ESG投資 ――その必要性と有効性 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ESG投資 ――その必要性と有効性 グローバル 投資信託

2018/08/14グローバル

ポイント

サステナビリティ(持続可能性)に注目し、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み度合いを評価して投資対象を見極める「責任投資」は、次世代のために世界を守る有効な手段であると同時に、資産ポートフォリオのリターンを向上させる手段ともなり得ます。その証拠が、各種の研究により明らかになりつつあります。

サステナビリティおよび責任投資に対するピクテの取り組みについては、こちらの特設ページで詳しくご紹介しています
Sustainability ~企業としての責任と取り組み~

「健全な投資や事業の意思決定を構成する要素は何か?」と質問されたとしたら、10年ほど前までは金融用語だけで答えられたかもしれませんが、今はそうはいきません。気候変動や所得格差の拡大等の構造的なトレンドを背景に、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス))に対する配慮を経済的な考慮と同等に扱う企業が増加の一途だからです。企業がESGを重要視することが営利目的に適っているのには、以下の通り、理由があります。

一点目は、各国政府が「パリ協定」で合意した地球温暖化対策の目標達成に向けて準備を進める状況下、環境規制が企業の最終損益にとってのリスクとなる公算が強まっているということです。二点目は再生可能エネルギーやエネルギー保存に係るコストが着実に低下し、エネルギー、公益、運輸等、エネルギー集約型セクターに変革をもたらすことが見込まれるということです。

地域別ESG投資残高(2012年、2016年)

出所:Global Sustainable Investment Review 2016年版、2014年版のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

企業にESG活動への参画を促す三点目の誘因(インセンティブ)は消費者の力(「消費者力」)です。近年、消費者は、企業が社会と環境に及ぼす影響を従来にも増して意識しており、その結果、ブランド認知や顧客の企業に対する忠誠心(「カスタマー・ロイヤルティ」)等、企業の市場価値の一部を構成する無形資産がESGの信認と関連付けられる例が増えています。このことは、企業の長期戦略に限らず日常の企業慣行にも当てはまります。

ESGを無視することは、評判や財務状況を長期にわたって損なうことに繋がりかねません。例えば、英国のブリティッシュ・ペトロリアム(BP、世界を代表する石油メジャーの一つ)は、2010年、メキシコ湾沖の石油プラットフォーム、ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)で発生した原油流出事故後、株価が低迷しました。また、ドイツのフォルクスワーゲンも、(排出ガスの室内検査に際して不正なソフトウェアを搭載した)排ガス不正スキャンダルの発覚後、売上が激減しました。近年では、ロンドン交通局が米国の配車大手ウーバーに対し、「(犯罪発生時等の)報告体制やドライバーの好ましくない行為が企業責任の欠落を示唆している」として、営業免許の更新を拒否しました1

ESGは、企業業績や投資リターンの改善につながるか?

公表された学術研究に基づくピクテの分析は、「サステナビリティ原則」を遵守する企業の業績がこれを遵守しない企業の業績を安定的に上回ることを示唆しています。

投資家もこのことに留意すべきです。サステナビリティを率先して遵守する企業には、総資本利益率(ROA)で測ったリスク調整後リターンが他社を上回るという傾向が認められるからです。

例えば、廃棄物処理からエネルギー消費に至る資源管理が優れている企業は、汚染物の排出量だけでなく、生産コストも削減しています。また、気候変動の管理面で業界他社に比べ高スコアを付与された米国企業は、低スコア企業との比較で、自己資本利益率(ROE)および配当成長率が高く、業績の変動率(ボラティリティ)が抑制されています2

社会とガバナンスについての信認も最終損益に影響を及ぼします。従業員満足度に関する格付けが高い企業は、最終損益が業界の基準を上回る実績を有しています3

サステナビリティに注力する企業は、概して、相対的に低い資本コストと高い信用格付けの恩恵を受けています4。一方、環境リスク管理に効果が見られない企業は、環境リスク管理の優れた企業と比べて借り入れコストが平均20%上回っており5、株主資本コストにも同様の傾向が見られます6

更に、約2,000社を対象とした企業行動の一次データに基づくメタ解析(複数の研究結果の総合分析)からは、企業業績とサステナビリティの実績との間に正の相関があることを示唆する結果が得られています7。このような相関については、二つの主要な研究報告8も、ESGに積極的な企業の株価と業績が相対的に高いことを、それぞれ示唆しています。

では、投資の実際面ではどのような意味があるのでしょうか?ある研究によると、サステナビリティに極めて積極的な企業に1993年に投じた1ドルは2010年時点で22.6ドルの価値があったのに対し、ESGスコアの低い企業の場合は15.4ドルに留まったとのことです9。(入手可能な研究に基づく)ピクテの分析は、ESG活動を率先する企業への投資にはパフォーマンスの劣化がなく、リターンを向上させる可能性があることを示唆しています。

更に、ESGスコアが高い企業には、とりわけ市場の振れが大きい局面で、株価の変動率(ボラティリティ)が相対的に低減する傾向があることを示唆するデータも報告されています。このことは、サステナビリティに配慮する企業への投資から高い分散効果が得られることを意味します。

これからのESG投資

上述のような状況を勘案すると、資産運用業界のESG投資に対するアプローチに変化が見られるのも当然だと思われます。従来のESGポートフォリオでは、特定の種類の企業を排除するネガティブ・スクリーニングが主な手法だったのに対して、近年は投資家の役割が増しています。積極的な株主として行動する「アクティブ・オーナーシップ」と、投資先企業に積極的に関与する「エンゲージメント」を通じてサステナブルな事業環境を促進すると同時に、ESG要因(ESGファクター)が企業価値に及ぼす影響が評価されるため、リターンと信用力は、従来にも増して、投資活動の重要な要素となっています。

投資家は、ESG活動を率先する企業のみに注目すべきだというわけではありません。将来の成長性がリスクに勝る限りにおいて、値ごろ感のあるESG活動で出遅れている企業に、倫理的かつ法的な範囲内で投資する機会が残されているからです。

ESG投資の隆盛は、既存の業界を再編しつつ、事業と投資の新しい好機を提供しています。例えば、環境配慮型商品業界は、2020年までに年率6-7%の伸びを実現するものと見込まれますが、これは、世界経済の成長率の2倍強に相当します。

従って、ESG分析は、高い成長性が見込まれ、効率的なコスト管理を行い、カスタマー・ロイヤルティを勝ち取るのに必要な特性を備えた企業を発掘する手段となり得るのです。また、経済のトレンド、消費者の好み、政府の規制等の変化との衝突を回避する手段にもなり得ると考えます。

  1. “Licensing decision on Uber London Limited”, ロンドン交通局, 2017年9月(なお、法廷での審理を経て2018年6月に条件付きでウーバーに営業免許が交付された)
  2. CDP S and P 500 Climate Change Report, 2014
  3. “Does the Stock Market Fully Value Intangibles? Employee Satisfaction and Equity Prices”, Edmans A., Journal of Financial Economics, 2011
  4. “Corporate Environmental Engagement and Credit Risk.” Bauer R. and Hann D., Maastricht University ECCE Working Paper, 2010; “Corporate Social Responsibility and Credit Ratings.” Attig, N. et al, Journal of Business Ethics, 2013
  5. “Environmental Externalities and Cost of Capital, Working Paper,” Chava S., Georgia Institute of Technology, 2011
  6. “Corporate Environmental Responsibility and the Cost of Capital: International Evidence”, El Ghoul S., Guedhami O., Kim H. and Park K., Journal of Business Ethics, 2016
  7. “ESG and Financial Performance: Aggregated Evidence From More Than 2000 Empirical Studies”, Friede G., Busch T. and Bassen A., Journal of Sustainable Finance and Investment, 2015
  8. “Sustainable Investing: Establishing Long-Term Value and Performance,” Fulton, M., Kahn, B. and Sharples, C., Deutsche Bank’s Climate Change Advisors Report, 2012; “From The Stockholder To The Stakeholder: How Sustainability Can Drive Financial Performance”, Arabesque Partners and University of Oxford, 2015
  9. “The Impact of Corporate Sustainability on Organizational Processes and Performance”, Eccles R., Ioannou I. and Serefeim, G., Management Science, 2014

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