約10年ぶりの史上最高値が意味するもの | ピクテ投信投資顧問株式会社

約10年ぶりの史上最高値が意味するもの

2017/06/28グローバル

ポイント

ドルベースで世界公益株式指数が約10年ぶりに史上最高値を更新した。 要因は物価上昇率の回復とFRBによる金融引き締めだと考えられる。 今後債券市場ではイールドカーブのフラットニングが進行することが予想されているが、フラットニングは公益株式の配当利回りを低下させることで株価を押し上げる要因となる。 世界の公益株式市場は2004年以来のブルマーケット(強気市場)に突入した可能性がある。

史上最高値を約10年ぶりに更新

ドルベースで世界公益株価指数が2007年12月7日以来、約10年ぶりに史上最高値を更新した。同株式指数は昨年の7月25日に最高値更新をチャレンジしたが、393ポイントのレジスタンス・ラインで打ち返され、約10ヵ月調整した後、今回2017年5月18日にこのラインを上回ったのだ(図1参照)。

プロの投資の世界では、ドルベースでの史上最高値更新はひとつの大きなメルクマールとなり、時には強力な買いシグナルを発する。
なぜなら機関投資家やヘッジファンドなどの多くは現地通貨ベースとドルベースでリターン動向をモニタリングしているからだ。特にグローバル資産運用を行っている機関投資家にとって共通言語はドルベースでのパフォーマンスである。そのため今回の史上最高値更新によって世界公益株式市場の転換を強く認識した運用担当者は少なくないと思われる。

ちなみに前回の更新局面(2004年11月4日)では、世界公益株価指数はその後の高値(2007年12月7日)まで3年1ヵ月で103%上昇した。これは年率で25.9%という高い上昇率であった。

金融引き締め期に強い公益株式

特徴的なのは前回と同様、米国FRBによる金融引き締め期に史上最高値を更新していること(図1参照)と、2015年12月16日に利上げが開始されてから世界公益株式の上昇スピードが加速してきている(図2参照)ことだ。
2011年初頭から2015年12月16日までの世界公益株式の上昇率(ドルベース)は年率3.3%と緩やかであったが、2015年12月16日から2017年6月21日までの上昇率は年率14.2%と明らかに異なる動き、ブル相場の体を成してきている。

米国FRBによるFOMC金利目標は今年3月15日に1%、更に6月14日1.25%と立て続けに引き上げられたが、その後も世界公益株式のパフォーマンスは他のアセットクラスと比較しても好調を維持している(図3参照)。

 



 

株価上昇率を加速させる2つの要因

金融引き締め時期から世界公益株式の株価上昇率が高まってくる理由は大きく2つの要因があると考えている。

1) 物価上昇率回復で増配期待を株価が織り込む。
2) 債券市場でイールドカーブ(利回り曲線)のフラットニングが進行することで公益株式の配当利回りが相対的に魅力的となる。

公益企業の配当動向は物価に1年半遅行

金融引き締め時期に公益株式のパフォーマンスが良好であるのは、その政策を金融当局に促す物価上昇 が要因だと考えている。図4は米国の物価上昇率とFOMCの金利目標の推移を1971年から見たものだが、上下の差はあれ、米国FRBによる政策金利と物価動向は密接に関係していることが確認できる。
一般に公益企業の収益は物価と正の相関を有し、物価上昇圧力が高まってくると公益料金が上昇、公益企業の業績にプラスとなる。これが利益・配当の増加につながるという図式だ(図5参照)。
その流れにはタイムラグが存在する。我々の分析では物価上昇圧力が高まってから約半年後に電力価格などの公益料金が上昇、その後約1年後に公益企業の利益と配当が増加する関係を見出している。株価はこの動きを1年は早く捉える。このため物価上昇圧力が高まり利上げが開始されるころから株価の上昇率が高まると考えられるのだ。

物価上昇率回復で増配期待

先進国の経済はリーマンショック以降デフレ圧力にさらされてきた。米国の物価上昇率は一時的に3%を超えたこともあったが、2011年8月の米国国債ショック*1以降再度デフレ圧力にさらされ、2015年初頭にはマイナスとなった。この経済環境が前述したように2011年から2015年末まで世界公益株式の上昇率を緩やかなものにした理由と考えられる。(*1:米国国債の格付けがS&PによりAAAから引き下げられその後株式とクレジット・マーケットが大きく動揺した市場イベントのこと。)
米国FRBは2015年12月から利上げを開始した。これは米国の失業率が5%に低下したこともあって物価動向に多少の自信を持ったからだが、仮にこの利上げのタイミングを物価上昇の転換期とするならば、その1年半後である2017年7月-9月期から公益企業による増配が始まる可能性がある。
図6の米国物価上昇率に対して1年半遅行させた世界公益企業の配当成長率の関係からは、まさに増配が始まる可能性を示唆している。



 

現在の配当利回りは魅力的な水準

ピクテでは世界国債の利回りと配当利回りを比較することで世界公益株式が割高であるのか、割安であるのかを判断している。

1995年以降、世界国債の利回りが低下し続けてきた一方、世界公益株式の配当利回りはほぼ横ばいで推移してきた。このため配当利回りと国債利回りの逆転現象がリーマンショック以降顕著になったことが分かる。(図7チャート2)。

更にこの利回り差異(世界公益株式の配当利回り-世界国債の利回り)に着目するとその差異の推移は0.9%の平均値を中心に上下しており、その変動の上限、下限ともに1標準偏差値程度であったことが分かる(図7チャート3)。
2000年以降この利回り差異が高いと買い場(赤の幅)、マイナスであると売り場(緑の幅)となってきたが、2017年5月末現在で利回り差異は2.8%の水準にある。
この状態は2009年以降続き、堅調な株価上昇を下支えした要因と考えられる。また、前回の2004年11月に史上最高値を更新した際の利回り差異(灰色の幅)
0.9%と比較しても、2.8%という現在の利回り差異の相対的な高さは際立っている。

この点から現在の配当利回りは魅力的な水準、株価は依然割安と考えらえる。

短期金利の上昇局面で配当利回りが低下

公益株式の配当利回りは市場金利の影響を受ける。株式の中でも配当の安定性が高いため、債券の代替として配当利回りに着目した投資を行う投資家が存在するからだ。彼らの多くは公益株式を物価オプション付超長期債券として位置づけている。資産株といわれる所以だ。

このため金融引き締め時期に発生する債券利回りのイールド・カーブ(利回り曲線)のフラットニング*2が世界公益株式の配当利回りの水準にも影響を与えている。(*2:短期金利と長期金利の差が小さくなること)図7チャート3の利回り差異では利回り差異のチャート(緑色)に加え、FOMCの短期金利目標のチャート(赤色)を逆メモリにして表示している。赤い色のチャートが下にくると短期金利高、上にくるときは金利安となるが、利回り差異との高い連動性を確認できると思う。

過去の経験則では短期金利が高くなると配当利回りが低下することによって利回り差異が縮まった。これは短期金利高=物価上昇圧力=公益株式の増配期待=公益株式の配当利回りの低下=株価上昇という図式を鮮明に表している(図8)。

(※将来の市場環境の変動等により、記載の内容が変更される場合があります。)


イールドカーブのフラットニングが世界公益株式を上昇させる

世界公益株式の配当利回りを超長期社債利回りの代替として考えて債券市場におけるイールドカーブの形状変化を見たものが図9である。前回の金融引き締め局面である2003年11月から2006年11月までの期間で、1年ごとに形状の変化を見ている。

この期間では短期金利の上昇に反応して世界公益株式の配当利回りが低下し、長期国債利回りの水準はそれほど変わらなかった。この結果、イールドカーブがフラットニングし、最終的には逆イールド(短期金利が長期金利を上回ること)になっていったことが分かる。短期金利の上昇で逆に配当利回りが低下したの
だ。

今回の金融引き締め局面では短期金利の上昇で配当利回りは多少低下しているが、イールド・カーブの傾斜は依然としてかなりスティープ(急角度の右上がり)である。

このため、もし仮に長期国債の利回りがあまり上昇しないとすると、イールド・カーブがフラットニングするには現在の配当利回り3.8%(2017年5月末)から相当低下する必要がある。仮に2.5%程度まで低下するとしても株価を5割程度引き上げる要因となる。

しかも、配当は増配基調にあり、配当利回りが上昇する要因も加わる。

インフレ圧力は強くないが......

ここにきて原油価格が下落していることもあり足元のインフレ圧力は決して強くはない。しかし米国は深刻な債務問題(図12)を抱えているため、FRB(米連邦準備制度理事会)は物価上昇率の維持を考慮に入れざるを得ないだろ。つまり金融引き締めは緩やかなものになるはずだ。

市場は常に次のリセッションの可能性に怯える一方、失業率が大幅に低下しているのでインフレ期待も混在した状態、景気の緩やかな回復と金余り状態が同居し、安定的に相場を押し上げるマーケット、ゴルディロックス相場(適温相場)に突入したと思われる。

前回のゴルディロックス相場は2003年から2005年で、当時と現在は市場を取り巻く環境が大きく似ている。世界の公益株式市場はイールドカーブのフラットニングが進むことで株価の上昇率が高まるブルマーケット(強気市場)に突入した可能性がある。

FRBによる金融政策が間違えさえしなければ...... 。

(※将来の市場環境の変動等により、記載の内容が変更される場合があります。)


 


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