英国の国民投票:欧州連合(EU)離脱を選択 | ピクテ投信投資顧問株式会社

英国の国民投票:欧州連合(EU)離脱を選択 欧州/ユーロ圏 英国

2016/06/28グローバル

英国の国民投票が欧州連合(EU)からの離脱という衝撃的な結果となったことから、欧州は勿論のこと、広く世界の経済、政治、金融市場に大きな影響が及ぶことが予想されます。

金融市場の当初の反応

英国の欧州連合(EU)残留を織り込んでいた金融市場は、想定外の投票結果を受け、2008年9-10月のリーマン危機直後の下げに匹敵する暴落の展開となりました。

欧州域内の株式市場が3-12%の下げに見舞われた一方、ポンドは-12%と急落し、(結果発表前の)対ドルで1ポンド=1.50ドルに対して一時1ポンド=1.33ドルを付け1985年以来の最安値を更新しました。これに対し、リスク・オフ局面の典型的な展開として、金は7%強上昇、一方、独・米の10年国債利回りは、それぞれ、一時-0.17%ならびに1.4%に低下(価格は上昇)し、6月24日には終値ベースで前日比でそれぞれ-14bp、-19bp低下しました。また、円は3年ぶりに一時1ドル=100円を割り込みました。この間、ユーロが予想以上の底堅さを見せ、およそ1年ぶりの1ユーロ=1.09ドルと4%程度の下げに留まったことが注目されます。

政治面への影響

政治面にも甚大な影響が及ぶことが予想されます。キャメロン首相は既に辞任を余儀なくされましたが、後任の新首相は国内の議会で強い支援が期待できないことに加え、EU離脱の交渉に際しては、一部EU加盟国政府からの厳しい抵抗に対応せざるを得ないことが予想されます。

英国がEU離脱の手続きを「正式に」始めるには、(欧州理事会に)「リスボン条約50条」の発動を通知しなければなりません。

通知から2年以内に離脱の条件が交渉されることとなりますが、英国がどのような条件を確保しようと考えているかは、現時点では明らかではありません。また、いかなる条件にもEU加盟27ヵ国の承認が必要となることが先行きの不透明感を強めています。英国との貿易量が少ない加盟国の幾つかは交渉に殆ど関心を示さないものと思われるためです。

欧州の複数の国は高い政治リスクにさらされています。経済の低迷を背景に反体制政党が台頭しており、英国のEU離脱(ブレグジット)が、主流派政党に対する国民の不満を強めた可能性があります。

欧州ならびにユーロ圏は、分断の脅威にさらされています。スペインでは26日、(やり直しの)総選挙が行われたばかりですが、イタリアでは、10月に憲法改正案の是非を問う国民投票が予定されており、レンツィ首相の去就を決めることとなりそうです(図表1参照)。首相は、上院の権限を大幅に縮小する改正案が否決された場合には辞任することを明らかにしているからです。

イタリアの状況も懸念されます。イタリアはユーロ圏3位の経済規模を有する一方、銀行セクターは2,000億ユーロ強の不良債権を抱えており、政府債務が膨らんだ現状では財政支出を大幅に拡大する余地は見込まれないからです。

2017年にはフランスの大統領選挙が予定されていますが、反EUの国民戦線が国民の支持を増やしています。また、ドイツでは総選挙が行われます。

フランス、ドイツ、オランダ等、複数の国が、EUあるいはユーロ圏加盟の是非を問う国民投票を行わざるを得ない状況に陥る可能性も否めません。

上述のさまざまな状況を勘案すると、「ブレグジット」は、EUあるいはユーロ圏分断のリスクを高める結果となったように思われます。

EUあるいはユーロ圏分断が避けられないという意味ではありません。「ブレグジット」が欧州の政治家に対して、銀行業界、規制、財政等に関する規制改革を促進するよう、警鐘を鳴らしたということなのです。諸改革を実行し、機能が改善されたEUが実現することとなれば、英国はEUとの関係を見直したいと考えるかもしれません。このような展開は現状では望めそうにありませんが、実は前例があるのです。1992年、デンマークは国民投票でマーストリヒト条約の批准を否決し、欧州株式市場は15%の下げに見舞われたのですが、2000年には再度国民投票を実施し、条件付きで加盟を決めているのです。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

経済面への影響

英国経済には、短期間のうちに「ブレグジット」の影響が現れることとなりそうです。イングランド銀行(中央銀行)は国内外の投資家心理や経済界への影響を和らげるための手段を講じており、ポンド安が輸出型企業に恩恵をもたらすことが予想されますが、国内経済は、今後数四半期を通じ、減速を免れないと考えます。EUが英国の最大の輸出先(EU向け輸出は輸出全体の半分近く、 GDP(国内総生産)比約1割)であることを勘案すると、「ブレグジット」は、2016年の英国のGDPを1%以上押し下げることが予想されます。

リーマン・ショックが短期間のうちに世界経済に影響を及ぼしたのとは異なって、「ブレグジット」の海外への影響は長期にわたることが予想されます。とはいえ、EUの政局を巡る不透明感は強まっており、投資家心理や貿易に甚大な影響を及ぼしかねません。

EUが欧州債務危機からの回復途上にある状況下、低成長は、EU周縁国の脆弱な財政状況を急速に悪化させる脅威となります。イタリアの場合、現在130%のGDP比政府債務残高を安定させる(悪化させない)ためには前年比+1.4%のGDP成長が必要ですが、銀行セクターの抱える問題を考えただけでも相当ハードルが高いと見ています。

金融当局の対応

世界の主要中央銀行は、金融システム安定に必要な体制を整えた旨を明らかにしており、協調的政策対応が実現する公算もあると思われます。一方、政治家はあらゆる選択肢を残しておきたいと考えているはずですから、投資に際しては、極めて短期間のうちに抜本的な対策が講じられることを期待すべきではないと考えます。現時点で極めて積極的な姿勢に転じても望ましい結果が得られない可能性は否めません。

カーニー・イングランド銀行総裁は、金融市場安定のため、2,500億ポンドを市場に供給すること、また、今後数週間のうちにも追加の施策を検討し得ることを明らかにしています。欧州中央銀行(ECB)も、必要とあらば行動する用意があることを明言しています。

英国の国民投票の結果は、米国の金融政策にも影響を及ぼすことが予想されます。投票結果が世界経済の不透明感を強めていることから、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げは、早くとも10-12月期にずれ込むこととなりそうです。

スイス国立銀行(中央銀行)は、スイスフランの上昇を抑えるため、為替市場に介入したことを明らかにしています。1ユーロ=1.05スイスフランを下回ることとなれば、マイナス金利幅の拡大が検討される可能性もあります。

日本銀行もスイス国立銀行と同様の状況に置かれており、一時、1ドル=100円割れとなった状況を勘案すると、円安誘導の追加金融緩和策が導入される公算が高いと考えます。日本銀行は、新たに発行した紙幣を直接消費者に配る「ヘリコプター・マネー」を世界で初めて実行することになるかもしれません。「ブレグジット」は上述の施策を現実のものとし得るのです。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

「ブレグジット」を踏まえた注目資産

英国のEU残留を織り込んでいた金融市場は、投票結果に衝撃を受け、大混乱の展開となりました。

投資家のリスク選好に最も大きな影響を及ぼしたのは、おそらく、ユーロ圏の資産クラスに要求されるリスク・プレミアムが上昇するメカニズムを通じて、「ブレグジット」の影響が金融市場全般に広がったことだと考えます。

ピクテでは、市場の動向を示す主要な指標として、欧州金融債ならびにイタリア国債のクレジット・デフォルト・スワップを注視していますが、これまでのところ、目立った動きは見られません。 市場の混乱が長引くこととなれば、リスク資産がどのような水準で投資妙味を増すかの判断はこれまで以上に難しいものとなりそうです。

市場が下落幅を広げ、政治家の言動から十分な確信が得られた場合には、下げの最も大きかったセクターの買いの検討余地があると見られます。

ユーロは1.05ドル近辺で、一方、ポンドは1.30ドル近辺で投資妙味が増すと考えます。一方、ポンド安の恩恵で増益が予想される英国株には、既に割安感が見られます。したがって、FTSE100種株価指数が5,700を割り込んだ時点が分岐点と考えます。

ドイツ10年国債利回りは一時-0.1%を割り込み過去最低水準を更新しており、一段の低下余地は限定的だと考えます。また、社債スプレッドが広がれば買いの機会が提供されるかもしれませんが、流動性が低いため、注意が必要と見ています。

新興国資産については、目先、ドル高の進行が予想されることから、株式、債券ともに注意が必要と見ています。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

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