ギリシャ:警戒すべきリスクは経済ではなく政治 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ギリシャ:警戒すべきリスクは経済ではなく政治 欧州/ユーロ圏 ギリシャ

2015/06/30グローバル

ポイント

2015年6月27日、ギリシャのチプラス首相は7月5日に国民投票を実施すると発表しました。これにより金融支援の枠組みの合意に向けた協議の土台が崩れることとなり、ギリシャのユーロ離脱の可能性が一気に高まっています。 仮に国民投票においてEU側の支援条件に「ノー」という民意が示されれば、ギリシャのユーロ離脱は決定的となるでしょう。その場合でも、ユーロ周縁国に及ぼす経済的な影響は限定的なものに留まると思われますが、EUが政治的リスクの拡大にどう対処するかが焦点となりそうです。

特集:ギリシャ危機レポート

国民投票を決断したチプラス首相

ギリシャ支援延長を巡り2015年6月27日に開催されたギリシャとユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の会合は決裂しました。ギリシャのチプラス首相は27日、支援の条件について是非を問う国民投票を7月5日に実施すると表明すると共に、6月30日期限の金融支援を国民投票後まで延長するよう要請しました。これに対し、ユーログループはギリシャの要請を拒否、支援の延長に応じないことを決定しました。

この動きを受け、欧州中央銀行(ECB)は、ギリシャの銀行の資金繰りを支えてきた緊急流動性支援(ELA)の上限を据え置きました。これを受けギリシャ政府は資本規制と銀行休業に関する法令を発表するに至り、ギリシャは債務不履行(デフォルト)とユーロ離脱の瀬戸際に立たされています(6月29日号「今日のヘッドライン」も併せてご参照下さい)。

先週の株価上昇分は一日で帳消し

チプラス首相が国民投票を突然決意したことで、週明け月曜日の世界の株式市場は全面安の展開となりました。中でもユーロ圏の代表的な企業から構成されるユーロストックス50株価指数は、前営業日比-4.2%と大幅な下落となりました。ユーロ圏以外でも、米国のS&P500株価指数が同-2.1%、日本のTOPIXが同-2.5%と、世界の株式市場に影響が広がっています(図表1参照)。

ただし先週は、ギリシャ政府とユーログループの合意は近いとの楽観的な観測から欧州や日本の株価が大きく上昇していました。このため6月29日月曜日の下落は、投機筋が信用買いポジションを一気に決済して上昇分を帳消しにしただけのようにも見えます。バブルの様相を呈していた上海総合株価指数が大幅続落するなど個別の動きはあるものの、総じて見れば中長期の投資家は今のところ冷静に行動しているように思われます。

図表1:世界の主要株式市場および為替市場の足下の騰落率
(現地通貨ベース、期間:2015年6月19日~26日の1週間および6月29日の1日間)

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

国民投票の行方は不透明だが、周縁国経済への波及は限定的

注目の2015年7月5日の国民投票では、債権団が提案する緊縮財政案を受入れてユーロに残留するか(=イエス)か、受入れずにユーロを離脱するか(=ノー)が問われます。各種世論調査によれば多くのギリシャ国民がユーロ残留を希望しているものの、チプラス首相の行動が予測困難ということもあり、投票結果が出るまでは相場は様子見となるでしょう。ただし、前述のように投機筋は既にユーロ圏から撤退したと見られる一方、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和という買い材料から中長期の投資家には慎重に下値を拾う動きも見られることから、6月29日月曜日の下落によって必要な株価調整はある程度進んだものと考えます。

また、ギリシャを取り巻く経済環境は2012年当時と比べて大幅に改善しています。当時3,200億ユーロ程度あったギリシャの債務の大半は、現在、ECBや国際通貨基金(IMF)などの公的機関に移転され、ギリシャ国内銀行以外の民間の主要銀行が保有するギリシャ向け債権は極めて少なくなっており、デフォルトの直接的影響は限定的と推定されます(図表2参照)。またECBが量的緩和という強力な金融政策を手にしている点や、イタリア・スペイン・ポルトガルなどのユーロ周縁国の経済状況が大きく改善している点も見逃せません。これらの理由から、仮にギリシャがデフォルトとなりユーロ圏からの離脱を余儀なくされたとしても、周縁国へと混乱が波及するリスクは2012年当時と比べて大幅に低下していると考えます。

図表2:ギリシャのデフォルトが欧州主要銀行に与える影響度(推定) (デフォルトによる
ギリシャ国債、債権等の損失推定額の純資産に対する比率)(2014年推定)

 

出所:ピクテグループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

注意すべきは政治リスクの高まり

それでもなお市場がギリシャのユーロ離脱を警戒しているのは、政治的なリスクが各国に波及するリスクが残っているからです。そもそもギリシャでは中道右派のサマラス前政権の下で財政再建が着実に進められていましたが、2015年1月に反緊縮を訴えるチプラス政権が誕生したことで、国の重要政策が一変してしまいました。今年後半はポルトガルやスペインで総選挙が予定されており、英国でも早ければ来年中に欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票が行われると見られます。万一、これらの国々でもギリシャ同様に反緊縮、反EUを支持する政権が誕生すれば、ドミノ倒しのように政治リスクが広がる可能性が否定できません。

ユーロ周縁国の信用力を示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、そうした政治リスクを示す指標として重要です。6月29日時点で、イタリアやスペイン、ポルトガルのCDSは前週末(6月26日)からは上昇しているものの、さらにその前週(6月19日)の水準と大差ない水準に留まっています(図表3参照)。これはギリシャ以外のユーロ圏各国の政治的結束が乱れていないことも重要な要因と考えられます。ギリシャがユーロ圏を離脱することになった場合のリスクは、経済的なリスクから、EUが結束をどう維持していけるかという政治リスクへと変質しつつあると言えるでしょう。

図表3:ユーロ周縁国のソブリンCDSスプレッド
(シニア5年ドル建債、時点:2015年6月19日、26日、29日)

 

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

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