ヘルスケア市場:1-3月期の振り返りと展望 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ヘルスケア市場:1-3月期の振り返りと展望 バイオ医薬品 グローバル

2014/04/15グローバル

ポイント

2014年1-3月期のヘルスケア・セクターは、引き続き世界の株式市場を上回るリターンをあげましたが、3月後半のバイオ医薬品銘柄急落の背景が関心を集めています。バリュエーションは極めて割高ではありませんが、今後は、セクター内の二極化の動きが強まることも想定されます。優良銘柄の厳選がこれまで以上に重要になるものと考えます。

ヘルスケア市場の振り返りと展望

2014年1-3月期のヘルスケア市場の騰落率は、 MSCI世界ヘルスケア株価指数で、MSCI世界株価指数を4.5%(米ドルベース、配当込)上回って良好な相対リターンを維持したものの、3月後半にはバイオ医薬品銘柄の株価急落に見舞われ、 超過リターンの10ポイント強を失いました。バイオ医薬品銘柄の下落の要因として挙げられたのは、バイオ医薬品銘柄のこれまでの大幅な株価上昇の反動、地政学リスクの高まりを受けたリスクの抑制、(極めて高水準にある)米国の薬価水準の持続性を巡る懸念等、広範囲に及んでいるようです。バイオ医薬品銘柄が乱高下する一方で、ヘルスケア・セクターのその他のサブ・セクター、なかでも、後発医薬品セクターならびに大型医薬品セクターは、相対的に良好な展開となりました。

自社開発の指数で測った後発医薬品セクターの2014年1-3月期の騰落率は+12.5%と堅調さが際立ちました。アクタビス(アイルランド)によるフォレスト・ラボラトリーズ(米国)の大型買収等から、マリンクロット・ファーマシューティカルズ(アイルランド)によるケイデンス・ファーマシューティカルズ(米国)の買収等のより小型の買収に至る合併・買収(M&A)活動が少数の銘柄の株価の上昇をけん引しました。テバ・ファーマシューティカルズ(イスラエル)の株価は大きく反発しました。新CEO(最高経営責任者)の就任と多発性硬化症治療薬コパキソンの週3回投与薬の好調な販売に加え、コパキソンの特許の一つが米国最高裁で再審されることが好感されました。週3回投与のコパキソンは、承認が予想される毎日投与のコパキソンの後発医薬品(モメンタ・ファーマシューティカル(米国)ならびにマイラン(米国)製造)との競合が予想されるため、その影響の低減を図って開発されたものです。新興国株式市場の直近の数四半期の騰落率は、先進国株式市場の騰落率を下回る状況が続いていますが、MSCI新興国ヘルスケア株価指数の1-3月期の騰落率は+1.6% (米ドルベース、配当込)となり、 MSCI新興国株価指数の-0.8%(同)を上回っています。もっとも、個別銘柄には株価上昇率の高い銘柄も散見されます。例えば、中東ならびに北アフリカでの売上が大きいヒクマ・ファーマシューティカルズ(ヨルダン)の上昇率は+35%を超えるものとなりました。今期業績ならびに業績見通しともに良好だったことが好感されました。

先進国市場に対する新興国市場の相対リターンは依然低調ですが、バリュエーション(投資価値評価)格差が縮小傾向にあること(PDF図表1参照)に加え、後述の通り、ファンダメンタルズ(基礎的条件)が健全であることから、中・長期投資は期待できるものと考えます。

大型医薬品セクターの2014年1-3月期のリターンは、MSCI世界医薬品株価指数で+7.0%(米ドルベース、配当込)となりました。医薬品の開発に進展がみられたことが、おそらく、リターンに最も大きく貢献したものと考えますが、「安全への逃避」の動きが反映された可能性も否めません。

グラクソ・スミス・クライン(英国)の癌免疫治療薬MAGE-A3や、ロシュ(スイス)のグリシン再取り込阻害剤ビトペルチンによる統合失調症治療薬等、開発中の複数の医薬品については悪材料が出たものの、その大半は、リスクが高く、成功の確信度が元々低いものに限られています。

大型医薬品の中で特に好調だったのは、イーライ・リリー(米国)、メルク(米国)、アストラゼネカ(英国)の3社で、医薬品の開発に予想外の進展がみられたことから、イーライ・リリーとメルクは2桁の株価上昇、アストラゼネカは8%を超える上昇となりました。イーライ・リリーについては、がん治療に関する新しいデータと医薬品の開発の進展が、一方、アストラゼネカについては、免疫腫瘍学への貢献が期待されました。一方、メルクについては、米国食品医薬品局(FDA)諮問委員会が抗血小板治療薬ボラキサルについて好意的な反応を示したことや、(腫瘍免疫療法のためのメルクのPD-1抗体である) MNK-375が予想より早い段階で申請されたことが好感されました。これに対し、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)は、同社のPD-1抗体に進展がみられず、また、割高感もあったことから、出遅れました。メルクは、過去にも、他社に後れを取っていた糖尿病治療薬ジャヌビアおよび子宮頸がん予防ワクチンのガーダシルの双方について巻き返しに成功したことがあり、このことを覚えている投資家が腫瘍免疫薬PD-1の開発競争において同様の展開を予想し始めているのかもしれません。状況は数ヵ月のうちにより明らかとなるはずです。メルクならびにブリストル・マイヤーズ・スクイブは、ロシュならびに(開発が未だ初期段階にある)アストラゼネカともに、腫瘍学分野の主要な学会である米国がん治療学会議(ASCO)の場で、研究成果の進展について発表することが予定されているからです。腫瘍学以外の学会では、糖尿病ならびに肝臓病分野の学会で、サノフィ(フランス)、イーライ・リリー、アブビー(米国)3社の競合状況が明らかとなるものとみています。数年前と同様、投資家が、配当や配当性向よりも、新薬の開発やその進展への注目度を強めていることには勇気づけられます。投資家の態度の変化の背景には、安定さを増すマクロ環境と非常に興味深い研究成果があるのではとみています。

医薬テクノロジー・セクターの2014年1-3月期の騰落率はMSCIヘルスケア機器・用品セクターで+4.6%(米ドルベース、配当込)となりました。なかなか成果の上がらなかった心臓ならびに歯列矯正の分野で良好な進展がみられました。一方、新製品開発については、成功例と同様、失敗例もみられました。糖尿病分野のデクスコム(米国)、歯科分野のアライン・テクノロジー(米国)、歯列矯正分野のトルニエ(オランダ)は、引き続き、堅調でした。また、大型株ではインテュイティブ・サージカル(米国)が最も好調でした。過去数四半期の間くすぶっていた問題が解決には至らずとも落ち着いたとのグローバル4 2 ピクテ投信投資顧問株式会社 巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。見方が大勢となったからです。エドワーズ・ライフ・サイエンス(米国)とその主力商品である経カテーテル生体弁には、メドトロニック(米国)と同社の代替商品、コアバルブ(経カテーテル大動脈弁留置システム)の詳細が明らかになるにつれて、競合圧力が増しつつあるようです。メドトロニックは、ランダム化比較臨床治験(治療群のみの実験に対して、治療群に加え、偽薬を投与する対照群も用いた実験的治療)の価値を再確認させました。同社は、抵抗性高血圧症治療法としての腎臓脱神経に関するランダム化比較臨床治験が、治療群のみを用いた非ランダム化比較臨床治験で得られた効果を再生することが出来なかった旨の報告を行っています。当治験は腎臓脱神経に関する初の非ランダム化比較臨床治験であり、同社に後れを取る競合各社は、計画見直しの必要に迫られています。新規株式公開(IPO)が再び活況を呈していることにも先行きが期待されます。今後のIPO候補銘柄群には、整形外科関連製品大手バイオメット(米国)も含まれます。医療テクノロジー・セクターについては、中核事業の持続的成長が見込まれますが、治療価値、経済価値の両方を備えた「破壊的な」新製品を厳選し、注視していきたいと考えます。

ヘルスケア・サービス・セクターの2014年1-3月期の騰落率はヘルスケア・セクター全体の騰落率と同水準でした。医薬品開発業務受託機関(CRO)、ヘルスケア情報テクノロジー機関(HCIT)、マネージドケア機関(MCO)に対し、市場は概ね好意的でしたが、第4四半期決算が相対的に低調だったシグナ(米国)ならびにウェルケア・ヘルス・プランズ(米国)は例外となりました。薬剤給付管理機関(PBM)ならびに薬品流通機関銘柄の騰落率が強弱交錯だった一方で、医療供給者機関ならびに医療保険施設銘柄は、マイナス基調でした。また、業界統合の動きが続き、コミュニティー・ヘルス・システムズ(米国)がヘルス・マネジメント・アソシエーツ(HMA、米国)を買収、ブルックデール・シニア・リビング(米国)のエメリタス(米国)買収は、国内初の本格的な高齢者介護施設間の統合となりました。その他、マッケソン(米国)は、セレシオ(ドイツ)の株式の過半数を取得しました。医療保険制度改革法(オバマケア)に基づく医療保険制度については、加入手続きの締切期限が近づいており、これまでに600万人以上がウェブサイト上での登録を完了しています。メディケア・アドバンテージ・レートの最終数値の発表が予定されていますが、マネージドケア機関も2015年のレート案を申請することとなっています。悪天候のため、新規保険加入者のマネージドケア機関利用率は小幅の上昇に留まりました。メディケード(米国の低所得者や身体障害者などを対象とした公的医療制度)受給者が増加する州の無保険患者の入院は激減しましたが、当然の結果として、入院患者数も減少傾向が続きました。マサチューセッツ州の例に倣うと、救急患者数の増加が予想されます。

メディケードの対象となる患者は、主治医へのアクセスが限られるため、緊急治療室での治療を受けざるを得ないためです。薬品流通機関は、処方箋の増加と薬価の大幅上昇の追い風を享受しつつ、買収と合弁事業に注力するものと予想されます。一方、薬剤給付管理機関の先行きは不透明です。医療給付・薬品流通業界の変化に際して、立ち位置を確保しなければならないためです。医薬品開発業務受託機関は、医薬品ならびにバイオ医薬品セクターと同様の状況にあり、(医療事務)外注の増加の恩恵が期待されます。

米国医療制度の近代化に関わるヘルスケア情報テクノロジー機関については、変動の大きい状況が続きそうです。状況を変える(好転させる)要因としては、健康診断書のデジタル化、医療コーディングの更新導入(生涯電子カルテの有効利用(Meaningful Use 2)ならびに国際疾病分類(ICD-10))等が挙げられます。2014年1-3月期には、ヘルスケア・サービス・セクターでも新規株式公開(IPO)がありましたが、キャストライト・ヘルス(米国)のIPOは初日の取引で140%上昇した後、値を下げたとはいえ、成功裏に終わりました。IMSヘルス(米国)等のIPOがこれに続きました。

バイオ医薬品セクターの2014年1-3月期の騰落率は+0.5%(米ドルベース、配当込)となりましたが、上昇の後、3月中に10%急落しています。本レポートでは、過去数四半期にわたり、バイオ医薬品銘柄の大幅上昇に触れ、2011年の上昇局面入り以降、大幅な調整はもちろんのこと、一時的な停滞局面さえなかったにもかかわらず、株価の上昇が健全なファンダメンタルズ(業界・企業の基礎的条件)に裏付けられたものであることを解説しました。また、2013年10月29日発行のピクテ・グローバル・マーケット・ウォッチ「バイオ医薬品市場動向」では、バイオ医薬品セクターがバブルの領域にあるかどうかを検証しましたが、バリュエーションの妥当な水準と堅固なファンダメンタルズに基づき、バブルは発生していないとの結論を下しました。当レポート発行以降の半年間についても、バリュエーション指標は、極めて割高な状況ではなく、PDF図表2に記載の数値もバブルを示唆するものとはなっていません。また、2014年1-3月期の展開はファンダメンタルズの改善を示唆するものであり、(後述のソホスブビルの薬価を巡る懸念等の)足元の悪材料は、少なくとも予見される将来においては、対処可能だと考えます。バイオ医薬品セクターのIPOとその後の資金調達を取り巻く環境は良好で、年初来の資金調達額は、2013年通年の調達額の半分以上となっています。2014年1-3月期のIPOの件数は25件に上りますが、投資家のIPO参加意欲には偏りが見られず、バリュエーションは、概ね、ファンダメンタルズに裏付けられたものとなっています。3月末の想定外の出来事としてあげられるのは、民主党下院議員3名が、ギリアド・サイエンシズ(米国)に対し、同社のC型肝炎治療新薬ソホスブビルの価格設定の妥当性の説明を求める書簡を送ったことです。当該議員は、ソホスブビルを標的としたことについて、(高額で薬剤を購入できない)国民を擁護するために最も適切な薬品の一つであるとし、(国際比較の観点からしても)高額な米国の医薬品とその持続性は由々しい問題であると説明しています。米国の(富の)二極化に対処する明確な政治手法が無いことが問題であるようにも思われます。前述の下院議員からの書簡が、近い将来あるいは中期的に、米国の薬価設定の変更をもたらす可能性は低いと考えますが、このことが、過去3-6ヵ月間の株価上昇に伴う利益確定売りを含んだバイオ医薬品セクターの大幅下落を誘発したものと考えます。

バイオ医薬品企業の中では、インターセプト・ファーマシューティカルズ(米国)の値上がり率が+300%を上回ったことが特筆されます。オベチコール酸(OCA)が非アルコール性脂肪肝炎に有効であることを示唆する治験結果が好感されました。インターミューン(米国)の株価も+100%を超える上昇となりました。肺の特異症状である特発性肺線維症に対する治療薬ピレスパの第三相治験結果が好感されました。両社の治験の進展は、バイオ医薬品市場における2つの大型医薬品誕生の可能性と研究開発における高い生産性の確認を反映するものと考えます。バイオジェン・アイデック(米国)とアイシス・ファーマシューティカルズ(米国)は、骨髄性筋萎縮症治療薬SMNRxについての好材料を、ニューロクライン・バイオサイエンシス(米国)は遅発性ジスキネジアについての好材料を発表しました。ファーマサイクリックス(米国)は、良好な結果が得られたため、慢性リンパ性白血病研究を予定に先立って終了したことを発表しました。これに対し、インスメッド(米国)の発表には好材料、悪材料の両方が含まれ、ジェロン(米国)のイメテルシュタットは治験差止めとなりました。米国食品医薬品局(FDA)ならびに欧州医薬品庁(EMA)の承認件数は高水準で推移し、予想された案件も予想外の案件もありました。後者の例として白金製剤耐性卵巣癌治療薬ヴィンフィニットの販売承認の推奨と欧州連合(EU)でのエンドサイト(米国)とのコンパニオン診断があげられます。

大型株には前四半期までとは異なり苦戦する銘柄が散見されました。ギリアド・サイエンシズは、薬価を巡る懸念が嫌気され、一方、セルジーン(米国)はバリュエーション、利益予想、特許等を巡る懸念で売られました。これに対し、アムジェン(米国)とバイオジェン・アイデックは開発薬の増加とその進展が好感されました。また、アレクション・ファーマシューティカルズ(米国)は税徴収最適化を受けて買われました。今後も、治験ならびに規制関連の報告が多数予想されますが、かかる報告が、特に、学会が多い7-9月期を中心に、株価に反映されるものと考えます。

2014年1-3月期の大型銘柄の騰落率は格差が開きましたが、この先、バイオ医薬品セクターのその他のサブセクターでも、同様の状況が起こり得ることは確実と思われます。2年から3年に及んだバイオ医薬品セクターの「ベータ・トレード」相場には終わりが近づいているように思われます。この先は、優良銘柄の厳選が、パフォーマンスをけん引することとなるでしょう。バリュエーションは(高過ぎることなく)良好な水準にあります。また、健全な新規株式公開(IPO)市場と、多くの企業による(有望なものもそうではないものも含む)疾病治療のための新薬の治験のおかげで、ユニバースの構成銘柄数は大幅に増加しています。

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