グローバル・マーケット・ウォッチ:通貨ユーロの苦境は続く | ピクテ投信投資顧問株式会社

グローバル・マーケット・ウォッチ:通貨ユーロの苦境は続く グローバル 先進国 欧州/ユーロ圏 新興国

2018/08/23グローバル

ポイント

ユーロの対米ドルレートは、今年の最低水準で推移しています。短期的にはトルコ・リラの急落や、ブレグジットやイタリアの政治問題からユーロに対する下落圧力があるとみています。 中期的には、経済成長力格差の縮小や、金融政策の変更によって、ユーロは米ドルに対して上昇すると考えます。

ユーロは米ドルに対して、狭い範囲での値動きでしたが、5月末より今年の最安値の水準となっています。この年初来の安値水準は、今年後半にはユーロは米ドルに対して上昇するとの期待に反し、ユーロに対する短期的なリスクを過小評価していました。結果として、ユーロの対米ドルレートの予想を下方修正します。ただし、中長期的にはユーロは対米ドルで上昇するとの見方は変えていませんが、短期的なユーロの下落については以前以上に強まっています。

政治的不透明感からユーロは下落

短期的なユーロの下落要因としては、ブレグジットの不透明感とイタリアと欧州委員会の予算協議の二つがあげられます。しかしながら、ブレグジットの不透明感に対するリスクの増大は、当初想定していたよりもユーロの下落につながりました。そうこうしている間に、トルコからの資本流出問題により、欧州の金融機関のトルコへの融資事情が顕在化したことから、ドイツとイタリアの国債利回りの格差が大幅に拡大しました。

トルコ・リラの大幅な下落は、2つの要因から米ドルに対してユーロが下落したことに影響しました。まず第一に、新興国への投資は米ドル建てが主流であることから、新興国からの資本の流出は、米ドル高に繋がります。新興国からの資本流出の連鎖が8月上旬に見られて、米ドル高となりました。(下記グラフ参照)

新興国の非金融セクターの債務(ローン・債券)推移(ユーロ建ておよび米ドル建て)

 

二番目は、欧州の金融機関のトルコへの巨額の投資も、ユーロが下落する要因となりました。

トルコ・リラの危機は、トルコ特有の状況に起因していることを確認する必要がります。つまり、過熱気味の景気によるインフレーションと、トルコ中央銀行(CBRT)の独立性に対する世界の懸念です。他の新興国の通貨危機への波及は明確でリスクが増大するものの、相対的に弱いトルコのファンダメンタルズについて認識する必要があります。ユーロ圏のトルコに対する債権や貿易量はたいしたことがなく、ユーロの下落が、今後のユーロ圏の成長を鈍化させるというのは行き過ぎた見方と考えます。

そうはいっても、トルコ政府の利上げに対する消極的な姿勢は、トルコ・リラの安定性に重大な支障となっています。加えて、イタリアが欧州委員会に予算案を提出する10月15日に向けて、政治リスクが高まりつつあります。最後に、この秋にはブレグジットの交渉が、更なるユーロ安を招く恐れがあります。つまり、欧州連合(EU)がイギリスから追加の譲歩を引き出せるかどうかについて政治的な不透明感が高まっています。このような様々な短期的な問題が、今後2ヵ月にわたってユーロの継続的な上昇への阻害要因となると見ています。

中期的にユーロ高へ

成長力格差や金融政策の相違といった中期的な要因によって、今年後半にかけて米ドルに対してユーロは上昇すると考えます。今年にはいって現在まで、経済情勢が足踏み状態であったユーロ圏と比較して、高い成長性を示した米ドルの優位が続きました。そして、今後は米国経済が鈍化する一方で、ユーロ圏は現在の成長を維持していることから、成長力格差は縮小すると見ています。(下記グラフ参照)

ユーロの対米ドルレートおよびユーロ圏と米国の成長率格差

 

金融政策に対する見方としては、米連邦準備制度理事会(FRB)は2019年半ばには政策金利の引き上げを終了すると見られる一方、欧州中央銀行(ECB)は同年9月に利上げを開始する見通しであるため、ユーロは米ドルに対して上昇すると考えます。さらに、来年の政策金利の引き上げ停止までに、FRBはあと4回の利上げを実施すると見られていて、市場は既にこの利上げを織り込んでいると考えます。一方、2019年のECBの2回の利上げ予想については、まだ織り込まれていないと見ています。このような観点から、中期的にはユーロに対する米ドル高は限定的と考えます。

ユーロの対米ドルレートを下方修正

結論として、トルコ中央銀行の明確な政策金利の引き上げが期待できず、高いインフレーション(インフレ目標5%に対して7月のインフレ率は15.9%)の環境下で、中央銀行の独立性に対する懸念が高まっていることから、トルコ・リラの下落は継続すると考えます。さらに、今後数ヵ月はブレグジットとイタリアといった政治的混乱が予想されることから、ユーロが対ドルで上昇する可能性は低いと見ています。もちろん、ブレグジットとイタリアの両方のケースで、お互いが納得する結論に至る可能性があると見ていますが、今後2ヶ月程度はユーロの下落圧力があると考えます。結果的に、対ドルに対するユーロのレートを下方修正します。

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