ヘルスケア市場: 2015年1-3月期の振り返りと展望 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ヘルスケア市場: 2015年1-3月期の振り返りと展望 グローバル バイオ医薬品

2015/04/27グローバル

ポイント

ヘルスケア・セクターの2015年1-3月期の相対パフォーマンスは引き続き好調でした。ヘルスケアサービス・セクターが2桁の上昇となり、ヘルスケア・セクター全体をけん引しました。新興国ヘルスケア・セクターは、人口動態や経済発展の観点から、長期的な成長が期待されると考えます。

ヘルスケア市場:2015年1-3月期の振り返り

世界の株式市場が上下の振れの大きい展開となる中、2015年1-3月期のヘルスケア・セクターの相対パフォーマンスは引き続き、好調でした。MSCI世界ヘルスケア株価指数(米ドルベース、配当込み)の騰落率は2015年1-3月期+8.3%と、MSCI全世界株価指数(米ドルベース、配当込み)の同+2.3%を上回りました。ヘルスケア・セクターのファンダメンタルズ(基礎的条件)が良好であることに加え、マクロ経済動向ならびに地政学的状況が当セクターの追い風となりました。2014年10-12月期に続き、ヘルスケアサービス関連がヘルスケア・セクター全体をけん引しました。医薬品やバイオ関連銘柄はヘルスケア市場全体と同水準の騰落率となりましたが、ヘルスケア機器は出遅れました。MSCI新興国株価指数(米ドルベース、配当込み)の騰落率は同+2.2%に終わり、前期に続き先進国の騰落率を下回りましたが、MSCI新興国ヘルスケア株価指数(米ドルベース、配当込み)の騰落率は同+6.7%となり、新興国市場全体の騰落率を上回りました。マクロ経済動向ならびに地政学的状況が、前期に続き、ヘルスケア・セクターの支援要因となりました。

世界経済は、原油安にもかかわらず、再び鈍化の様相を呈しており、米国の経済指標が(一時的な)景気減速を示唆する一方で、中国の2015年の実質GDP成長率予想は7%に下方修正されています。

株式市場については、欧州市場が(ユーロ・ベースでは)2桁上昇を実現する勢いで底堅く推移する一方、米国市場は軟調に推移する、昨年とは正反対の状況が展開されています。

反緊縮を掲げるギリシャ新政権の債務返済を巡る威嚇的な言動、ロシア(のプーチン大統領)によるウクライナ紛争の拡大(ミンスクまでのあからさまな侵攻)、中東の高まる緊張等をものともしない欧州株式市場の上昇は驚異的です。

世界経済の成長鈍化や国際的な緊張の高まりに加え、米国の利上げが後ずれする公算が高いことから、配当利回りが高く、景気変動に左右されにくいディフェンシブ銘柄が世界的に注目された結果、MSCI医薬品株価指数(米ドルベース、配当込み)の騰落率は同+8.2%となりました。

大型医薬品銘柄

2015年1-3月期に大型の医薬品銘柄が買われたのは、ディフェンシブな特性が注目されたことに加え、新薬開発関連のニュースが相次いだためです。ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)は治療歴を有する転移性扁平上皮がんのオプジーボ(ニボルマブ)治療が、過去に例のない短期間で、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得たことを発表しました。ファイザー(米国)は、初のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬インブランスが乳がん治療薬としてFDAの承認を得たことを発表しました。また、ノボ・ノルディスク(デンマーク)は、ペプタイド経口治療薬候補の概念証拠研究や超速効型インスリン治験に関するデータ等、複数の良好な治験結果を発表しました。同社は、基礎インスリン製品トレシーバの心血管転帰評価試験(DEVOTE試験)の良好な解析結果が得られたことを併せて発表しており、トレシーバの再承認をFDAに申請するものと見られます。

M&A(合併・買収)関連ニュースでは、2つの案件が注目されました。1つ目はジェネリックの注射剤に強みを持つホスピーラ(米国)のファイザーによる買収です。ファイザーは当買収により、グローバル既存医薬品事業部門の強化を図るものと思われます。もうひとつは血液がん治療薬の開発を手掛けるファーマサイクリクス(米国)のアッヴィ(米国)による買収です。

後発医薬品、特殊医薬品銘柄

後発医薬品(ジェネリック)セクターならびに特殊医薬品セクターは好調でした。バリアント・ファーマシューティカルズ(カナダ)によるサリックス・ファーマシューティカルズ(米国)の買収、マリンクロット(米国)によるイカリア(米国、未公開)の買収、シャイアー(アイルランド)によるNPSファーマシューティカルズ(米国)の買収等、活発なM&Aがけん引役となりました。

米FDAから初めてバイオ後続品(バイオシミラー)承認を受けたサンド(スイス)のコロニー刺激因子フィルグラスチム-sndzには2009年オバマ大統領が署名・成立させた医療費負担適正化法(ACA、通称オバマケア)により定められた手続きが適用されました。外挿表示ならびに化学品名使用権は、後発医薬品メーカーに有利に働くものとみられます。(薬品名には製造メーカーを示す接尾辞をつけることが義務付けられており、-sndzはノバルティス傘下のサンドの製品であることを示します)。

欧州でも複数のフィルグラスチムの後発医薬品が承認されており、一定数の白血球の合成を促進する顆粒球刺激因子(G-CSF)が合成されています。当該後発医薬品は、5年間で市場シェアの50%(数量ベース)を占めるに至っており、これまでにも何度か議論してきた通り、バイオシミラーが市場の相当のシェアを占める日が来るとの考えを裏付けるものと考えます。もっとも市場シェアの拡大には時間を要し、後発医薬品の場合とは異なって、市場参加者は限定されると考えます。

後発医薬品協会年次総会では、2015年の後発医薬品の登録ならびに承認件数目標を1,000件とする「目標達成期限」の設定がFDAから発表されました(もっとも、2014年の承認件数が409件に留まっていることから目標の達成は疑問視されています)。後発医薬品セクターは、ファンダメンタルズが良好であることに加え、バリュエーション(投資価値評価)も魅力的であることから、ジェネリック市場は極めて有望であると見ています。世界の人口動態、新興国市場の拡大、バイオ後続品の市場拡大予想も好材料です。

ヘルスケアサービス・セクター

MSCIヘルスケア・プロバイダー株価指数(米ドルベース、配当込み)のパフォーマンスは前期に続いて好調で、2015年1-3月期の騰落率は+13.5%と2桁の上昇となりました。公表されたM&Aに加え、M&A観測で買われた薬剤給付管理機関銘柄がけん引役となりました。ヘルスケア・サービス関連銘柄も好調なパフォーマンスとなりましたが、銘柄ごとの差が大きくなりました。施設関連銘柄は、2014年10-12月期に大きく売られましたが、オバマケアの助成金に関するキング対バーウェル裁判の判決に対し、最高裁判所が、「税控除は州が設定した医療保険市場のみに適用され、連邦政府が運営する交換取引市場を利用する州には適用されない」とする原告の主張を退けたことから、幾分値を戻しました。口頭弁論が施設側を支援するものとなったことに加え、入院患者数、入院患者当たりの売上、債務の削減も好感されました。公的医療保障制度メディケアおよびメディケイドの運営主体であるCMSは、医療費算出基準を件数ベースから金額ベースに変更する動きを加速させており、革新的な医療モデルを追求する資金提供者(連邦政府、保険会社等)には朗報となっています。

米国政府はイースター休暇に先立って、医療費の持続的成長率(SGR)の修正を試みました。ヘルスケア・サービス・セクターは、過去半年間、好調だったことに加え、キング対バーウェル裁判の最終判決を控えていることから、2015年4-6月期は緩やかな上昇に留まる公算が高いと考えます。

バイオ医薬品セクター

MSCIバイオ医薬品株価指数(米ドルベース、配当込み)の2015年1-3月期の騰落率は+7.6%となり、不安定な局面も散見されたものの堅調な地合いを維持しました。「バイオテック・バブル」を巡る懸念が再浮上しつつありますが、悲観的な見方に対しては、以下の事実をもって、慎重な反論を試みたいと考えます。第一には、大型株の2015年予想利益に基づくPEGレシオ(予想株価収益率(PER)を一株利益(EPS)の予想成長率で除した数値)が1倍程度に留まっており、バブルとはほど遠い水準にあることです。また、研究開発についても、積極的な投資が維持されているように思われます。

FDAが2014年に承認した新規化合物は41件ですが、2015年1-3月期には10件の承認があり、今年も出だしは順調です。アルツハイマー症は治療が最も困難な疾病の一つとされますが、期中、フランスで発表されたデータは、アルツハイマー症のメカニズムを説明する「アミロイド・ベータ」仮説の立証につながるものと考えられます。アルツハイマー症治療薬候補BIIB037のフェーズ2治験結果は、初期アルツハイマー症患者の認知機能の低下を有意に抑制したことを示すものとなったことから、バイオジェン・アイデック(米国)と同社の提携先であるエーザイ(日本)の株価はともに大幅上昇しました。エスペリオン・セラピューティクス(米国)は、高コレステロール血症治療薬候補ETC-1002療法のフェーズ2治験の良好な結果を発表しました。また、ポルトラ・ファーマシューティカルズ(米国)は急性疾患における抗凝固作用の無効性について、ニューロクライン・バイオサイエンシス(米国)は子宮内膜症治療薬エラゴリクスについて、いずれもフェーズ3治験の良好な結果が得られたことを発表しました。

米FDAの画期的治療指定ならびにM&A

米FDA関連のニュースでは、インターセプト・ファーマシューティカルズ(米国)の肝線維症を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療薬候補、ブルーバード・バイオ(米国)の輸血依存βサラセミア患者の遺伝子治療候補、セルデックス・セラピューティクス(米国)の神経膠芽腫の治療薬候補が、いずれも画期的治療薬の指定を受けました。

期中のM&Aは株価が上昇する中、活発でした。アッヴィ(米国)はがん治療薬の開発を手掛けるファーマサイクリックス(米国)を、シャイアー(アイルランド)は希少疾病用医薬品のNPSファーマシューティカルズ(米国)を、ブリストル・マイヤーズ・スクイブはがん免疫療法薬の開発を手掛ける未上場のフレクス・バイオサイエンシズ(米国)を、テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ(イスラエル)は中枢神経系治療薬の開発を手掛けるオースペックス・ファーマシューティカルズ(米国)を買収しました。

公開株式の増資(1-3月期で90億ドル強)ならびに新規株式公開(同12億ドル強)も投資家の旺盛な需要を集めました。バイオ医薬品セクターの黒字企業のPEGレシオは1倍程度と妥当な水準に留まっています。中小型株の中には、将来の技術開発を見込んで割高な水準で取引される銘柄も散見されますが、大型株はPERよりも利益成長と利益見通しの修正に基づいて取引されていると考えます。市場にバブルの泡が潜んでいる可能性を否定するわけではありませんが、大型株や製品開発の進展の裏付けがある銘柄には投資の好機が数多く存在すると考えます。正確なデータに欠け、買われ過ぎのバイオ医薬品銘柄は避けることが賢明だと考えます。

新興国ヘルスケア・セクター

新興国ヘルスケア・セクターは、低迷が続く新興国株式市場全体との比較では良好なパフォーマンスをあげた一方で、先進国ヘルスケア・セクターに対しては出遅れました。サン・ファーマシューティカル・インダストリーズ(インド)ならびにセルトリオン(韓国)の2銘柄がMSCI新興国ヘルスケア株価指数の上昇に大きく貢献しました。前者はランバクシー・ラボラトリーズ(インド)の買収手続きを完了したことが好感されました。一方、後者の株価が上昇した背景には、ファイザー(米国)が同社のバイオシミラー事業の提携先であるホスピーラ(米国)を買収したこと、リウマチ関節炎治療薬レミケードのセントリオン版であるレムシマの欧州主要市場での承認が期待されることの2点が挙げられます。

インド市場では、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズ以外の銘柄も好調でした。中国市場は相次ぐ増資と薬価引き下げを嫌気して軟調な出だしとなりましたが、その後は上昇に転じ、2014年末と同水準で2015年3月末を迎えました。新興国のヘルスケア銘柄は中・長期的な上昇が期待されると見ています。長期投資にはオーバーウェイト(ベンチマークを上回る配分)を推奨します。

医療テクノロジー・セクター

2015年1-3月期の医療テクノロジー・セクターは、相対的に良好なパフォーマンスをあげた2014年10-12月期から一転、軟調な出だしとなりました。新興国ヘルスケア・セクターと同様、メドトロニック(米国)とボストン・サイエンティフィック(米国)の2銘柄がMSCIヘルスケア機器株価指数の上昇の半分近くに貢献しました。

両社ともに良好な企業ファンダメンタルズが好感されました。メドトロニックは、コヴィディエン(アイルランド)との合併手続きが完了したことから、新会社の合併の効果が株価に織り込まれつつあります。一方、ボストン・サイエンティフィックについては、事業再編の進展、経皮的左心耳閉鎖デバイス「ウォッチマン」ならびに心室性頻脈性不整脈治療機器エンブレムS-ICDのFDA承認、ステント関連の特許侵害訴訟を巡るジョンソン・エンド・ジョンソンとの和解、アメリカン・メディカル・システムズ(米国)の泌尿器系治療事業の買収(買収金額:16億ドル)が好感されました。エドワーズ・ライフサイエンス(米国)は、2015年3月中旬開催の米国心臓病学会議で発表した経カテーテル心臓弁サピエン3の良好なデータが好感されました。

中小型株は、企業ファンダメンタルズの改善に伴って買われました。デクスコム(米国)は血糖値測定機器の改善、ソラテック・コーポレーション(米国)ならびにハートウェア(米国)は、左室補助人工心臓(LVAD)市場におけるシェア拡大が好感されました。

株式新規公開ならびに増資申請はともに限定的でした。医療テクノロジー・セクターでは、従来同様、優秀な経営陣を擁し、有望な次世代製品をする開発する大型企業ならびに新製品の開発を手掛ける中小型企業が注目されます。

ヘルスケア・セクター展望

ヘルスケア・セクターのパフォーマンスは、過去数四半期前あるいは数年前の状況と変わらない市場の勢い(モメンタム)が認められます。前述の通り、業界の良好なファンダメンタルズに加えて、マクロ経済動向や地政学的状況が、ヘルスケア・セクターの魅力を増しています。(バイオ医薬品、医薬品等の)薬品開発業界においては、研究開発関連の生産性について著しい改善が見られます。C型肝炎、多発性硬化症、リューマチ性関節炎、乾癬、嚢胞性線維症抗PD-1抗体を用いた免疫療法等の画期的治療は、技術の進展が一時的なものではないとの信念を支えるものです。

また、アルツハイマー症、肝線維症を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、血友病等の遺伝子治療、がんのキメラ抗原受容体(CAR-T)反応性疾患に対する各種の免疫療法等、新しい治療法に関するデータの蓄積により、楽観的な見方を裏付ける証拠が得られるものと考えます。

新興国のヘルスケア・セクターには多数の投資の好機が潜在すると考えます。新興国市場においては、富の蓄積が拡大するにつれて、医療や健康管理の改善が、少なくとも現状のペースを下回ることなく、求められていくものと予想されます。また、経済発展に伴って、心臓病、糖尿病、心臓血管疾病等、先進国に特有の疾病が増加するものと考えます。新興国の人口動態と新興国市場のバリュエーション(投資価値評価)が妥当な水準にあることを勘案すると、新興国ヘルスケア・セクターの将来が有望であることは明らかです。したがって、「市場のモメンタムが続くかどうか」ではなく、「ヘルスケア・セクターに対する投資家の需要を変えてしまう可能性のあるものは何か」が問われているのだと考えます。

ヘルスケア銘柄に対する投資家の旺盛な需要を減じる可能性のある二つのシナリオが考えられます。一つは、(米国の薬価制度の機能停止、研究開発の効率性改善の反転、株価の暴落等)、ヘルスケア・セクターに対する投資家の関心を失わせる出来事が起こることです。

もう一つは、ヘルスケア・セクターに替わる魅力的な投資対象が現れることです。このようなシナリオが現実のものとなるかどうか、あるいはいつ起こり得るかを予想することは、不可能ではないとしても、容易ではありませんが、どちらについても突然あるいはゆっくりと起こり得る可能性は否めません。また、どちらかが実際に起こった場合の結果を予測することは更に困難です。とはいえ、ヘルスケア・セクターのファンダメンタルズは10年前どころか5年前と比べても遥かに堅固です。ですから、上記のリスク・シナリオが現実のものとなった場合に備える態勢は既に整っているものと考えます。

図表:ヘルスケア・セクターの増収率、増益率、株価収益率(PER)の推移
(年率、2014年-2017年(予想))

 

※セクトラル社予想、中央値 ※伸び率は2014年から2017年(予測含む)、年率
出所:セクトラル・アセット・マネジメントのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

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