費者の台頭 | ピクテ投信投資顧問株式会社

中国の消費者の台頭

2018/07/12新興国

ポイント

これまで中国の急成長を支えてきた良好な条件は次第に姿を消しつつあります。一方で、人口動態の変化や所得の増加を背景に、中国の家計の消費は持続的かつ高い伸びを続けています。中国への投資にあたっては、消費動向のトレンドに注目し、さまざまなチャネルを通じて投資を行うことが重要だと考えます。

概要

中国経済の消費主導型モデルへの転換
中国経済の減速に伴って、その構造が大きな変化を遂げています。従来の投資主導型成長モデルが消費主導型成長モデルに徐々に取って代わられつつあるのです。家計の消費は、経済全体に占める割合を増すだけでなく、経済成長の一段と支配的なエンジンになっています。

人口動態の変化と高い所得の伸びが支える経済
投資主導型成長モデルから消費主導型成長モデルへの転換(シフト)は、長期の観点からすると、労働年齢人口が減少し、高齢人口が増加する中国の人口動態の変化に起因するものです。消費の伸びを促しているのは高い所得の伸びですが、所得の伸びの一因は、労働市場が余剰から不足への転換にあるのです。中国の中間所得層は2022年までに6憶3,000万人を上回ると見られています。

消費の質の転換が進行中
中間所得層が増え、所得が伸びるに連れて、中国の消費者態度は、近年、目立った変化を遂げています。所得の伸びに連れて、ブランド認知度が相対的に高く、よりよい経験を可能とする、相対的に質の高い製品が求められているからです。一例を挙げると、自家用車の保有が急速に伸びる中、相対的に大型で高価なスポーツ用多目的車(SUV)の売上げの伸びが自家用車全体の伸びを上回っています。

中国:乗用車販売台数(千台、左軸)とSUVの比率(%、右軸)

※月次、2005年1月~2018年4月

消費主導型経済へのシフト

過去何十年にもわたって中国経済を特徴づけてきたのは、高水準の設備投資と低水準の消費でした。極めて高水準の設備投資は、過去30年間、中国の経済成長に寄与する一方で、過剰な産業設備や企業債務の増加等、持続的な成長を脅かす多くの問題を引き起こしてきました。中国には投資主導型成長モデルから消費主導型成長モデルへの転換を通じた経済の均衡が求められますが、このような転換は確実に進行しています。中国のGDP(国内総生産)に占める個人消費の比率は着実に上昇しており、ますます重要な成長のドライバーとなっています。

2010年は中国経済の転換点だった?
多くの中国ウォッチャーにとって、2010年はごく普通の年だったと言ってよいでしょう。政府が2009年に「4兆元」の景気刺激策を発表した後、中国経済は2000年代の殆どの年と同様、10%を超える成長を維持し、中国の「ハードランディング」を巡る懸念が欧米のメディアに報道されることはありませんでした。政治面では、(2012年の)中国共産党第18次全国代表大会まで2年を残す時点にあり、(当時は副主席だった)習近平は国外では殆ど無名の存在でした。また、米タイム誌が選ぶその年の10大ニュースには、(良いニュースにしても悪いニュースにしても)中国関連のニュースはありませんでした。

中国の労働人口は
2010年をピークに
減少が続いている

一方、同じ年に、中国の重要なメガトレンド(時代の大きな趨勢)がひっそりと転換点に達しました。とりわけ注目されたのは、総人口に占める(15歳から64歳の)生産年齢人口(労働人口)比率が天井を打ったことです。当比率は、1960年代のベビーブームのおかげで1970年代半ばの55%前後から30年以上にわたって上昇を続け、1980年代初めには一人っ子政策が導入されました。天井を打った2010年の比率は74.3%と、世界の主要国の中では最も高い数字を記録しています。ちなみに、米国は67.2%、日本は63.8%、ドイツは65.9%、フランスは64.5%、インドは64.0%でした。

豊富な労働人口は、潤沢な労働力の供給、安い労働コスト、高水準の貯蓄率ならびに資本投資効率を示唆します。このような好条件が(中国の場合は、海外投資に対する「国内市場の開放」や従来に比べて遥かに自由な市場を可能とする制度改革等の)正しい政策と相まって、中国経済の高成長が実現したのです。

ところが、2011年以降、中国の総人口に占める労働人口比率は低下の一途であり、2016年末にはピーク時を2.1%下回る72.2%にまで低下しています。国際連合(国連)は、この比率が今後何十年か低下を続け、2050年には59.7%に達するだろうと予測しています。

中国:労働人口の比率(%、総人口比)

※年次、1980年~2050年(2017年以降は国連予想)、労働人口は15歳~64歳の人口

これに対し、中国の65歳以上の人口は1960年代半ば以降、増加基調が鮮明で、2010年以降は増加のペースが加速しています。中国の総人口に占める65歳以上の人口比率は、1965年の3.7%から、2010年には8.3%、2016年末には10.1%に上昇しており、2050年には26.3%(およそ3億5,900万人)に達するだろうと国連は予測しています。

中国経済のキーワード:
労働力不足、人件費の上昇、
貯蓄率と設備投資効率の低下

中国の人口動態の大きな変化は経済に深刻な影響を及ぼしています。経済の高度成長を支えてきた好条件が次第に消滅し、労働力不足、労働コストの上昇、貯蓄率ならびに設備投資効率の低下が一段と進むことが予想されます。このような変化は経済の伸びを鈍化させると同時に、経済構造の大きな転換(シフト)を引き起こします。

新しい成長エンジン、個人消費

雇用された労働人口には、引退に備えるため消費が所得を下回る傾向が認められるのに対し、退職後は所得を上回る消費を行う傾向が認められます。総人口に占める労働人口の比率が低下する一方で、老齢人口の比率が上昇すれば、通常、消費の増加がもたらされます。

このような状況が実際に中国で起こっているのです。中国のGDPに占める家計の消費の比率は半世紀にわたって下降トレンドを辿った後、2010年に底入れし、翌年は0.7パーセント・ポイント上昇しました。その後の5年間は、いずれの年も国内経済を上回る伸びを記録しており、2016年のGDPに占める比率は2010年の水準を3.6パーセント・ポイント上回る39.2%に達しました。

中国:GDPに占める家計の消費支出と固定資産の比率(%)

※年次、1953年~2016年

個人消費は、GDPに占める比率の上昇に伴って、中国経済のますます重要なエンジンになりつつあります。2010年から2017年にかけての8年間のうちの6年間については、実質GDPに占める消費の寄与度が50%を上回っています。2018年1-3月期の寄与度は78%(成長率の6.8%に対して消費は5.3%)に達し、2016年の64%、2017年の59%を上回りました。家計の消費の伸びの加速は総固定資本形成の伸びの鈍化と対照的です。

中国:実質GDP成長率の需要項目別寄与度(%)

※2001年~2018年1-3月期

人口構成のシフトの結果は、労働市場の構造的な供給過剰から不足への変化にも見られます。労働市場の逼迫は、所得ひいては消費の伸びをもたらします。

ここにも2010年が経済の転換点だった可能性が示されています。人事社会保障省が調査を開始した2001年以降、中国は常に労働供給力の余剰を抱えてきましたが、2010年1-3月期中に初めて労働供給力の不足が生じ、同年10-12月期以降は、絶対的な不足が確実となった後、余剰の状況に戻ることは一度もありませんでした。2017年10-12月期の労働供給はほぼ80万人の不足となり、求職者1人に対して1.2人の求人がありました。

中国:求職者数と求人数の差(千人、左軸)と、求人倍率(右軸)

※四半期、2001年1-3月期~2017年10-12月期

都市部の雇用は、実質GDP成長率が前年比+10.6%から同+6.7%に鈍化する中、年間1,100万人から1,310万人に増加しています。都市部の雇用の急激な増加は主にサービス・セクターの拡大に起因するものです。2010年から2016年にかけての(主に製造業から成る)第二次産業の総雇用は510万人増加していますが、(主にサービス業から成る)第三次産業の総雇用は7,420万人の増加と桁違いです。結果として、中国の失業率は低下基調を辿り、2017年12月には3.9%と8年超ぶりの低水準を記録しました。

経済成長と労働力不足が
中国の個人所得を押し上げる

経済の高成長と労働市場の逼迫を受け、所得の伸びも堅調です。都市住民の平均可処分所得は2010年から2017年にかけて年率10.1%の伸びを示しています。名目GDPに対する労働所得の伸びが加速しているのです。都市住民の平均可処分所得は、2012年までは、ほぼ常に名目GDP成長率を下回っていたのですが、2012年以降は、短期的な例外期間を除いて、両者が逆転しています。一方、地方では、政府の補助金が所得の伸びを押し上げており、過去10年間の地方の補助金は都市の補助金を一貫して上回っています。

堅調な所得の伸びは中国の中間所得層の急速な拡大をもたらしています。大手コンサルタントの予測では、2000年には都市の家計の僅か4%に過ぎなかった中間所得層は2012年には68%に急増しています。2022年にはこれが76%となり、総人口の45%に相当する約6億人3,000万人に達すると見込まれます。

変貌を遂げる消費者の動向

中間所得層の拡大と所得の伸びを背景に、中国の消費動向には、近年、目立った変化が見られます。第一点は、消費の質が向上し、消費者の購入対象が一般大衆向け商品から高級商品にシフトしていることです。第二点は、圧倒的なモノの消費からコト(経験)の消費へのシフトが見られることです。第三点は、小売売上が急速にオンライン売上にシフトしていることです。

消費の質の転換
消費者は、所得の伸びに連れてブランドを認知し、よりよい経験がもたらされる質の高い製品を求めるようになります。自動車を例に取ると、中国の個人の車の所有は2009年以降、急増しています。乗用車売上げは2008年の670万台から2017年には2,470万台に増加し、伸び率はほぼ16%(年率)に達します。更に目を引くのは、セダン車よりも大型かつ高額で中間所得層のステータス・シンボルとみなされるスポーツ用多目的車(SUV)の同期間の売上が、自動車全体の売上げの伸びを遥かに上回っていることです(本稿冒頭のグラフをご参照ください)。2008年のSUVの売上げは乗用車売全体の僅か6.6%に過ぎなったのが2017年には42%に達しており、その後も増え続けています。

サービスに対価を払う中国の消費者たち
中国のサービス・セクターの拡大は2011年に加速し始めました。2012年下期以降、(主にサービス業から成る)第三次産業の伸びは、(主に農業から成る)第一次産業および(主に製造業から成る)第二次産業の伸びを上回っています。2017年の第三次産業の伸びは実質ベースで8%に達しており、第一次産業の3.8%、第二次産業の6.2%、経済全体の6.9%を上回っています。この結果、過去数四半期のGDP成長率に対する第三次産業の寄与度はほぼ67%に達しています。また、第三次産業の高い伸びに伴って、GDPに占める比率も上昇し続けており、2010年の44%から2017年には52%に達しています。

中国:GDP成長率に占める産業別の割合(%)

※四半期、2001年1-3月期~2018年1-3月期

サービス・セクターは広範囲のカテゴリーで構成されますが、中でも、卸売り及び小売、運輸、(eコマースの拡大に関連する)倉庫及び配送サービス、ケータリング及び宿泊サービス等、家計の消費に密接に関連するセクターが最も高い伸びを示しています。金融サービス及び不動産は出遅れています。強い伸びを示しているセクターには、観光及び娯楽が含まれます。

観光:観光市場は隆盛を極めています。「ゴールデンウイーク(「黄金週」あるいは「黄金周」)と呼ばれる大型連休中の旅行者数は2010年以降、毎年、過去最高を更新しており、2017年の黄金週には前年比18.9%増の7億500万人が国内旅行を楽しみました。

中国:大型連休中の国内旅行者数(百万人、左軸)と前年比成長率(%、右軸)

※2002年2月~2018年2月、中国の大型連休は春節(2月頃)と国慶節(10月)の年2回

中国人の海外旅行者も爆発的に増加しており、中間所得層の消費の質の改善を示唆しています。海外旅行者数は2001年の370万人に対して2016年には15倍を超える5,730万人となり、伸び率は20%(年率)に達しました

娯楽:サービス消費の伸びは、世界の金融危機以降、成長の著しい娯楽産業にも見られます。中国の映画館のスクリーン数は2009年には全国で5千件を下回っていたのに対し、2017年末時点にはその10倍以上の5万件を超えています。同様に、映画観客数は2009年の2億400万人から2016年には約8倍の16億人に急増し、チケット売上げも2009年の62億人民元から2017年末には559億人民元に急増しています。

中国:映画スクリーン数(千、左軸)と観客数(百万人、右軸)

※年次、2005年~2017年

オンライン消費
インターネット、とりわけモバイル技術の普及を背景に、消費者のオンライン・ショッピングが急増しています。中国の足元の小売売上高は前年比10%程度と妥当な伸びに留まりますが、オンライン売上の伸びは30%を上回ります。また、(年間売上が2,000万人民元以上の)デパートなど大型小売店の2018年1-4月の売上高は、中国の小売売上高全体の約22%に相当する2.6兆人民元に達しています。

オンラインでも、
コト(経験)の消費が
モノの消費を上回って増加中

サービスのオンライン売上は、モノの売上を更に上回る伸びを示しています。2017年のオンライン売上全体が前年比39%、モノのオンライン売上が同29%の伸びを示したのに対し、この間のサービスのオンライン売上は同85%に達しています。

中国:オンライン販売の金額(物販およびサービス、10億元、左軸)と小売売上に占める比率(%、右軸)

※月次、2015年1月~2018年4月

消費者がオンライン上で購入するサービスは、(航空券、ホテルの予約およびその他の旅行関連サービスを含む)パッケージツアー、配車、出前、オンライン・ゲーム等、多岐にわたります。オンライン上の情報や活動を実店舗での購買行動につなげる「オンライン・ツー・オフライン(O2O)コマース」と呼ばれる新しいビジネスモデルの急速な伸びとモバイル決済の普及が相まって、サービスのオンライン売上は、とりわけ、都市に住む若者にとって魅力を増しています。

新しいテクノロジーとビジネスモデルの出現は、今後も中国の消費者を取り巻く環境を形成していくものと思われます。

中国への投資にあたっての結論

これまで中国の急成長を支えてきた良好な条件は次第に姿を消しつつあります。しかし、中国の家計の消費は持続的かつ高い伸びを続けており、こうしたマーケットへの投資を可能とする手段も存在します。

電子商取引(e-コマース)大手、ゲーム販売を行うインターネット大手、パック旅行販売業者や車のディーラー等は、その多くが米国預託証券(ADR)の形で米国市場に上場しています。また、化粧品、衣料、アクセサリー、宝飾品等の分野では、世界的なブランドと競合する香港上場の中国企業に加え、日本や韓国やタイのアジア・ブランドも中国国内で大きな成功を収めています。従来型の「実店舗」が入ったショッピング・モールやデパートの運営企業は、1級都市(北京などの大都市)ではe-コマースとの競争の激化に苦戦しているものの、2~ 3級都市(重慶などの地方都市)では記録的な伸びを示しています。こうしたショッピング・モールの運営企業は、上場不動産投資信託(REIT)に組入れられており、同時に、中国の不動産開発大手の資産の一部を構成しています。

(※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。)

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