日本の輸出は更に減少か | ピクテ投信投資顧問株式会社

日本の輸出は更に減少か グローバル 先進国 日本

2018/08/24グローバル

ポイント

米国と中国の貿易戦争をはじめとする、世界的な貿易摩擦の懸念が高まっています。今後とも貿易摩擦が深刻化するならば、日本の輸出にも悪影響が見込まれます。当面、現状を注視しつつ、場合によっては日本の経済成長率の下方修正も検討します。

2018年7月の日本の円ベースでの輸出は、前年同月比で+3.9%となり、6月の+6.7%より鈍化しました。一方輸入は、7月は前年同月比で+14.6%で、6月の+2,6%から上昇しました。(下記グラフ参照)

日本の輸出と輸入の伸び率(前年同月比、%)

 

結果として日本の貿易収支は、7月は2,312億円の赤字となり、6月の7,208億円の黒字ならびに前年6月の4,332億円の黒字から一転してマイナスになりました。2018年の最初の7ヶ月の貿易黒字は3,720億円にとどまり、昨年の同じ期間の1兆4,167億円の黒字から大幅に減少しました。このように、2018年の海外需要は日本経済への貢献度が落ちてきています。

輸出品目ごとに見てみると、輸送用機器、機械、電気機器が日本の輸出の上位3品目で、輸出全体の60%以上を占めています。今年7月に、これらの3品目全ての伸びが大幅に低下しました。特に、乗用車が主体の輸送用機器は、前年同月比で-4.0%と伸び率がマイナスとなり、6月の前年同月比+2.7%から大きく落ち込みました。(下記グラフ参照)

日本の輸出(機械、電気機器、輸送用機器)の伸び率推移(前年同月比、%)

 

アジアは、日本にとって最大の輸出相手であり、概ね輸出全体の半分以上、正確には54.7%となっています。中国だけで日本の輸出全体の20%近くを占めていて、18.5%の米国と11.5%の欧州連合(EU)が続きます。

今年7月の米国向け輸出は特に落ち込んで、前年同月比-5.2%となり、6月の前年同月比の-0.9%から大きく下落しました。中国向け輸出は好調で、前年同月比+11.9%の伸びとなり、ともに前年同月比+5.9%となったEUと中国以外のアジアが続きます。(下記グラフ参照) 7月の米国向け輸出では、自動車の輸出が前年同月比-12%と最大の落ち込みとなり、機械の+0.1%が続きます。

主要国・地域向け日本の輸出(前年同月比、%)

 

日本の輸出が資本財中心であるという前提のもと、歴史的に見て日本の輸出はグローバルな投資の循環に密接に関連しています。つまり、最近の日本の輸出の減少は、米国供給管理協会(ISM)の新規発注指数の下落に表されているように、グローバルな企業部門の投資の減少によるものです。(下記グラフ参照) 2017年末に67.4の直近のピークを付けた後、ISM新規発注指数は下降局面となり、7月は60.2まで低下しました。これは、貿易摩擦の深刻化と一部の新興国の危機によって、世界経済の今後の成長に対する不透明感が高まったことを反映しています。

日本の輸出の伸び率とISM新規発注指数(前年同月比、%)

 

加えて、今年に入って現在までの円高が、日本の輸出を抑えることとなりました。前年同月比ベースで、今年7月の日本円の名目実効為替レート(NEER)は1.7%の円高となり、2017年年間の3.6%の円安から一転しました。米ドルに対しても、円高傾向になっています。米ドル指数(DXY)は、年初から8月20日現在で3.8%上昇していますが、むしろ下落傾向となっています。これは、日本円が米ドルに対して2.3%上昇し、年初から見て円が最高のパフォーマンスをあげているからです。

日本の実質輸出伸び率と日本円の名目実効為替レート(前年同月比、%)

 

円高の動きは、日本の実質輸出伸び率の低下と一致しています。実質輸出伸び率とは、輸出量の変化を、物価と為替変動の変化を排除して計測したものです。7月の日本の実質輸出伸び率は、前年同月比で1.4%で、6月の2.5%から低下しました。2017年の平均した伸び率は6.6%でした。(上記グラフ参照)

今後、日本の輸出に対して、更なる逆風が予想されます。米国との貿易戦争が、最大のリスク要因です。現段階では、日本は貿易摩擦の中心にいるわけではありません。米国が、鉄鋼とアルミニウムに対して追加の関税を課しましたが、これら2品目の日本の輸出全体に占める割合は低く、影響は無視できます。しかしながら、もしトランプ大統領が自動車に25%の関税をかけた場合、日本の輸出に対する影響は甚大です。自動車は、日本の輸出ならびに米国向けの最大の品目であり、2017年の日本の輸出の20%を占めています。今年7月、日本の米国向け自動車の輸出は急減しました。現段階では、この自動車輸出の減少のうち、どの程度が関税の引き上げを恐れたものかは不明ですが、もし25%の関税がかかると、米国の日本車に対する需要が激減することが容易に想像できます。

加えて、もし自動車に対する関税が上がらなかったとしても、米国とその他の国々、特に中国との貿易摩擦が引き続き深刻化すると、その影響は日本にも及びます。まず最初に、日本は半導体や集積回路といった中間財を中国に輸出しているので、間接的に米国へ輸出を行っています。そのため、中国製品に対する米国の需要が減退すると、その影響は日本にも及びます。二番目として、貿易戦争の結果、世界経済の成長が鈍化すると、日本の輸出は悪影響を受けると見ています。特に、成長率への不透明感が高まると、企業の投資意欲が削がれるといったことが考えられます。

現段階では、2018年の日本の経済成長率の見通しは変更していません。ただし、この見通しは対外的なリスクの高まりによって、下方修正する可能性があります。当面、現状を注視しつつ、もし懸念材料が現実化するならば、日本の経済成長率予想の見直しを図る予定です。

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