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EU(欧州連合):ロシア制裁の影響 欧州/ユーロ圏 ロシア

2014/08/04グローバル

ポイント

ロシア危機は、貿易、エネルギー、金融等、複数の経路を通じて、ユーロ圏の脆弱な景気回復に影響を及ぼす可能性があります。中核国では、ドイツやイタリアへの影響が最も懸念されます。今のところ、欧州経済全体への影響は限定的ですが、企業投資や個人消費等に間接的な影響が及ぶ可能性も否めず、今後の進展が注目されます。

EUのロシア制裁強化

2014年7月17日のマレーシア航空機撃墜と、不安定なウクライナ情勢の継続を受け、欧州連合(EU)は、ロシアに対する制裁の強化を決定しました。ロシア首脳に対し、ウクライナ(東部)の親ロ派武装勢力への支援停止を説得することが目的だとされています。個人と企業を対象としたこれまでの制裁に加え、EU首脳は、ロシアの金融、エネルギー、軍事の各セクターを制裁の対象とすることを認めました。今回の追加制裁には、ロシア最大級の国営銀行各行に対し、ユーロ圏資本市場へのアクセスを禁じる措置も含まれます。また、ロシア石油産業の近代化を可能とする非在来型の原油生産装置の輸出を禁じ、武器禁輸措置も発動します。

更に、3企業と8名の個人を新たにリストに加えることで、23企業と95名の個人をEUの制裁対象としました。

追加制裁は、7月31日をもって効力を発し、今後、3ヵ月毎に見直しが行われます。

追加制裁の欧州経済への影響

地政学的緊張の高まりがユーロ圏経済の脆弱な回復に波及することが懸念されており、域内の経済成長が予想に届かない下方リスクが示唆されています。ロシアとウクライナを巡る危機の影響は、複数の経路を通じて、欧州経済に波及するものと考えますが、貿易、エネルギー、金融セクターへの影響は、特に注目されます。

中核国の小国への影響

ユーロ圏の貿易相手国としてのロシアの重要性は、近年、増す一方です。ユーロ圏のロシア向け財の輸出が、汎ユーロ圏の輸出に占める比率は、2001年の2.8%から2008年には5%に上昇してピークを付けた後、2013年には4.1%に低下しています。また、金額ベースでは、2001年の250億ユーロから、2013年には870億ユーロ(GDP比:0.9%)に拡大しています(図表1参照)。

図表1:欧州各国のロシア向け輸出比率
(総輸出に占めるロシア向け輸出の比率、2013年平均)

 

出所:ピクテ・グループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

入手し得る最も直近のデータによると、2014年5月のユーロ圏のロシア向け輸出は、前年同月比-13.8%と減少が目立つものの、他国向け輸出の増加(米国向け:同+9.3%、中国向け:同+9.5%)がこれを相殺し、ロシアの需要減退の影響を和らげています。ユーロ圏構成国では、フィンランド、オーストリア、ドイツ、イタリアが、ロシアとの関係が最も緊密な国のようです。

業種セクターでは、工業製品、なかでも機械ならびに車両セクターの影響が最も大きく、2013年の輸出全体に占める両セクターの輸出は46%に達しています。

ロシアの需要の縮小の影響を測るのは容易ではありませんが、海外経済協力開発機構(OECD)のデータを用いて算出される、海外最終需要の形で表された国内付加価値の、総付加価値に占める比率が参考になるかもしれません。ロシア向け輸出の10%の減少がGDP(国内総生産)に及ぼす影響は、ドイツとイタリアの場合で0.1%程度に過ぎず、フランスとスペインの場合はこれを下回ります。一方、フィンランドの場合は、GDPを0.2%押し下げる可能性もあります。

ロシアとユーロ圏とに密接な関係を持つ東欧各国の景気減速を勘案すると、影響は更に広がる可能性があります。

ロシア産エネルギー製品への依存度

2つめの経路は、エネルギー・セクターです。ユーロ圏はエネルギー製品の純輸入圏であり、ロシアが主要な供給国となっています。EU統計局(ユーロスタット)のデータによると、ユーロ圏のガス輸入の25%がロシアから輸出されます。ユーロ圏中核国の中で、ロシア産原油・ガスへの依存度が最も高いのはドイツで、イタリアがこれに続きます。また、規模の小さい国では、フィンランドの依存度が最も高くなっています。

地政学的リスクの高まりを受けてエネルギー価格が上昇し、企業の減益と個人消費の減退を通じて、GDPが縮小する可能性もあります。

欧州中央銀行(ECB)の調査では、エネルギー価格の10%の上昇が永続すると、実質GDP成長率は、1年で0.1%程度、2年で0.2%程度、押し下げられるとのことです。もっとも、影響は国毎に大きく異なり、輸入依存度の高い国が最も大きな打撃を被ります。ドイツの場合は、1年で0.2%程度、2年で0.3%程度の影響が出る可能性も否めません。

フランスの銀行への影響

3つめの経路は、金融セクターです。国際決済銀行(BIS)の調査によると、ユーロ圏中核5ヵ国の中で最も大きな影響を受けるのはフランスの銀行であり、イタリアの銀行がこれに続くとのことです。フランスの銀行は、ロシアの企業、個人、公共セクター向けに約380億ユーロの融資を行っています。もっとも、ロシア向け融資は、銀行の総資産に占める比率でみると限定的です。したがって、欧州の銀行がシステミック・リスク(金融システム全体が不全に陥る危険性)に見舞われる可能性は、現状では限定的だと考えます。

ロシア経済は減速

2014年1-3月期のロシアのGDP成長率は、前期比-0.4%(季節調整後)となり、2009年4-6月期以来、最大の落ち込みとなりました(図表2参照)。支出面でプラスの貢献をしたのは個人消費だけでした。今後、制裁が更に強化されることとなれば、ロシアへの信頼が損なわれ、消費の先行きにもマイナスの影響が及びかねません。

図表2:ロシア実質GDP成長率の推移
(前期比、年率、期間:2004年第1四半期(1-3月期)~2014年第1四半期(1-3月期))

 

出所:ピクテ・グループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

ロシアの歳入のほぼ半分が原油・ガス輸出によるものであり、欧州ならびに米国の資本市場へのアクセスが禁止されれば、2013年4-6月期以降下降基調を辿る企業活動と設備投資に、大きなダメージを与える可能性があることにも留意が必要です。ロシア経済は、今後数四半期にわたり、マイナス成長を余儀なくされる公算が高いものと予想されます。

まとめ

ロシア危機は、貿易、エネルギー、金融セクター等、複数の経路を通じて、ユーロ圏経済の脆弱な回復に影響を及ぼすことが予想されます。影響の程度は国によって異なります。

・ドイツ、イタリア、フィンランド、オーストリアは、貿易ならびにエネルギー面での影響を大きく受けそうです。

・欧州の銀行がシステミック・リスクに見舞われる可能性は限定的です。銀行の総資産に占めるロシア向け融資が1%以下に留まるからです。

・間接的な影響もあなどれません。ウクライナ危機の拡大は、EU域内の消費者心理と企業心理を悪化させ、個人消費と設備投資の落ち込みにもつながりかねません。

もっとも、ロシア制裁のユーロ圏経済全体への影響は、今のところ限定的であることから、現時点で、域内経済の成長見通しを修正する必要はないと考えます。ユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)も、2014年7-9月期のユーロ圏GDP成長率が、前期比+0.3%程度となることを示唆しています。

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