グローバル・マクロ・ウォッチ:トルコの「悪魔の選択」 | ピクテ投信投資顧問株式会社

グローバル・マクロ・ウォッチ:トルコの「悪魔の選択」 欧州/ユーロ圏 新興国

2018/08/22新興国

ポイント

トルコ政府は、今後の金融政策の選択について瀬戸際に追い詰められています。どのような政策になるか、世界が注目しています。

トルコ・リラの暴落による経済危機に対して、トルコ政府の取るべき金融政策は3つに絞られています:

  1. 通貨防衛のために政策金利の大幅な引き上げ
  2. 資本の対外流出を防ぐ資本政策
  3. トルコ・リラの印刷による通貨政策
どの政策をエルドアン大統領が採用するかによって、今後世界の投資家の見方が変わってくると見ています。

第一の選択肢である、トルコ中央銀行の政策金利の大幅な引上げが、最善かつ効果的と考えます。トルコ・リラの危機の本質は、トルコの実質金利が大幅なマイナス金利になっていることです。トルコ・リラ建ての2年国債の利回りは25%近辺で推移していますが、これは市場が予想するインフレ率に最も近い予想と考えます。一方、実際のインフレ率は7月時点で年率16%と見られていますが、トルコ・リラの急落によってインフレ率は今後急上昇する可能性があります。トルコは、エネルギーや鉱物資源を輸入に頼っていることから、トルコ・リラの急落はインフレ率の上昇を加速させます。このような市場環境がインフレーションの要因であるならば、政策金利が17.75%で維持されると、実質金利は大幅なマイナス金利と見られます。

物価上昇の連鎖を食い止めるためには、なるべく早く政策金利の引き上げが必要です。中央銀行がインフレ対策に真剣に取り組む姿勢を世界に見せると、トルコ・リラは安定する見通しです。一方で、トルコ経済は深刻な景気後退に陥る可能性が高いです。しかし、インフレ対策が効力を示せば、中央銀行は将来的に政策金利の引き下げを行うことが可能となります。そして歴史的に見て、政策金利の引き下げは、新興国市場の投資家にとって強力な買いのサインとなります。典型的な例として、海外からの資本流入はトルコ・リラの上昇とインフレ率の低下をもたらします。

トルコ・リラの対米ドル為替レート(2017/12/30~2017/08/17)

 

残念なことに、エルドアン大統領は執拗に政策金利の引き上げに反対しています。実際、同大統領は、政策金利の引き上げはインフレーションを悪化させると主張しています。そして、トルコ中央銀行の独立性を剥奪して、政治的な緊張を緩めようとしています。

第二の選択肢として、市場環境に応じた政策がないならば、エルドアン大統領は、トルコからの資本逃避を制限するための資本政策を採用する可能性があります。例えば中国のように、対外債務が大したことがない国の場合、このような資本政策は効果的です。しかし、トルコのように膨大な対外債務を抱えて、今後とも利払いや借り換えが必要な国の場合は、資本政策は深刻な経済危機を引き起こします。

既に、資本逃避に対する措置が取られています。海外へ資金を移そうとする個人に対して、トルコの銀行は限られた金額にしか対応していないと巷では言われています。エルドアン大統領は、金、ユーロ、米ドルをトルコ・リラに両替することで、国難に対抗するよう国民に呼びかけています。資本政策は、投資家の資金をトルコ国内に凍結することとなり、明らかに良くない結末を迎えると考えます。

最後の選択肢は、国内の銀行の十分な流動性を確保するために、エルドアン大統領が中央銀行に命じてトルコ・リラを発行させることです。この通貨政策は、機能不全に陥った国内の銀行を蘇らせるでしょう。ただし、通貨の増刷は更なるトルコ・リラの下落を招き、インフレーションの悪化が進み、最後にはトルコ経済に壊滅的は打撃を与えるでしょう。このような通貨政策がどのような結末を迎えるかについて、現在のベネズエラの経済情勢が典型的な見本となると考えます。

トルコ経済の先行きについて、エルドアン大統領がどの政策を選択するかにかかっています。世界は、その動向を注視しています。

(※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。)

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