ヘルスケア市場:振り返りと展望 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ヘルスケア市場:振り返りと展望 グローバル バイオ医薬品

2014/01/29グローバル

ポイント

ヘルスケア・セクターは2013年を通じて大幅に上昇しました。バイオ医薬品セクターはこれを上回って上昇し、堅調さが特に際立ちましたが、一方でバリュエーション水準も上昇しており、今後は従来以上の銘柄厳選が求められるものとみています。医療改革に取り組む中国市場では、大手優良銘柄、医薬品小売銘柄が注目です。

ヘルスケア市場の振り返りと展望

2013年10-12月期の先進国ヘルスケア株式(MSCI先進国ヘルスケア株価指数)の騰落率は+8.9%となり、先進国株式(MSCI世界株価指数)の+8.0%を上回って、堅調な地合いを維持しつつ一年を終えました。ヘルスケア全般、なかでもバイオ医薬品セクターのバリュエーション(投資価値評価)水準については、年末時点で警告を発しましたが、これが間違いだったとは言い切れないとしても、時期尚早だったことが明らかとなりました。先進国ヘルスケア株式(MSCI先進国ヘルスケア株価指数)の2013年の年間騰落率は+36.3%に達し、先進国株式(MSCI先進国株価指数)の+26.7%を大きく上回りました。 先進国ヘルスケア株式(MSCI先進国ヘルスケア株価指数)の上昇は、MSCI先進国ヘルスケア株価指数を構成するサブセクターの中でも構成比率が最も高い医薬品セクター(MSCI先進国医薬品株価指数:+32.1%)やバイオ医薬品、サービス、ライフサイエンスのサブセクターの上昇が牽引しました。バイオ医薬品セクターの上昇は特に際立ち、MSCI先進国バイオテクノロジー株価指数の騰落率は+67.7%と、2012年の+44.0%を更に上回りました。この結果、2年間の騰落率は141.6%に達したこととなります。

世界のバイオ医薬品セクターで低調だったのは新興国市場銘柄のみで、米連邦準備制度理事会(FRB)の量的金融緩和縮小の影響を巡る懸念とインド等、現地市場の規制を巡る懸念とが株価の下げ要因となりました。もっとも、新興国ヘルスケア株式(MSCI新興国ヘルスケア株価指数)の年間騰落率は+9.1%とプラスのリターンを維持しており、マイナスのリターン(-2.6%)に終わった新興国株式(MSCI新興国株価指数)を大きく上回ったことが注目されます。

※株価指数はすべて配当込、米ドルベース

バイオ医薬品銘柄:上昇は持続するか?

2013年10月発行の「ピクテ・グローバル・マーケット・ウォッチ:バイオ医薬品市場動向」では、バイオ医薬品銘柄の株価上昇について、(バブルの前段階に発生する)フロス(泡)の様相を認めつつも、株価の上昇の大半は改善基調の業界ファンダメンタルズ(基礎的条件)に裏付けられるものと結論を下しました。

新製品の好調な販売状況、米国の規制環境の改善、複数の主要製品の承認、治験の成功、高水準かつ持続的なM&A(合併・買収)活動等を勘案した結論です。事実、2013年10-12月期の動向は、上述のいずれの要因についても、良好な先行きを裏付けるものとなり、大手企業の好調な業績が投資家の買いに拍車をかけましたが、2014年入り後は、利益確定の売りが株価を下押しました。

ギリアド・サイエンシズ(米国)のC型肝炎治療薬「ソホスブビル」やテラバンス(米国)の慢性閉塞性肺疾患治療薬「アノロ・エリプタ」等の新製品が、予想通り、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けたことに加え、ユナイテッド・セラピューティクス(米国)の肺動脈高血圧症経口治療薬「リモジュン」等、予想外の承認もありました。また、アリアド・ファーマシューティカルズ(米国)は、重篤な副作用リスクを巡る懸念から一時販売停止となっていた白血病薬「アイクルーシグ」の販売再開を発表しました。同様にバイオジェン・アイデック(米国)の多発性硬化症薬「テクフィデラ」は、欧州委員会から画期的成分として販売承認を受け、当該市場での10年間の特許権と新規市場拡大の可能性を期待させました。治験関連のニュースでは、複数の良好な結果が発表されました。第55回米国血液学会(ASH)年次総会では、セルジーン(米国)が多発性骨髄腫患者向けの治療薬候補の良好な治験結果を発表しました。また、ジェロン(米国)は骨髄線維症治療薬候補について、カリョファーマ・セラピューティクス(米国)は白血病等の治療薬について、アセルロン・ファーマ(米国)は遺伝性の貧血治療薬についての良好な試験結果を発表しました。

その他の治療関連ニュースでは、ギリアド・サイエンシズが、C型肝炎治療薬「ソホスブビル」と、NS5Aタンパク阻害剤「レディパスビル」の合剤(錠剤)について良好な治験結果を発表しました。ジェノタイプ1型(GT1)C型肝炎ウイルス慢性感染患者に対しては、今後、インターフェロンならびにペグインターフェロン「リバビリン」投与の必要がなくなり、経口薬のみでの治療が可能となることが期待されます。

更に、バーテックス・ファーマシューティカルズ(米国)は 、R117C変異を持つ嚢胞性線維症(CF)患者に対するフェーズ3の治験結果を発表しました。当該治験では主要目標・肺機能改善は達成できなかったものの、18歳以上の患者に有意な薬効が示されたことから、製品(ならびに市場)拡大の可能性を残しました。規制・治療関連の悪材料としては、FDAが発表した LDLコレステロール(LDL-C)に関するガイドラインにより、リジェネロン・ファーマシューティカルズ(米国)ならびにアムジェン(米国)の抗PCSK9モノクローナル抗体に対する投資家の信頼が損なわれたことがあげられます。

M&A(合併・買収)関連ニュースでは、バイエル(ドイツ)がアルジェータ(ノルウェー)を、シャイアー(アイルランド)がバイロファーマ(米国)を買収、一方オンコメッド・ファーマシューティカルズ (米国)は、セルジーン(米国)と、がん治療薬の共同開発/販売について合意しました。

2011年9月以降、バイオ医薬品銘柄のバリュエーション(投資価値評価)水準は、2倍以上の上昇をみており、足元のEV/売上高倍率(対売高企業価値倍率)は約8倍と過去の平均(平準)レンジの上限に達していますが、ピクテでは状況を注視しつつも楽観的な見方を維持しています。企業ファンダメンタルズが改善し、増収率も年率15-20%を容易に達成する(またはこれを若干上回る可能性もある)ものとみているからですが、一方、初期開発段階の合成物の成功がバリュエーションに織り込まれていることには留意が必要です。医薬品開発はリスクの高い事業であり、治験成功の確率が上昇しているわけではありません。バイオ後続品(バイオシミラー)も難しい状況下にあります。バイオ後続品の見通しは、規制環境の透明性の改善ならびに(幾分の)規制緩和、検査費用支援等を受け、過去1年間を通じて大幅に改善されました。

一方、バイオ医薬品は、従来、現在ともに、後発品の競合とは無縁であるとみなされてきましたが、このような状況が一変する可能性も浮上しており、バイオ医薬品市場での地位を確立した企業にとっての試練となりそうです。もっとも、アムジェンやバイオジェン・アイデック等のバイオ医薬品大手は規制緩和などの恩恵を享受することとなりそうです。したがって、バイオ医薬品銘柄については、従来以上の銘柄厳選が求められると考えます。小型株ならびに超小型株には引き続き投資の機会が潜在するとはいえ、投資機会の発掘にはこれまで以上の困難さが伴うものとも考えます。

中国銘柄投資:リスクと対価

新興国市場は足元軟調な展開となっており、中国も例外ではありません。米連邦準備制度理事会(FRB)による量的金融緩和の縮小が新興国の金融市場に及ぼすものと懸念される負の影響に加え、中国の経済成長鈍化観測や新政権の掲げる経済転換計画の実行に伴うリスクが懸念されています。中国株式市場の2013年の騰落率は小幅の上昇に留まりました。

中国株式では、その他の新興国株式と同様に、ヘルスケア銘柄の騰落率が他の業種を上回りました。中国では医療インフラの近代化に加え、全国民への医療の浸透を目標とした医療改革が進行中です。同時に、中間所得層の急速な拡大に伴って、ヘルスケア関連支出の急速な拡大が認められます。ヘルスケア市場は(年率)20-30%の拡大を続け、関連企業が恩恵に浴しています。 ヘルスケア銘柄の騰落率が他銘柄の騰落率を大きく上回ったのは、高い利益成長が反映されたために過ぎないと考えます。

足元の不透明なマクロ経済が新興国市場、なかでも中国市場を取り巻く投資環境に影を落としています。とはいえ、選別眼鋭い投資家に対しては、先行きの予見不可能な状況が、新興国ヘルスケア銘柄の買い増し、または新規買入の好機を提供するものとも考えます。(当該セクターに)上昇基調が潜在していることは明らかです。可処分所得の増加と人口の老齢化を受け、ヘルスケア関連商品ならびにサービス消費は、GDP(国内総生産)成長率を上回る上昇を続けるものと考えます。多国籍企業はもちろんのこと国内企業もこれまで以上に恩恵を享受できるはずです。当然のことながら、中国企業も例外ではありません。もっとも、政府が経済を統制し、計画経済から自由市場経済への転換を管理しつつある国においては、解決困難な問題が多々存在することも事実です。

投資家が今年1年を通じて直面するリスクを明確に理解しているならば、予測の難しい市場の動きに乗じて対価を得ることが可能です。以下では3つの主要リスク、すなわち、反腐敗運動、地方政府の公開入札、新しい医薬品適正製造基準(GMP)について解説します。

反腐敗運動のきっかけは、企業経営者が現行犯で逮捕される姿を映した中国テレビの報道でした。中国では腐敗が蔓延しており、公立(政府経営)の病院に勤務する医師や看護婦が、適正な報酬を受ける手段として医薬品業界からのリベートを受け取ることが常態化しています。もっとも弊社独自の調査に基づくと、政府の反腐敗運動は範囲と時間が限定されたものであり、2013年7-9月期ならびに10-12月期が最も影響の大きかった時期だと考えられます。今後は、国内業界をグローバルな慣行に沿ったものへと転換させる長期目標を維持する一方で、「魔女狩り」的な摘発は回避するものとみています。したがって、これまで反腐敗運動の標的とされてきた企業は、長期的な投資妙味の高い企業と考えてよいかもしれません。

(業界筋によると、少なくとも10件とされる)地方政府の公開入札は、複数の企業の大幅値下げにつながるかもしれません。増大する医療費への対処に苦慮する地方政府は薬価の抑制を図っています。開発時からの時間の経過が相対的に長い製品や競合の厳しい製品への影響が最も大きくなるものと予想されます。したがって、創立からの時間の経過が相対的に短く、既存薬にない特徴を有する製品を揃えた企業の株式は、投資対象としてよいかもしれません。

最後に、医薬品業界は新しい医薬品適正製造基準(GMP)遵守への対応を求められています。中国国家食品薬品監督管理局(SFDA)は、2011年、血漿製品、ワクチン、注射物質の2013年末までの新しいGMP遵守を、一方、その他製品製造業者の製造施設については2015年末までの当該GMP遵守を義務付けました。ところが、血漿製品、ワクチン、注射物質の製造業者の40%が、 2013年末時点で新しいGMP遵守を果たしていません。また、2013年10-12月期にGMP遵守を果たしたのは、固形医薬錠剤製造業者の僅か20%に過ぎません。 GMPを遵守している企業と遵守していない企業に伴うリスクと投資機会は明らかです。

上述のリスクは主に個別銘柄固有のリスクとなりますが、2つの新しい、明確な投資テーマが浮上しつつあると考えます。先ず、中国の医薬品販売(小売)業者は、製造基準変更の影響を受けにくく、反腐敗運動緩和の恩恵を受けることから市場並みの成長を遂げるだろうということです。依然として分断された中国医薬品業界においては大手販売業者に注力することも重要だと考えます。当該企業は業界統合を促進し、安定して市場を上回る成長を遂げることが可能だと考えるからです。次に、質の高い国内企業に注力することです。国内企業の選好と国内基準遵守ならびに国内慣行重視が、国内優良企業への注目を集めていくものと考えます。

(※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。)

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